日本は台湾を3度捨てるのか  小山田 昌生(西日本新聞国際部担当部長)

西日本新聞の台北支局長をつとめた小山田昌生(おやまだ・まさお)氏が、昨日の西日本新聞「風向計」欄で、6月に沖縄を訪れて自ら揮毫された「為國作見證」碑の除幕式に臨んだ李登輝元総統に触れつつ、戦後の日台関係に言及し「日本は台湾の『親日的』印象に甘えるだけでなく、民主主義や人権などの価値観を共有する隣人として、正面から向き合う時ではないか」と提案している。それも、台湾の人々から「『3度捨てた』と言われないためにも」と説く。

 とてもよい提案だ。台湾と「正面から向き合う」とは、具体的にどういうことを指すのかにまで言及していただきたかったが、文脈からすると、中国の航空当局が世界各国の航空会社に台湾を「中国台湾」と変更するよう圧力をかけていることに対し、日本は米国のように、航空会社に変更しなくともよいと政府として毅然とした姿勢を示すべきだと言いたいのだろうと受け止めた。

 もちろん、そうあってしかるべきだ。中国の国内事情に日本が付き合う必要はさらさらない。よくぞ言ってくれたと喝采を送りたい。

 ただし、文中で「太平洋戦争」と使っているのはいかがなものだろう。李元総統の実兄の岩里武則こと李登欽氏が戦い、李元総統ご自身が学徒出陣したのは太平洋戦争ではない。大東亜戦争だ。

 この「大東亜戦争」は、昭和16年(1941年)12月12日に政府が閣議決定している正式な呼称だ。戦後、GHQにより使用禁止となり、替わりにGHQが広めたのが米国側の呼称の「太平洋戦争」だった。いまやとっくにGHQの占領は終わっている。誰にはばかって日本の正式呼称を使わないのだろう。

 未だにメディアが太平洋戦争と使っているから、正確に戦前を振り返れない面があり、台湾の日本統治の評価にも影を落としている。

 小山田氏のせっかくのまっとうな主張も、「太平洋戦争」と使うことで腰が引けたような印象を与えかねない。次からは堂々と大東亜戦争と使ってもらいたいものだ。

————————————————————————————-台湾を3度捨てるのか 国際部担当部長 小山田 昌生【西日本新聞「風向計」:2018年7月11日】

 先月、73年目の「慰霊の日」を迎えた沖縄を台湾元総統の李登輝氏が訪れた。95歳、療養後の体を押して、台湾人戦没者慰霊祭と自ら揮毫(きごう)した記念碑の除幕式に参列し、祈りをささげた。日本統治下に育った李氏は海軍兵士だった兄を戦争で失い、自身も学徒出陣を経験している。

 太平洋戦争では、約20万人の台湾人が日本の軍人・軍属として動員され、約3万人が戦死した。台湾南部・高雄市の「戦争と平和記念公園」に台湾人元日本兵の資料館がある。記録や遺品から、彼らが日本の敗戦後も過酷な状況にあったことが読み取れる。

 中国から来た国民党・蒋介石政権に徴用され、多数が大陸で共産党との内戦に従軍させられた。共産党軍の捕虜となり、朝鮮戦争で戦死した人もいる。故郷台湾を守るためではなく、日本と中国の都合で人生を翻弄(ほんろう)されたのだ。

 「日本は、台湾を2度捨てた」。台北特派員だった頃、複数の日本語世代のお年寄りから、この言葉を聞いた。

 1度目は1945年の終戦だ。無条件降伏した日本は、それまで50年間統治してきた台湾の施政権や公有財産を放棄した。だが、その権利は共に汗を流した台湾人ではなく、蒋介石政権の手に渡った。

 2度目は72年の日中国交正常化に伴う台湾との断交だ。日本を「祖国」と教え込まれた世代の台湾人は「見放された」と感じたという。

 72年の日中共同声明で日本政府は、台湾を自国領の一部とする中国の立場を「十分理解し、尊重」すると表明する一方、「同意」や「了承」の表現は避け、台湾との実質的な外交関係を保ってきた。

 中国は最近、「一つの中国」原則を受け入れない台湾の蔡英文政権への圧力を強め、各種の国際会議から締め出すだけでなく、外国企業にまで干渉し始めた。日航や全日空は中国側の要求に応じ、中国向けサイトで「台湾」の表記を「中国台湾」に変更した。

 台湾は観光、グルメの島として人気で、日台間は年間600万人以上が往来する。だが、朝鮮半島や中国を巡る問題に比べ、台湾が抱える苦悩について語られる機会は少ない。中国が経済・軍事的に台頭し、東アジアの勢力図は大きく変わりつつある。日本は台湾の「親日的」印象に甘えるだけでなく、民主主義や人権などの価値観を共有する隣人として、正面から向き合う時ではないか。「3度捨てた」と言われないためにも。

              *     *     *

▼おやまだ・まさお 北九州市出身。筑波大卒。1987年入社。佐世保支局、編集企画委員会、東京 支社報道部、台北支局、アジア室などを経て現職。


【日本李登輝友の会:取扱い本・DVDなど】 内容紹介 ⇒ http://www.ritouki.jp/

*ご案内の詳細は本会ホームページをご覧ください。

● 金子展也著『台湾に渡った日本の神々』お申し込み【2018年5月】
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px
 *詳細は本会HP ⇒ http://www.ritouki.jp/index.php/info/20180514/

● 渡辺利夫著『決定版・脱亜論』お申し込み【2018年2月】
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px
 *詳細は本会HP ⇒ http://www.ritouki.jp/index.php/info/20180222/

