東シナ海安定は台湾次第  山田 吉彦(東海大学教授)

7月から8月にかけての尖閣諸島をめぐる「騒動」で、その姿をテレビで見ない日はない
というくらい出ずっぱりだった東海大学教授の山田吉彦氏。豊かな識見に裏付けられたそ
の発言は正鵠を射ていて、日本人の胸に落ちた。

 今朝の産経新聞「40×40」欄で、山田氏が至極真っ当かつ重要な視点を提示していた。
すなわち、「東シナ海の安定の鍵は、台湾の動向」にあり、その具体策が日台漁業問題の
解決という視点だ。

 本誌で何度も指摘してきたように、台湾にとっての「尖閣問題」とは主権問題ではな
く、漁業問題だと言って過言ではない。もちろん共同開発でもない。

 今回の香港船「啓豊2号」事件をきっかけに、台湾側は「日台関係の強化のためにも第17
回漁業交渉を早期に開いてほしい」と正式に要請した。日本側も「漁業交渉の重要性を認
識し真摯に取り組む」と答えた。

 山田氏は「閣僚クラスと会談したときも、漁業さえ認めてくれれば尖閣問題には触れな
いと話していた」ことを伝え、これを受け「一部、台湾漁民に日本海域内での漁業を認め
るかわりに、日本側の主導で漁場でのルール作りを民間レベルで進めてはどうだろうか」
と提案している。大賛成だ。日台が協調すれば東シナ海は安定する。


東シナ海安定は台湾次第  山田 吉彦
【産経新聞:2012年8月30日「40×40」】

 尖閣諸島と台湾との距離は約170キロメートル。尖閣・石垣島間とほぼ同じだ。中国は
「尖閣諸島は台湾の一部なので中国の領土だ」と主張している。この主張は意味をなさな
いが、東シナ海の安定の鍵は、台湾の動向にあると私はみている。

 馬英九総統は、今月1日に「東シナ海イニシアチブ」構想を発表した。この構想は、東シ
ナ海の情勢に関して日本との平和・互恵を柱に対話を継続し「対立行動の自制」「争議の
棚上げ」「海洋資源の共同開発に向けたシステムの構築」などを目指すものだ。これは、
明らかに日本へのラブコールである。現実に馬総統は、同時期に与那国島に無許可で接近
した海軍の司令官を叱責した。しかし、日本政府は、このような台湾の意思表示にまった
く対応していない。

 日本国内では、台湾情勢に関する信頼できる報道が少ない。的確なのは、本紙の吉村剛
史特派員の記事ぐらいだ。他のメディアは、台湾報道といいながら中国の視点から伝えら
れているものが多い。一部のメディアは、台湾が中国と共同で尖閣問題に対処するという
臆測記事を流したがまったくのデマである。筆者は8月に台湾を訪問し、国会議員、学者、
官僚などと意見交換をしたが、中国との共同展開などあり得ないとの見解であった。

 かねて台湾は、東シナ海の日本海域内における漁業の許可を要望している。閣僚クラス
と会談したときも、漁業さえ認めてくれれば尖閣問題には触れないと話していた。この考
えは、馬総統の東シナ海イニシアチブにも表れている。しかし、すでに16回も行われた日
本と台湾の漁業交渉には進展がない。これは、外交問題、領土問題、中台関係など日本の
縦割り行政では解決しえない内容が包括されているからだ。

 東シナ海南部では、日台の境界線付近でマグロの延縄(はえなわ)漁をめぐるトラブル
が絶えない。そこで、一部、台湾漁民に日本海域内での漁業を認めるかわりに、日本側の
主導で漁場でのルール作りを民間レベルで進めてはどうだろうか。東シナ海問題における
政府の対応は、遅々として進んでいない。尖閣諸島を守るのも民間主導の方が近道のよう
だ。

                                 (東海大教授)


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