米台関係は深まり、台湾はインド太平洋地域の鍵に  頼 怡忠(台湾シンクタンク諮問委員)

 本誌の4月27日号の「『米日、台、中』の新たな三角関係を構築した日米首脳会談」で伝えたように、本誌は台湾の有識者の一人、頼怡忠氏(台湾シンクタンク諮問委員)の発言に注目している。

 バイデン大統領が4月29日に就任100日を迎え、台湾では台湾国際放送の運営母体の中央放送局が同日、陳文成博士記念基金会との共催でフォーラムを開催し、頼怡忠氏、蘇紫雲氏(国防安全研究院「国防戦略と資源研究所」所長)、邱俊栄氏(国立中央大学経済学科教授)などが登壇して、この100日間を振り返るとともに、これまでの施政成果が「今後、アメリカ、台湾、中国大陸の関係に与える影響を分析」したという。

 やはり、中でも頼怡忠氏の発言が注目を集めたようで、台湾国際放送は頼怡忠氏が「台湾とアメリカの関係は、後退するどころか、逆に深まっている」「アメリカの同盟国の動員は、インド太平洋地域で注目の的となっている。台湾は地理的位置、経済、科学技術、人権、民主価値などにおける重要性がますます高まる」などと述べたことを伝えている。

—————————————————————————————–バイデン大統領就任100日、学者:台湾はインド太平洋の鍵に【台湾国際放送:2021年5月4日】https://jp.rti.org.tw/news/view/id/93589

 バイデン米大統領が4月29日に就任100日を迎えた。台湾シンクタンクの?怡忠・諮問委員は、「将来アメリカと中国大陸、そしてアメリカと台湾の関係が平行的に進むことは予測できる。アメリカは、台湾問題に対して曖昧な政策、「戦略的曖昧性(Strategic Ambiguity)」を放棄していないが、台湾への約束についてだんだん明確な態度を示すようになっている。それにより、同盟国も台湾問題について、はっきりとした態度を表明することになっている。」と分析し、「台湾海峡の情勢は、インド太平洋戦略の関心の的となる」と予測した。

 アメリカのバイデン大統領が4月29日に就任100日を迎えました。バイデン大統領の施政重点と成果は世界中から注目されています。台湾国際放送の運営母体、「中央放送局」は同日に、陳文成博士記念基金会との共催でフォーラムを開催し、国際政治、軍事、経済の3つの角度から、バイデン政権発足後100日間の施政成果が今後、アメリカ、台湾、中国大陸の関係に与える影響を分析しました。

 台湾シンクタンクの?怡忠・諮問委員は、バイデン大統領が就任した後の台湾に対する友好的な取り組みをまとめました。台湾の蕭美琴・駐米代表を就任式に招いたこと、台湾による国際組織への参加を支持すること、台湾への武器供与を発表するタイミングがトランプ政権より速くて、供与される武器が過去より多いこと、それから4月にクリス・ドット(Chris Dodd)元上院議員を始めとする非公式訪問団を台湾に派遣したことなど。台湾とアメリカの関係は、後退するどころか、逆に深まっていると証明しています。

 ?怡忠・諮問委員によりますと、将来アメリカと中国大陸、そしてアメリカと台湾の関係が平行的に進むことが予測できます。これは、台湾の対米関係の健全な発展です。アメリカは、台湾海峡両岸の問題について、台湾に対する曖昧な政策「戦略的曖昧性(Strategic Ambiguity)」を放棄していませんが、台湾への約束についてだんだん明確な態度を示すようになり、その影響で、同盟国も台湾問題について、はっきりとした態度を表明することになっています。日米同盟からも伺えますが、アメリカが台湾海峡の平和を守る承諾が明らかになってから、日本の台湾に対する態度、そして、オーストラリアの政府高官も公の場で台湾海峡への関心を示しました。?怡忠・諮問委員は、「台湾海峡は、インド太平洋地域の情勢を影響する鍵となる」と予測しました。

 ?怡忠・諮問委員は、「アメリカのインド太平洋地域における戦略からは、今後5年から7年以内、台湾海峡が脅威となることが見られる。一方、アメリカの同盟国の動員は、インド太平洋地域で注目の的となっている。台湾は地理的位置、経済、科学技術、人権、民主価値などにおける重要性がますます高まる」と話しました。

 国防安全研究院、国防戦略と資源研究所の蘇紫雲・所長によりますと、バイデン大統領は就任後、対中国の包囲網を構築する姿勢を鮮明にしています。トランプ政権の方針を継続するほか、従来の曖昧な政策を、建設的ではっきりとした戦略に変えました。「台湾に武力行使したら、アメリカとほかの同盟国は行動を取る」と、間接的に北京当局をけん制しました。蘇紫雲・所長は、「割れ窓理論」から考えると、アメリカの「戦略の明確化」による影響は、次第に明確になると判断しました。

 国立中央大学経済学科の邱俊栄・教授は、「トランプ前大統領が中国大陸に対する貿易戦争を引き起こした際、多くの海外の金融サービス機関は、『台湾は米中貿易戦争の最大の被害者になる』と予測していたが、結局台湾は米中貿易戦争の最大の受益者となった。これは歴史の間違いによる偶然だ」と指摘しました。

 邱俊栄・教授は、「歴史の間違いにより、偶然の結果となった。全世界でこれほど中国大陸に集中投資しているのは台湾だけだから、米中貿易戦争で企業の中国離れが進んでいるころ、中国大陸に投資していた分の資金が台湾に戻り、台湾への回帰投資が増加し、内需の拡大につながった。これは私たちが長い間考えていて、なかなか実現できない理想だ」と話しました。

 なお、邱俊栄・教授によりますと、バイデン大統領は中国大陸と対抗する連盟を結成し、「対中国包囲網」を構築しているものの、比較的柔軟なやり方をとっているため、まだその成果はわかりません。バイデン大統領は内政を優先させているため、台湾とアメリカとの相互貿易協定(BTA)の締結について、短期間内での実現は難しいと見ています。ただし、「台湾・アメリカ投資および貿易枠組み協定(TIFA)」の締結に向けての会議再開は、今後注目すべきポイントだということです。

(編集:曾輿?/王淑卿)

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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