日米首脳共同声明で「国際機関への台湾の意味ある参加への支持」を表明

◆「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた緊密な協力を確認

2月7日午前11時55分(日本時間2月8日、午前1時55分)、ワシントンD.C.を訪問中の石破茂総理は、ホワイトハウスにおいてトランプ大統領と初の首脳会談を行った。

会談は、はじめに石破総理が切り出し「米国は日本の外交・安全保障にとって最も重要な国であり、トランプ大統領との間で、日米同盟を更なる高みに引き上げ、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けて共に協力していきたい旨」(外務省)を述べたという。

そこで「『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けて緊密に協力し、日米同盟を新たな高みに引き上げていくことを確認」し「日米同盟の抑止力・対処力を高め、日米が直面する地域の戦略的課題に緊密に連携の上、対処していくことで一致」(外務省)したという。

トランプ大統領が切り出した経済関係をめぐっては「米国が大きな対日貿易赤字を抱えていると述べ、削減に取り組む考えを述べた。

貿易赤字の解消に向けた措置として関税も選択肢になるとの考えを示した」(産経新聞)そうだ。

その流れの中で石破総理は「対米投資額を1兆ドルという未だかつてない規模まで引き上げたい、そのために共に取り組んでいきたいとの意思を伝え、トランプ大統領から、日本企業による対米投資に対する強い歓迎の言葉」があったという。

中国をめぐっては「東シナ海や南シナ海等におけるあらゆる力又は威圧による一方的な現状変更の試みに反対することを確認」し「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」したそうだ。

会談は約1時間50分に及び、その後、「日米首脳共同声明」を発出した。

◆「日米首脳共同声明」の4つのテーマ

この「日米首脳共同声明」は「平和のための日米協力」「成長と繁栄をもたらす日米協力」「インド太平洋地域における日米連携」「訪日の招待」という4つのテーマで構成されている。

それぞれのポイントとなる文言は次のような箇所だった。

「平和のための日米協力」では、「日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを改めて確認し、尖閣諸島に対する日本の長きにわたり、かつ、平穏な施政を損なおうとするあらゆる行為への強い反対」を表明した。

「成長と繁栄をもたらす日米協力」では、「米国から日本への液化天然ガス輸出を増加することにより、エネルギー安全保障を強化する意図」を発表した。

「インド太平洋地域における日米連携」では、「自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、絶え間なく協力していく決意」を表明し、「中国による東シナ海における力又は威圧によるあらゆる現状変更の試みへの強い反対の意」を改めて表明している。

また「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を強調した。

両首脳は、両岸問題の平和的解決を促し、力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対した。

また、両首脳は、国際機関への台湾の意味ある参加への支持」を表明した。

最後の「訪日の招待」では「トランプ大統領は、石破総理大臣からの近い将来における公式訪問の招待を受け入れた」ことを盛り込んでいる。

トランプ大統領との会談をめぐっては訪米前からいろいろ取り沙汰されてきたが、安倍晋三、菅義偉、岸田文雄の三代の総理が築いてきた米国との関係は、この「共同声明」の台湾に関する文言ではすべて生かされていたようだ。

◆「国際機関への台湾の意味ある参加への支持」を表明

特に今回の「日米首脳共同声明」では、これまでの共同声明では見られなかった「国際機関への台湾の意味ある参加への支持」を表明したことは注目に値する。

例えば、菅総理とバイデン大統領の「共同声明」(2021年4月16日)では、次のように表明している。

2021年4月16日
<日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。

日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。

また、岸田総理とバイデン大統領は2022年5月13日、2023年1月13日、2024 年4月 10日の3回の首脳会談で、次のように表明している。

2022年5月13日
<岸田総理及びバイデン大統領は、台湾に関する両国の基本的な立場に変更はないことを述べ、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて強調した。

両首脳は、両岸問題の平和的解決を促した。

両首脳は、地域の懸念の声に応じることなく 、不透明な形で締結された最近の中国とソロモン諸島との間の安全保障協定に懸念を表明安全保障協定に懸念を表明した。

2023年1月13日
<我々は、台湾に関する両国の基本的立場に変化はないことを強調し、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を改めて強調する。

我々は、両岸問題の平和的解決を促す。

我々はまた、我々が直面している課題が地域横断的であることを認識している。

2024 年4月 10日
<我々は、台湾に関する両国の基本的立場に変更はないことを強調し、世界の安全と繁
栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を改めて表明する。

我々は、両岸問題の平和的解決を促す。

以上のように、2021年以降の共同声明には見られない、今回の「国際機関への台湾の意味ある参加への支持」表明だった。

その点からだけでも、台湾を支持する心強い表明であり、新味ある共同声明だったと言えるのではないだろうか。

日米首脳による共同声明の文言は、これまでG7サミットの首脳コミュニケやG7外相会合声明、日米豪印首脳共同声明などの国際会議でも踏襲されてきている。

今後、「国際機関への台湾の意味ある参加への支持」がG7などでも踏襲されるか注目していきたい。


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