めた国」と題して、クック諸島を日本は193番目に国家承認したことを書いていた。
日本がニュージーランドと自由連合関係にあるクック諸島を国家承認したのは本年(20
11年)3月25日。6月16日には、日本とクック諸島の外交関係開設のための書簡への署名式
及び書簡の交換を行い、正式な外交関係がはじまっている。
外務省によれば、クック諸島の人口は22,600人ほど、27カ国と外交関係があり、国際機
関の加盟も25を数えるという。
千野記者の記事を読んでいて、クック諸島が台湾の置かれている国際環境とよく似てい
ると思った。ただ1点、大きく異なるのは、クック諸島は1997年に中国と外交関係を結んで
いることだが、中国という大きな壁を乗り越えて、日本が台湾を国家承認できる道はない
のだろうか。
東日本大震災であれだけの善意を示してくれた「世界一の親日国」台湾は、中国の領土
ではない。日本はどれほど大きな障害があろうとも、台湾との国交正常化をはかるべきで
はないのか。それが日本の国益に合致し、台湾の国益にも合致する最善の道なのだから。
日本が193番目に認めた国 千野 境子(産経新聞特別記者)
【産経新聞:平成23年(2011年6月28日)「遠い響・近い声」】
太平洋の北はハワイ、東はイースター島、そして西南のニュージーランド(NZ)を結
んでできる三角形をポリネシアン・トライアングルと呼ぶ。そのほぼ真ん中に在るのがク
ック諸島。総面積は鹿児島県徳之島ほど、約1万5千人が暮らす。
先頃、日本は国家承認し、193カ国目の外交関係が生まれた。
クック諸島は国なの? と言う人もいるかもしれない。「いい質問です」。外交・防衛
を委ねるNZと自由連合を結ぶ同諸島を、過去、何度か承認しようと外交当局が試みたも
のの、日本の厳密な法解釈では独立国家たるハードルをクリアできなかった経緯があるの
だ。
一方、クック諸島は欧州を中心に27カ国と外交関係があり、日本は28番目。国際機関の
加盟も世界保健機関(WHO)など24を数える。
6月半ば、初来日し明治大学で講演したヘンリー・プナ首相は、自然に恵まれた楽園とし
ての魅力や島国で海の民という両国の共通点、環境問題をはじめ2国間協力を通しての関
係発展への期待を熱く語り、学生たちも熱心に聞き入った。
それにしても、なぜいま国家承認なのだろう。背景には太平洋の戦略環境の変化と中国
の台頭がある。
南シナ海をめぐる緊張はいよいよ波が高い。それだけではない。東シナ海、さらには太
平洋を視野に入れつつ、中国は資源獲得や影響力拡大を目指して、無償や借款などの経済
援助を切り札に太平洋島嶼(とうしょ)国への接近に余念がないのである。
借款は中国人労働者の受け入れが条件だったり、援助によるハコモノは雨漏りがしたり
と評判は必ずしも良くないが、それでひるむようなお国ではない。クック諸島の承認は19
97年と日本より古く、お隣ニウエに至っては、自由連合を結ぶNZ以外の承認国は中国だ
けだ。
冷戦時代に米ソ角逐の場とされた太平洋は、いまや中国の存在が誰の目にも明らかにな
りつつある。楽園が楽園でなくなるのでは─。小国ゆえ公言こそしないが、先行きに不安
を抱く島嶼国は少なくない。
日本を国家承認に踏み切らせたのには、クック諸島が近年、外交空間を広げ自立的な歩
みを強めてきたことが大きい。将来は国連加盟も目指している。さらにNZとの「100年記
念共同宣言(2001年)」文書に、同諸島を「主権・独立国家」と見なせる文言が存在した
ことも有力な法的根拠になった。
国家同士なら、国際舞台で共同歩調も取りやすい。プナ首相も温暖化交渉や中西部太平
洋まぐろ類委員会など、日本と協力できる分野はいろいろあると抱負を語る。排他的経済
水域(EEZ)は国土の8千倍もあり、海洋資源が豊かなのだ。
だが、1997年のサイクロンでは人口の6%が犠牲になり、「東北の津波に国民は何日も
テレビの前にくぎ付けになり心を痛めた」という。生存そのものが海に依拠する島嶼国ゆ
えに、巨大津波は決してひとごとではなかったのである。
偶然にも日本でクック諸島などポリネシアと最も縁が深い自治体は、被災地の福島県い
わき市だ。
地震で休館中の観光施設「スパリゾートハワイアンズ」は「フラガール」が売り物で、
斜陽だった炭鉱の町をよみがえらせた。再開を目指し、来年には町ぐるみの環太平洋民族
舞踊祭も企画するなど、ポリネシアとの絆を復興の原動力にしたいという。