シュライバー前米国国防次官補が台湾で「台湾はインド太平洋戦略の要」と強調

 トランプ大統領が国防総省の国防次官補(アジア太平洋安全保障担当)という実務の最高責任者に海軍士官出身のランディ・シュライバー氏を指名したのは、2017年10月。シュライバー氏は歴代政権のアジア専門ポストで活躍してきたベテラン戦略家で、対中強硬派として知られ、民間シンクタンク「プロジェクト2049研究所(Project 2049 Institute)」の創設者で所長だった。

 本誌でも、翌年1月に国防次官補に就任して以降のシュライバー氏の活躍ぶりを折に触れて紹介してきたが、今年1月の台湾の総統選挙の前には「中国共産党政府が2020年台湾総統選に介入するのは間違いない」とした上で「米国の民主主義的なパートナーである台湾が、独自の地位を維持し『自由で公平な、脅迫されない』選挙が行えるよう措置を講じる」と述べていたことも紹介している。親台派としてというより、米国にとって台湾がいかに重要かを踏まえた発言だった。

 昨年末に惜しまれながら退官したシュライバー氏が、退官後の初訪問地に選んだのは台湾だった。シンクタンク「国防安全研究院」の招きに応じ、2月19日に台北市内の同研究院で講演した。

 産経新聞(2月19日付)は、講演の模様を下記のように報じている、

<「台湾が有能で練度の高い軍隊を持つことは米国の国益にかなう』」として、米側が台湾軍を訓練する機会を設けるべきだと主張。さらに、米台両軍が作戦レベルの即時情報を交換すべきだと訴えた。また、「日本は台湾の将来を安全保障に直結するとみている」と述べた上で、地域の共通の課題や国際海洋空間などで「日本が台湾と協力する方法はある。米国が橋渡し役になれるかもしれない」として、米国を中心とする日米台の安全保障対話に期待を示した。すべきだと訴えた。>

 下記に中央通信社の記事と講演全編を紹介したYouTubeを紹介したい。

 なお、シュライバー氏はランドール・シュライバー(Randall Schriver)が本名だが、愛称はランディ。

—————————————————————————————–台湾はインド太平洋戦略の要=訪台中の米政府元高官 台北で講演【中央通信社:2020年2月20日】https://japan.cna.com.tw/news/apol/202002200007.aspx

 (台北中央社)米国防総省で昨年末まで国防次官補(インド太平洋安全保障担当)を務めたランドール・シュライバー氏が19日、台湾は米国のインド太平洋戦略の要だと述べ、地域内の主要国家との関係強化や台湾の国際空間開拓などについて、米国がサポートできるとの見解を示した。

 親台派として知られるシュライバー氏。現在は米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」の会長を務める。17日に訪台。19日は台湾のシンクタンク「国防安全研究院」の招きに応じ、米台関係やインド太平洋地域の安全保障強化などをテーマに台北市内で講演した。

 シュライバー氏は、自由で開かれたインド太平洋戦略を推進する上で、台湾とのパートナーシップ強化や台湾の安全保障、自己防衛能力強化を重視する米国の姿勢を強調。その上で、米中は主権や国際法、自由・平等・互恵などに対する姿勢を巡って価値観の争いをしていると指摘し、強権体制の中国が規範となればこれらの価値が脅かされると警戒感をあらわにした。

 また、米台の協力は2者間にとどまらないとし、台湾が日本やオーストラリア、東南アジア、南アジアなどとの「多角的」な関係を形成するために米国が橋渡し役を担えると述べ、台湾と地域の主要国家の関係強化の重要性を指摘した。

 台湾の国際空間開拓に関しては、米台が近年立ち上げた、世界や地域共通の課題について議論する「グローバル協力訓練枠組み」(GCTF)を例に挙げ、新たな国際機関やプラットフォームづくりを提案した。

 このほか、米台間の貿易関係にも言及。2016年10月以降中断されていた貿易投資枠組み協定(TIFA)協議の再開や相互貿易協定(BTA)に向けたより積極的な取り組みなどを含め、さらなる強化が必要だとした。

 シュライバー氏の海外訪問は退官後初。台湾には21日まで滞在する予定。

(陳韻聿/編集:塚越西穂)

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