席選挙に立候補しないと伝えられ、誰が「沈みゆく船」の船長候補に名乗りを上げるのかと注目さ
れていた。
12月11日、中国国民党は党主席補欠選挙について、12月21日に立候補届出を締め切り、来月1月
17日に投開票すると公示したが、その翌日、新北市長に24,528票差で辛勝した中国国民党のホープ
とされる朱立倫氏が出馬を表明、併せて、2016年の総統選挙に出馬しないことを明らかにした。
これを受け、メルマガ「台湾の声」の林建良編集長は「これは国民党と一緒に心中する選択だ。
これで生き残った国民党の唯一のホープが葬られる。よかった。今夜の酒が旨くなる」というコメ
ントを発表している。
統一地方選挙の勢いを駆って、次の総統選挙で巻き返しを狙う野党の民進党にとっては「朗報」
だろう。民進党は、2010年の新北市長選において蔡英文候補が大差で朱立倫氏に破れたこともあ
り、総統選でもっとも相手にしたくないのが朱立倫氏と位置づけ、支持率が低い呉敦義・副総統な
ら組み易しと看做していた。下記に、その詳細を伝える産経新聞の記事を紹介したい。
国民党の総統選有力候補が不出馬表明 「負け戦」を忌避か
【産経新聞:2014年12月12日】
【香港=田中靖人】台湾の与党、中国国民党の朱立倫新北市長(53)は12日、来年1月17日に投
開票される国民党の主席(党首)選に立候補する意向を明らかにする一方で、「2016年の総統選に
は出馬しない」と表明した。朱氏は次期総統選で国民党の最有力候補とみられていた。同氏による
辞退表明は、中台間の政党交流にも影響を及ぼす可能性がある。
朱氏は国民党が大敗した11月末の統一地方選で再選され、直轄市の市長ポストを唯一維持した。
朱氏は12日、自身のフェイスブックで、「新北市民が再び与えてくれた機会に感謝し、今後4年
(の任期)を全うする」とし、総統選への不出馬を明言した。主席選には「国民党が最も暗い時期
に責任を放棄できない」として出馬する意向を示した。
朱氏をめぐっては同党所属の立法委員(国会議員に相当)の過半数の34人が主席選出馬を要請し
ていた。朱氏は、こうした声に応えつつ、苦戦が予想される総統選は出馬見送りへ先手を打った形
だ。主席選の立候補締め切りは22日だが他に有力候補はおらず、朱氏の当選は確実な見通しだ。
だが、朱氏が言葉通り総統選に出馬しない場合、国民党の候補者選びは難しい選択になる。意欲
があるとされる呉敦義副総統(66)は、野党・民主進歩党の蔡英文主席(58)と比べ、世論調査の
支持率が低い。名前が挙がる●(=赤におおざと)龍斌台北市長(62)も知名度で劣るため、朱氏
に代わる「勝てる候補」を探し出さなければ、政権を失う可能性がさらに高まる。
朱氏の不出馬表明は中国側にとっても“変数”となりかねない。国民党関係者によると、中国側
は、共産党と国民党の交流の一環として13年以降、朱氏の義父が会長を務めるシンクタンクを通
じ、関係を築こうとしてきたとされる。
中国側は一方で、民進党を「台湾独立派」と見なして接触を避けてきた。しかし、地方選での同
党の大勝で、「中国側は方針を変え、民進党との接触を図るはずだ」(童振源政治大特任教授)と
の指摘もあり、朱氏の不出馬表明は、中国の民進党接近に拍車をかける可能性が高い。