旭日中綬章受章の謝牧謙氏が5県産品問題で台湾政府の不適切な対応を指摘

 昨年11月3日に発表された令和2年秋の叙勲において、台湾からは、謝牧謙氏(台湾大学・文化大学日本研究センター諮問委員)、劉耀祖氏(池上一郎博士文庫研究学会理事長)、丘如華氏(社団法人台湾歴史資源経理学会秘書長)の3人が受章しました。

 武漢肺炎の影響で、台湾での叙勲伝達式が遅れていましたが、旭日双光章受章の劉耀祖・池上一郎博士文庫理事長への叙勲伝達式が1月16日に屏東県の池上一郎博士文庫において行われ、日本台湾交流協会高雄事務所の加藤英次所長から勲記と勲章を伝達。また旭日単光章受章の丘如華氏へは1月27日に日本台湾交流協会台北事務所代表公邸で行われ、旭日中綬章受章の謝牧謙氏も翌1月28日に日本台湾交流協会台北事務所代表公邸で行われました。

 謝牧謙氏は伝達式後のメディアインタビューで、台湾がいまだに輸入を禁止している福島県などの5県産品について「食品中の放射性物質に対する日本の検査基準は欧米よりも厳しく、台湾の検査基準は日本を参考にしていると指摘。衛生福利部(保健省)が2年ほど前に台湾大に委託し、5県産食品に対して行った調査でも検査結果は全て合格だったと紹介した。一方で、政府は関連の情報を適時に公表しなかったと付け加えた」と述べていることを中央通信社が伝えています。

 2018年11月24日の公民投票において中国国民党が提案した禁輸継続案が賛成多数を占めて輸入禁止措置が2年間も延期されましたが、実はこの年の夏、台湾政府は5県産品のサンプル調査を大学の研究機関に委嘱し、統一地方選挙前に全て合格だったという検査結果を得ていました。問題視されていた「ストロンチウム90」の調査も2019年春に大学研究機関に委嘱、これもまた秋には合格だったという検査結果を得ています。本誌で何度もお伝えしているとおりです。5県産品の放射能汚染疑いは、すでに1年以上前に晴れています。

 なぜ台湾政府はすぐに調査結果を発表しなかったのか不明ですが、謝牧謙氏の「政府は関連の情報を適時に公表しなかった」という指摘は、このような不明朗な台湾政府の措置を指しています。

 5県産品に放射能汚染の疑いはまったくありません。すでに台湾政府が払拭しています。ラクトパミン入り豚肉の輸入よりも5県産品の輸入解禁は簡単です。残るは台湾政府の政治決断だけです。

・日本台湾交流協会台北事務所:劉耀祖・池上一郎博士文庫理事長 旭日双光章叙勲伝達式[1月19日] https://www.koryu.or.jp/news/?itemid=2065&dispmid=5287

・中央通信社:日台の文化交流、地方創生に貢献 丘如華氏に外国人叙勲伝達[1月28日] https://japan.cna.com.tw/news/apol/202101280007.aspx

—————————————————————————————–日本食品の輸入規制 旭日中綬章受章の原子力専門家「科学的に向き合うべき」【中央通信社:2021年1月28日】https://japan.cna.com.tw/news/apol/202101280009.aspx

 (台北中央社)日本政府の2020年秋の外国人叙勲で旭日中綬章を受章した台湾の原子力専門家、謝牧謙氏は28日、台湾が東日本大震災以降、福島など5県産食品に対して実施している禁輸措置について、科学的、客観的データおよび国際基準の角度から向き合うべきだと言及し、この道理に従えば関連の食品は輸入可能だとの見方を示した。台北市の日本台湾交流協会台北事務所代表公邸で開かれた勲章伝達式後、報道陣の取材に対して述べた。

 謝氏は一方で、5県産食品の問題は人々の感情や政治的要素にも関係するため、台湾は放射能や放射性物質に対する国民の認識を向上させる必要があると指摘した。

 謝氏は1962年から10年にわたり東北大に留学し、工学博士を取得。帰国後、行政院(内閣)原子能委員会(原子力委員会)核エネルギー研究所に約30年間に勤務した。2002年の退職後は核能科技協進会執行長や輔仁大兼任教授などを務めた。

 謝氏は原子力分野における日台間の学界・産業界の交流深化と相互理解の促進に寄与したことから旭日中綬章に決まった。交流協会によれば、謝氏は日台の「産官学」技術者が隔年で一堂に会す「中日工程技術研討会」や日台の専門家による「原子力安全セミナー」で30年以上中心的役割を果たし、原子力分野における日台間の交流の礎を築いた。

 謝氏は伝達式後の取材で、食品中の放射性物質に対する日本の検査基準は欧米よりも厳しく、台湾の検査基準は日本を参考にしていると指摘。衛生福利部(保健省)が2年ほど前に台湾大に委託し、5県産食品に対して行った調査でも検査結果は全て合格だったと紹介した。一方で、政府は関連の情報を適時に公表しなかったと付け加えた。

 衛生福利部の資料によれば、調査は2019年3月から8月にかけて実施。5県産食品31件を対象に、原発事故由来の放射性物質として問題視される「ストロンチウム90」の含有量を分析した。調査の結果、同物質は全サンプルで検出されなかった。調査報告書は昨年5月に公表された。

(陳韻聿/編集:名切千絵)

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