● 映画『台湾萬歳』DVD お申し込み【2018年2月】
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za
 *詳細は本会HP ⇒ http://www.ritouki.jp/index.php/info/20180222-01/

● 映画『海の彼方』DVD お申し込み【2018年2月】
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za
 *詳細は本会HP ⇒ http://www.ritouki.jp/index.php/info/20180222-02/

● 台湾フルーツビール・台湾ビールお申し込みフォーム
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/rfdavoadkuze

*台湾ビール(缶)は在庫が少なく、お申し込みの受付は卸元に在庫を確認してからご連絡しますの
 で、お振り込みは確認後にお願いします。【2016年12月8日】

● 美味しい台湾産食品お申し込みフォーム【常時受付】
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex

*沖縄県や伊豆諸島を含む一部離島への送料は、宅配便の都合により、恐縮ですが1件につき
 1,000円(税込)を別途ご負担いただきます。【2014年11月14日】

*パイナップルケーキとマンゴーケーキを同一先へ一緒にお届けの場合、送料は10箱まで600円。

・奇美食品の「マンゴーケーキ(芒果酥)」2,900円+送料600円(共に税込、常温便)
 [同一先へお届けの場合、10箱まで600円]

・奇美食品の「パイナップルケーキ(鳳梨酥)」2,900円+送料600円(共に税込、常温便)
 [同一先へお届けの場合、10箱まで600円]

・最高級珍味「台湾産天然カラスミ」4,160円+送料700円(共に税込、冷蔵便)
 [同一先へお届けの場合、10枚まで700円]

● 書籍お申し込みフォーム
  https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px

・金子展也著『台湾に渡った日本の神々』*new
・渡辺利夫著『決定版・脱亜論─今こそ明治維新のリアリズムに学べ』
・呉密察(國史館館長)監修『台湾史小事典』(第三版)
・李登輝・浜田宏一著『日台IoT同盟』 *在庫僅少
・王育徳著『台湾─苦悶するその歴史』(英訳版) *在庫僅少
・浅野和生編著『1895-1945 日本統治下の台湾
・王明理著『詩集・故郷のひまわり』
・李登輝著『李登輝より日本へ 贈る言葉』 *在庫僅少
・宗像隆幸・趙天徳編訳『台湾独立建国運動の指導者 黄昭堂
・林建良著『中国ガン─台湾人医師の処方箋』 *在庫僅少
・盧千恵著『フォルモサ便り』(日文・漢文併載)
・黄文雄著『哲人政治家 李登輝の原点
・李筱峰著・蕭錦文訳『二二八事件の真相』

● 台湾・友愛グループ『友愛』お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/hevw09gfk1vr

*第1号〜第15号(最新刊)まですべてそろいました。【2017年6月8日】

● 映画DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za

・『海の彼方』*new
・『台湾萬歳』*new
・『湾生回家』
・『KANO 1931海の向こうの甲子園
・『台湾アイデンティティー
・『台湾アイデンティティー』+『台湾人生』ツインパック
・『セデック・バレ』(豪華版)
・『セデック・バレ』(通常版)
・『海角七号 君想う、国境の南
・『台湾人生
・『跳舞時代』 *現在「在庫切れ」(2017年8月31日)
・『父の初七日』*現在「在庫切れ」(2018年3月20日)

● 講演会DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/fmj997u85wa3

・2014年 李登輝元総統ご来日(2014年9月19日〜25日)
・片倉佳史先生講演録「今こそ考えたい、日本と台湾の絆」(2013年12月23日)
・渡部昇一先生講演録「集団的自衛権の確立と台湾」(2013年3月24日)
・野口健先生講演録「台湾からの再出発」(2010年12月23日)
・許世楷駐日代表ご夫妻送別会(2008年6月1日)
・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
・2004年 李登輝前総統来日特集(2004年12月27日〜2005年1月2日)
・許世楷先生講演録「台湾の現状と日台関係の展望」(2005年4月3日)
・盧千恵先生講演録「私と世界人権宣言─深い日本との関わり」(2004年12月23日)
・許世楷新駐日代表歓迎会(2004年7月18日)
・平成15年 日台共栄の夕べ(2003年11月30日)
・中嶋嶺雄先生講演録「台湾の将来と日本」(2003年6月1日)
・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)


◆日本李登輝友の会「入会のご案内」

・入会案内:http://www.ritouki.jp/index.php/guidance/
・入会申し込みフォーム:https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/4pew5sg3br46


◆メールマガジン日台共栄

日本の「生命線」台湾との交流活動や他では知りえない台湾情報を、日本李登輝友の会の活動情報
とともに配信する、日本李登輝友の会の公式メルマガ。

●発 行:
日本李登輝友の会(渡辺利夫会長)
〒113-0033 東京都文京区本郷2-36-9 西ビル2A
TEL:03-3868-2111 FAX:03-3868-2101
E-mail:info@ritouki.jp
ホームページ:http://www.ritouki.jp/
Facebook:http://goo.gl/qQUX1
 Twitter:https://twitter.com/jritouki

●事務局:
午前10時〜午後6時(土・日・祝日は休み)

●振込先:

銀行口座
みずほ銀行 本郷支店 普通 2750564
日本李登輝友の会 事務局長 柚原正敬
(ニホンリトウキトモノカイ ジムキョクチョウ ユハラマサタカ)

郵便振替口座
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)
口座番号:00110−4−609117

郵便貯金口座
記号−番号:10180−95214171
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)

ゆうちょ銀行
加入者名:日本李登輝友の会 (ニホンリトウキトモノカイ)
店名:〇一八 店番:018 普通預金:9521417
*他の銀行やインターネットからのお振り込みもできます。



投稿日

カテゴリー:

投稿者: