狛犬――台湾と日本をつなぐ身近なアート彫刻  栖来ひかり(台湾在住ライター)

【nippon.com:2019年6月2日】https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00695/

 日本の神社の入り口にたたずむ「狛犬」(こまいぬ)。

 一見、どれも似たものばかりと思われるかもしれないが、よくよく比べてみると多様な表情や姿を持っている。関東・関西・九州など地域によっても異なる特徴や個性があるというのだから、狛犬の世界、実はけっこう奥深い。

 台湾でも、古くから寺や廟(びょう)などに獅子像が置かれているが、台湾の日本時代に各地に建てられた日本式神社にあるのは、日本式の狛犬だ。現存する台湾の日本式狛犬を20年かけて訪ね歩いた市来訓子氏と片岡元雄氏は、「台湾の狛犬の故郷は山口県かもしれない」との説を唱えている。市来氏は、日本参道狛犬研究会関西支部長を務める狛犬の専門家で、山口県と台湾の狛犬に多くの共通点が見いだせるのだという。

◆台湾と山口の狛犬の類似点

 冒頭の市来訓子氏や片岡元雄氏は、台湾と山口狛犬に見られる共通点を以下のように指摘している。

 長い垂れ耳 縄のようなねじれた眉 半球状の出目 阿像の開いた口の上下の牙がくっついて、上あごと下あごがブリッジ状につながっている 阿像の口のなかに可動式の玉がある 吽像の頭上にこぶのような小さな角がある たてがみの巻毛が首の位置に並んでいる 身体には線刻の円弧を並べた渦巻文様がある 尻尾は毛並にねじりの入った縦尾 尻尾を真後ろから見ると、中心の縦尾から左右に巻毛が分かれ、さらに真ん中に蕨手文様(わら びてもんよう)の巻毛がある。

 これらは山口県下でも特に、下関市から周南市にかけてみられる特徴だそうで、「山口狛犬楽会」の藤井氏の案内の下、該当する狛犬を訪れた。

 下関市にある「亀山八幡宮」の狛犬は、1901(明治34)年に創建された台湾神宮跡(現・円山飯店)近く、剣潭公園の入り口にある狛犬にそっくりだ。台湾に現存する台湾の日本時代の狛犬としては最大で170センチほどもある。亀山八幡宮のものは1874(明治7)年作と時期は30年ほど早く、台湾より小ぶりだが、オカッパ頭のような頭髪や長く垂れた耳、縄のようにねじれた眉、半球状の出目など多くの共通点が見られ、まさしく台湾神社の狛犬の原型と言えそうだ。

 台湾中部の彰化県和美の製糖工場内に建立された「和美金刀比羅社」(現・和美徳美公園)に、1916(大正5)年に奉納された狛犬は、山口県山陽小野田市の津布田八幡宮にある1912(大正1)年に製作された狛犬とうり二つだ。西山五郎という石工によって作られたもので、その他、下松市の深浦八幡宮、周南市の二俣神社、同市の賀茂神社の狛犬にも、旧・台南神社の狛犬との類似性が見られた。

◆山口から台湾に渡った狛犬のその後

 どうして山口から台湾へ、狛犬は渡ったのだろうか?

 台湾の日本時代初期に、マラリアで命を落とした北白川宮能久親王を祭るために台湾神宮が創建された。この時の台湾総督が、徳山市(現周南市)出身の陸軍大将・児玉源太郎だったことと関係がありそうだ。『臺灣石獅圖?』には、台湾神宮の狛犬は1902(明治35)年に当時の陸軍高官が奉納したと記されている。この高官こそ、児玉源太郎だったのではないか。さらに、歴代の台湾総督19人のうち、5人が山口県出身者であるなど、山口県と台湾のつながりは非常に深い(拙著『台湾と山口をつなぐ旅』・西日本出版社刊を参照)。

 かつての台湾神宮の参道(現在の台北市中山北路)に架かっていた「明治橋」(現・中山橋)には山口県産の徳山石が使われたとの記録もあり、インフラ建設のために台湾に渡った石工集団が、狛犬の製作にも携わった可能性も考えられる。

 戦前に日本から海を越えて台湾に渡った狛犬。しかし戦後、狛犬はさまざまな運命をたどった。2017年、台北市士林区にある「円山水神社」跡の文化財に指定された狛犬が盗難に遭い、その後、日本の植民支配をののしる言葉がペンキで書かれるという事件があった。一方で、上述の彰化県和美(元・金刀比羅神社)の狛犬は、一度、南投県へ贈与されたが、和美の人々の声で2005年に再び地元に戻ってきた。

 最近は日本全国各地で、狛犬愛好家も増え、狛犬にまつわる同人誌も発行されるようになった。

 先述の藤井氏は、「狛犬さんを身近な彫刻アートとして楽しむことで、地域への愛着も湧き、普段の生活の中で新鮮な発見があります。また、身近な狛犬さんから台湾へと、海を越えて思いをはせてみることも楽しいです」と話してくれた。

 世界の歴史的な脈絡の中にあり、人間の営みと常に関わり合い、見る人の思索を巡らすものが「美術」であり「アート」であると筆者は考える。つまりアートとは生き物で、それをめでる人・身近で世話をする人・それについて考える人々がいなければ、アートは生き続けることができない。狛犬は現代社会の中でアート作品として生き返った、そんな風にいえるかもしれない。

参考資料山口狛犬楽会(ウェブサイト)『臺灣石獅圖?』(陳磅?、2013年、猫頭鷹出版)

              ◇     ◇     ◇

栖来ひかり(SUMIKI Hikari)台湾在住ライター。京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。日本の各媒体に台湾事情を寄稿している。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』(2017年、玉山社)『台湾と山口をつなぐ旅』(2018年、西日本出版社刊がある。 個人ブログ:『台北物語〜taipei story』


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