日台共栄首長連盟が岸田総理に手交した「要請書」全文

内閣総理大臣 自由民主党総裁 岸田文雄 閣下

日本と台湾との一層の関係強化および中国による覇権的行動に対して一層の毅然とした対応を求める要請書

                                           令和5年6月15日                                          日台共栄首長連盟                                      会長 宮元 陸 役員一同

はじめに

 日台共栄首長連盟は令和3年5月15日に発足した、我が国と台湾との一層の関係強化を目指す、全国の基礎自治体首長によって構成される団体です。(令和5年6月15日現在 会員数136名)

 我々は歴史的につながりが深く、自由・民主主義・法の支配・人権という価値観を共有する日本と台湾の関係を、従来の経済文化面での交流促進にとどまらず、政治、安全保障面において更に強固にするべきとの意見で一致し、そのために必要な活動を、志を同じくする国会議員・地方議員はじめ多くの方々と共に連携して行うことを本旨としております。

 我が国EEZ内に弾道ミサイルを昨年落下させるなど、中国は現在、力を背景とした覇権的な行動を台湾周辺そして尖閣諸島周辺はじめ各地でエスカレートさせ、情勢は厳しさを増しております。このようななか、日台間においては緊密な人的・物的交流が行われているにもかかわらず、それらは依然として法的に担保されておりません。安全保障面での結びつきも極めて脆弱です。

 我々は台湾との深い関係を持つ、またそれを願う基礎自治体の首長として、日本と台湾の人々が、これまでも喜びや悲しみを共に分かち合い、互いに励まし合い、熱い絆と友情で結ばれてきた現場を見ております。我々はこの強い絆が今後とも永遠に続くことを願い、日台の更なる関係強化と、中国の覇権的行動に対し、より一層毅然とした対応で臨んでいただきたく、我が国政府に対して以下の要請を行うものです。

1、日台間の法的整備(仮称「日台関係法」の制定等)を進めて下さい。

2、中国に台湾有事を起こさせないため、安全保障面において国際社会および日米台の緊密な連携を推進する  ことを要望します。

3、尖閣諸島への不当な干渉をはじめとする中国の一連の覇権的行動(核の脅威も含む)に対して、一層の毅  然とした対応を求めます。

趣旨

 政府は昨年12月16日に「国家安全保障戦略」を閣議決定しました。その中で台湾について「我が国にとって、民主主義を含む基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人」と位置づけ、台湾海峡の平和と安定は「国際社会の繁栄に不可欠な要素」とし、「両岸問題の平和的解決を期待するとの我が国の立場の下、様々な取組を継続していく」と記されています。

 G7広島サミットでも共有された、このような台湾に対する政府の公式見解は、安倍内閣、菅内閣、岸田内閣が一貫して我が国と台湾との関係を重視し、日台を取り巻く状況について国際社会の理解を得るべく文言を積み重ねてきたことの現れであると評価するものです。

 しかしながら、中国の覇権的行動はエスカレートする一方です。

 日本は米国のような「台湾関係法」を制定していないため、日台関係は緊密な人的交流があるにもかかわらず、一切の法的裏付けがない不安定の中で辛うじて「実務関係」を維持している状態です。当然、日台間の交流に安全保障分野は含まれていません。実は安全保障面での日台間の情報共有等を妨げる我が国の法的な規制は「ない」(政府答弁)のです。にもかかわらず、有効な手段を取らないとすれば、間もなく我が国の存立基盤は危うくなる、そう我々は強く懸念するものです。

 世論調査からも、台湾の人々の圧倒的多数は中華人民共和国とは別個の存在である独立した現状の維持を望んでいます。また台湾周辺海域の安定は我が国のシーレーンの安全確保と、対米核抑止力獲得を狙う中国ミサイル潜水艦の配備阻止、即ち米国の核の傘の信頼性の確保にとり重要であり、これは台湾の協力なしには実現不可能です。

 国際社会に台湾周辺の平和と安定の重要性を更に認識させることと、日米同盟と台湾の協力の実現そして強化は、両者相まって台湾有事の防止、アジア・太平洋地域の平和と安定、ひいては我が国の安全保障の鍵であると言えます。

 しかし、我が国政府は前者については積極的に推進しているものの、残念ながら後者、つまり戦略的に重要な台湾及びその周辺の安全保障面での戦略とその展開については、「中国への過剰な配慮」に加え、米国の台湾関係法と台湾の人々の親日感情に甘え、主体的な関与を避け、責任を回避していると言わざるを得ません。これは我が国固有の領土である尖閣諸島への中国からの不当な干渉に対する、現状の我が国政府の姿勢にも通底する問題であると考えます。

 中国の覇権的行動がエスカレートするなか、我が国が現状の態度をとり続ければ、日米同盟の絆が弱まることは避けられず、その結果、日本が目指す「自由で開かれたインド太平洋」の実現はおろか、台湾海峡の平和と安定が失われ、ひいては我が国の国益が大きく損なわれることは必定です。

 日台間の法的整備を早急に進め、中国に台湾有事を起こさせないため、安全保障面において国際社会および日米台の緊密な連携を推進し、合わせて尖閣諸島への不当な干渉をはじめとする中国の一連の覇権的行動に対して、一層の毅然とした対応を求めます。

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日台共栄首長連盟 役員

会  長 石川県加賀市長  宮元  陸

副 会 長 大阪府東大阪市長 野田 義和

     岡山県美作市長  萩原 誠司

幹 事 長 埼玉県本庄市長  吉田 信解

副幹事長 沖縄県石垣市長  中山 義隆

幹  事 山形県南陽市長  白岩 孝夫

     茨城県笠間市長  山口 伸樹

     東京都稲城市長  高橋 勝浩

     長野県松川村長  平林 明人

     静岡県南伊豆町長 岡部 克仁

     奈良県天川村長  車谷 重高

     福岡県豊前市長  後藤 元秀

     沖縄県与那国町長 糸数 健一

監  事 福島県白河市長  鈴木 和夫

     岡山県総社市長  片岡 聡一

顧  問 前全国市長会会長 松浦 正人

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