毎月、渋谷・道玄坂の会場で開く例会を欠かすことなく実施し、「日台関係研究会」関係者の書物は20冊ほどにも及ぶ。
2014年からは「日台関係研究会叢書」と銘打ち、浅野教授が編著者となって『中華民国の台湾化と中国』を出版してからは、毎年1冊ずつ出し続け、一昨年までに『1895-1945 日本統治下の台湾』『民進党三十年と蔡英文政権』『日台関係を繋いだ台湾の人びと(1)』『日台関係を繋いだ台湾の人びと(2)』を出版、昨年12月の『台湾の民主化と政権交代』で6冊目となっている。
本会でもそのほとんどを「取扱い図書」、つまり本会推薦図書として会員の方々を中心にご紹介してきた。
千葉県の柏市などを地盤とする「東葛川柳会」の代表をつとめる江畑哲男(えばた・てつお)氏は、全日本川柳協会副理事長の任にもある日本川柳界の重鎮で、台湾の「台湾川柳会」との交流を続ける大の台湾ファンでもある。
ちょうど日台関係研究会叢書がはじまった2014年、台湾川柳会の杜青春代表と『近くて近い台湾と日本 日台交流川柳句集』も出版していて、台湾への造詣は並々ならぬものをお持ちだ。台湾の大学で講義したこともある。
いささか前になるが、江畑代表は浅野教授が編著者の『台湾の民主化と政権交代』を「イッキに読みました。丁寧で分かりやすく、しかも奥が深い」とブログで紹介していました。確かに、台湾の民主主義が整うまでの道筋をわかりやすく俯瞰でき、目配りのよく利いた内容だ。
折しも、この『台湾の民主化と政権交代』は、京都大学元教授の柏久氏の『李登輝の偉業と西田哲学─台湾の父を思う』とともに、本会の「取扱い図書」として会員の皆様にご案内するところでした。
明日の本誌でこの2冊を紹介する予定ですが、本日は江畑代表のブログをご紹介します。
『台湾の民主化と政権交代』(浅野和生、展転社)【江畑哲男ブログ:2020年1月10日】https://shinyokan.jp/senryu-blogs/tetsuo/7738/
こういうどちらかと言えば地味な本を、テーマを正面から見据え、目配りの行き届いたこういう本をこそ、じっくり読みこなしたいものです。いよいよ、明日11日(土)は台湾総統選挙。その投開票日です(ちなみに、台湾に期日前投票はありません)。
『台湾の民主化と政権交代』(浅野和生編著、展転社、1700円+税)。日台関係研究叢書の一つとして刊行されています。
イッキに読みました。丁寧で分かりやすく、しかも奥が深い。何と言っても、第一章が圧巻です。読み応えがありました。その第一章は、「台湾の民主化と政権交代―蒋介石から蔡英文への軌跡」。タイトル通り、の内容です。戦後の台湾史のポイントを押さえながら、適切・的確な解説を施しております。
チョット不思議なのは、李登輝元総統の登場あたりからは、ほぼリアルタイムで知っているはずなのに、本著を読んで改めて教えられたり気づかされたり点がありました。
1)例えば「総統」という呼称。英語では「President」で、モチロン大統領のことですが、なぜ か「総統」と呼んでおります。台湾でも日本でも「総統」という呼び方をしているのですね。 一方、「トランプ米総統」とは言いませんよね(笑)。
2)台湾の地では、戦前にすでに「選挙」が実施されておりました。地方自治の段階ですが(しか も制限選挙)、民主主義の萌芽は戦前の日本統治時代にあったのかも知れません。
3)やっぱり教育の素晴らしさ。改めて、そう感じました。親身になって教育に携わる人が多かっ たようです、台湾では。それゆえに、「師弟」関係は卒業後どころか、終戦後も変わらずに日 台の子弟交流が続きました。対して、台湾「解放」後に大陸から来た「先生」は、ダメです (笑)。授業に遅刻したり、理由無く休講にしたり、内申書をよく書いて欲しければ「賄賂」 を寄こせと要求したり、……。なかには、字も読めない「先生」が縁故採用されたりした事例 もあったようです。
4)何と言っても、李登輝さんの「寧静革命」。一滴の血を流すこともなく、民主主義革命を成し 遂げました。上は総統から、下は郷、鎮、里に至るまで、国民による直接選挙が、いま実施さ れているのです。哲人政治家・李登輝さんのとてつもない大きさを、この本からも読みとるこ とが出来ました。
5)要注意なのは、チャイナの介入・謀略。本著でも指摘されていましたが、日常的に・組織的に 行われています。台湾のメディアは、国民党系ないし中国資本。去る高雄市長選挙の際のネッ ト上の書き込み、その8割が大陸からの発信でした。オソロシヤ。今回は大丈夫か?
……、いずれにしろ、台湾の未来が輝くような結果を期待しております。とりわけ、「天然独」つまり「生まれながらの台湾独立派」たる若い人たちの投票行動に注目いたしましょう。台湾の明日をともに見守りましょう。
【目次】
第一章 台湾の民主化と政権交代―蒋介石から蔡英文への軌跡第二章 台湾における選挙の歴史―民主化と政権交代の経過第三章 中華民国の台湾化―「省」の廃止と六大都市の設置第四章 国交断絶後の日台関係と日本側議員連盟の系譜