物園に繁殖研究のため無償貸与され、10月30日に一般公開された。
これまで、本誌では関係者にも話を聞いていたが、この丹頂の台湾への無償貸与につい
て伝えてこなかった。それは、これまでの報じられ方に疑問を感じていたからだ。
例えば「今年は中華民国建国100周年記念の年に当たることから……無償貸与が実現する
こととなった」(台北駐日経済文化代表処「台湾週報」)とか「寄贈は、辛亥革命から100
周年を迎える10月10日を祝福する意味合いもある」(読売新聞)などと報じられていた。
これでは、中華民国100周年を祝福するという「政治利用」のために丹頂が使われている
という印象が非常に強かった。無償貸与して亜熱帯の台湾の地でもうまく繁殖できるかど
うかや丹頂を通じて日台交流をはかるといった本来の意義がよく伝わってこなかった。
ところが、最近になって「中華民国100年祝賀記念」のニュアンスが消え、10月30日の一
般公開のニュースでは「無償貸与」ということをまず説明するニュースがほとんどだった。
中でもNHKは「タンチョウ 繁殖研究で台湾に」と題し、動画付きで報道していた。こ
れが本来の報道であろう。下記にご紹介したい。
台北市動物園で丹頂を見た台湾の人々は「とさかが赤く羽根が真っ白な姿は、日本の国
旗のよう」などと関心も高く、動物園では参観者を10分間150人に限定する予定だという。
タンチョウ 繁殖研究で台湾に
【NHK:2011年10月30日】
動画:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111030/t10013608671000.html
北海道に生息する国の特別天然記念物のタンチョウが、温暖な地域でも繁殖できるかを
研究するため、台湾に無償で貸し出され、30日から台北の動物園で一般公開が始まりまし
た。
台湾に来たのは、北海道の釧路市で飼育されていたオスとメスの2羽のタンチョウで、先
月中旬に台北の動物園に到着し、このうち9歳のオスの「ビッグ」が、30日から一般公開さ
れました。それに合わせ、北海道の高橋知事ら日本からの訪問団およそ140人も出席して式
典が行われ、高橋知事は、北海道を訪れる外国人観光客の中で台湾からの観光客が最も多
いことに触れ、「ぜひ北海道にも野生のタンチョウを見にきてほしい」とあいさつしまし
た。
このあと、訪れた家族連れなどが、飼育場の中を歩くタンチョウの姿を興味深そうに写
真に収めていました。訪れた人たちは、「頭の赤い部分がとてもきれい」とか、「北海道
で野生のタンチョウを見てみたい」などと話していました。
北海道のタンチョウが海外に出るのは初めてで、北海道とは違う温暖な地域でも繁殖で
きるかどうか研究が進められることになっていて、もう1羽のメスのタンチョウは来年1
月に公開される見通しだということです。
高橋知事は「東日本大震災を受けて、台湾からの観光客はまだ2割ほど落ち込んでいる