本日の産経新聞は、元空将の織田邦男氏の「日本の安全保障に実害など全くない」「GSOMIAがなくなって大損するのは韓国だ」という発言を紹介しつつ、一方、記事では「韓国の国防の現場ではGSOMIAの重要性は十分認識されており、日本との情報共有は有益だ」という在韓軍事筋の見方を紹介し、政府と軍部に乖離があることを示唆している。
軍事ジャーナリストの鍛冶俊樹(かじ・としき)氏は「実はGSOMIAはとっくの昔に死んでいる」と指摘、それは昨年12月のことで「韓国海軍が能登半島沖で北朝鮮の工作船を保護し、日本の哨戒機に射撃用レーダーを照射して、威嚇した。この瞬間にGSOMIAは崩壊した。韓国は日本に情報を伝えず北朝鮮と通じていたのである」と喝破している。
また、韓国が米国から提供された戦術ミサイル・システムATACMSを北朝鮮に横流した「公算が極めて高い」という驚くべき事実を指摘し、「韓国は破棄に追い込まれたと言ってもいいかも知れない」という観点を提示している。
その上で、米国と北朝鮮が手を組んで「文在寅政権を転覆させる? そんなストーリーの映画も、いずれ公開されるだろう」と結んでいる。
鍛冶氏は文中で「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」という韓国映画について触れ「実際に起きた事件を明確になぞっており、迫真性に富んでいる」とつづっている。
実は国際政治学者からは、米国が裏で北朝鮮と手を組んで北朝鮮が朝鮮半島を統一するのではないかという見方が提示されている。米軍の韓国撤退も指摘されてきた。北朝鮮による文在寅政権転覆はけっして夢物語ではない。鍛冶氏もその可能性を否定しないから、映画に託してそのように指摘したのだと思われる。今回の韓国政府による日本とのGSOMIA破棄がその転換点になる公算が高まったようだ。
ちなみに、日本は台湾とGSOMIAを結んでいない。今後の日台安保対話の中核は、GSOMIA締結にあるのではないだろうか。韓国が日本とのGSOMIAを破棄したことで、その要請は高まった。
—————————————————————————————–対韓工作2019 鍛冶 俊樹(軍事ジャーナリスト)【鍛冶俊樹の軍事ジャーナル:2019年8月23日】
日韓GSOMIA(軍事情報協定)の破棄か継続か、昨日の朝のニュースは「午後に韓国政府が決定する」と伝えていた。韓国系のメディアの多くは「継続」と予想していたが、ともかく決定の発表を待つ他なかった。
待つ間、「何か映画でも」と探したところ、格好の映画があった。「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」韓国映画で1990年代、対北工作にかかわった韓国情報部員の実話に基づいている。
韓国の保守政権が左翼政権の出現を阻止するために北朝鮮の金正日政権に金を渡して、朝鮮半島危機を演出させるというストーリーは、実際に起きた事件を明確になぞっており、迫真性に富んでいる。
現在に置き換えれば、米国のトランプ政権が北朝鮮の金正恩政権と手を結んで韓国の文在寅政権の転覆を企てるというような物語になろうか。北朝鮮が韓国に親北政権の出現を阻止する為に保守派と結んだのである。
さて日韓GSOMIAだが、日米は表面的には失望、遺憾を表明しているが、本音では歓迎しているだろう。韓国は破棄に追い込まれたと言ってもいいかも知れない。実はGSOMIAはとっくの昔に死んでいるのだ。
昨年12月に、韓国海軍が能登半島沖で北朝鮮の工作船を保護し、日本の哨戒機に射撃用レーダーを照射して、威嚇した。この瞬間にGSOMIAは崩壊した。韓国は日本に情報を伝えず北朝鮮と通じていたのである。
米国は3月に予定されていた米韓大規模軍事演習を中止し、実動を伴わない米韓図上演習に切り替えた。米軍の実動部隊の情報が韓国を通じて北朝鮮に漏れることを懸念したのだ。
ところが第2回目の米韓図上演習を夏に挙行するのを北朝鮮は非難して短距離弾の発射を繰り返したが、そのとき、北朝鮮が公開した一部の写真に写っていたのは何と米国製の戦術ミサイル・システムATACMSだ。
これは、韓国にも配備されており、流出経路は韓国からの公算が極めて高い。米国が韓国に事実関係の究明を求めたのは間違いない。説明に窮した韓国の答えが日韓GSOMIAの破棄だった訳だ。
ここで興味深いのは、北朝鮮が米国製兵器を入手している事実を積極的に公表し、米国は、その北朝鮮を一向に非難しない点であろう。トランプと金正恩が手を結んで文在寅政権を転覆させる? そんなストーリーの映画も、いずれ公開されるだろう。