日仏外交・防衛閣僚会議(2+2)でも「台湾海峡の平和と安定の重要性」を確認

 1月20日夜、日本側は林芳正・外務大臣と岸信夫・防衛大臣とフランス側はジャン=イヴ・ル・ドリアン仏欧州・外務大臣とフロランス・パルリ仏軍事大臣が出席して「日仏外務・防衛閣僚会合(2+2)」をオンラインで開催した。

 外務省は、「『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け……協力を促進していくことを確認」するとともに、中国を念頭に置いた「東シナ海・南シナ海情勢への深刻な懸念を共有」し、「台湾海峡の平和と安定が重要であることを確認するとともに、両岸問題の平和的解決を促すことで一致」したと報じている。また「香港情勢、新疆ウイグル自治区の人権状況についても深刻な懸念を共有したとも伝えている。

 時事通信は「自衛隊と仏軍の相互訪問の法的基盤となる「円滑化協定(RAA)」の締結も視野に、事務レベルで議論を開始することを確認した」と報じている。

 折しもこの日、フランス下院は、中国政府によるウイグル族に対する「ジェノサイド(集団殺戮)」を政府が公式に認定し、非難するよう求める決議を採択した。

 産経新聞は「決議は、新疆ウイグル自治区では強制労働が行われ、拷問、性的虐待についても証言があると指摘した。強制不妊政策でウイグル族の人口が抑制され、子供の連れ去りも横行していると批判。中国には「ウイグル族全体、またはその一部を抹殺しようとする意図がある」とし、ジェノサイドに相当すると明記した」と伝え、圧倒的多数(賛成169票、反対1票、棄権5票)で採択されたと報じている。

 ちなみに、中国によるウイグル族への人権弾圧を、米国のバイデン政権は「ジェノサイド」と認定し、カナダ、ベルギー、オランダ、チェコ、リトアニア、イギリスでは国会が「ジェノサイド」とする決議や動議を採択し、ここにフランスが加わった。

 昨年はヨーロッパ各国も中国によるウイグル族への人権弾圧を非難しはじめるとともに、台湾との関係を強化しはじめた年でもあった。チェコ、フランス、欧州議会公式代表団(フランス、リトアニア、チェコ、ギリシャ、イタリア、オーストリア)、スロバキア、リトアニア、エストニア、ラトビアが台湾を訪問している。

 日本は日仏外務・防衛閣僚会合に先立ち、1月7日に米国と「日米安全保障協議委員会(2+2)」を開いたばかりで、このときも「新疆ウイグル自治区及び香港の人権問題について、深刻な、かつ継続する懸念を表明」し「さらに、台湾に関し、日米双方は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促した」と外務省は伝えていた。

 下記に、外務省による日仏外務・防衛閣僚会合についての発表と、採択された「共同声明」を紹介したい。

◆第6回日仏外務・防衛閣僚会合(「2+2」):共同声明 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100292463.pdf

—————————————————————————————–第6回日仏外務・防衛閣僚会合(「2+2」)外務省:2022年2月21日https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_009249.html

 1月20日、林芳正外務大臣及び岸信夫防衛大臣は、ジャン=イヴ・ル・ドリアン仏欧州・外務大臣(H.E. Mr. Jean-Yves Le Drian, Minister for Europe and Foreign Affairs of the French Republic)及びフロランス・パルリ仏軍事大臣(H.E. Ms. Florence Parly, Minister for Armed Forces of the French Republic)との間で、第6回日仏外務・防衛閣僚会合(「2+2」)をテレビ会議形式で実施したところ、概要は次のとおりです。会合は、午後9時30分から11時15分まで約1時間45分行われ、会合後に共同声明が発出されました。

1 総論

(1)四大臣は、日仏を取り巻く安全保障環境が厳しさと不確実性を増している中で、日仏間の「特別なパート  ナーシップ」の重要性を再確認し、両国間の安全保障・防衛協力が近年飛躍的に強化されていることを歓  迎しました。

(2)四大臣は、日仏間の安全保障・防衛協力を一層強化することを確認するとともに、インド太平洋での協力  を一段と高いレベルに引き上げ、地域情勢や国際社会の諸課題への対応における連携を更に促進していく  ことで一致しました。

2 安全保障・防衛協力

(1)四大臣は、昨年の仏練習艦隊「ジャンヌ・ダルク」日本寄港時の共同訓練や北朝鮮関連船舶による「瀬取  り」対応への仏艦船の参加等の協力を振り返りつつ、日仏間の共同訓練や演習、防衛装備・技術協力を引  き続き促進していくことで一致しました。

(2)四大臣は、経済安全保障について、日仏がそれぞれのサプライチェーンの強靱性を高めることの重要性を  確認するとともに、経済安全保障上のリスク認識や情報共有等の協力を一層強化することで一致しました。

(3)四大臣は、サイバー及び重要・新興技術について、様々な多国間フォーラムでの協力や、サイバー攻撃へ  の対応での連携を再確認しました。また、四大臣は、5Gをはじめとする情報通信インフラの安全性や信頼性  を担保する上で、開放性や多様性といった原則や情報共有を行うことの重要性を確認しました。また、宇宙  空間における安全及び安全保障上の課題への対処においても日仏で緊密に連携していくことで一致しました。

3 インド太平洋協力

(1)四大臣は、日仏包括的海洋対話、日仏インド太平洋作業部会といった枠組みを通じ、「自由で開かれたイ  ンド太平洋」の実現に向け、ジブチ所在のPKO訓練センターへの支援等具体的協力が進展していることを高  く評価するとともに、協力を促進していくことを確認しました。

(2)日本側は、EUのインド太平洋戦略策定にフランスが大きく貢献したことを高く評価し、フランス側は、EU  に対するインド太平洋に関する日本からのインプットを高く評価しました。四大臣は、フランスが2022年上  半期のEU議長国であることを踏まえ、EUの枠組みにおいても日仏間で一層緊密に連携し、フランスを含むEU  のインド太平洋への関与を一層強化していくことを確認しました。また、日本側は、NATOがインド太平洋地  域に関心を高めていることも歓迎しました。

(3)四大臣は、ASEANの中心性・一体性及び「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」への支持を再  確認し、AOIPに沿った実質的協力を進めることの重要性を確認しました。

(4)四大臣は、トンガ支援における連携についても意見交換を行いました。

4 地域情勢

(1)四大臣は、東シナ海・南シナ海情勢への深刻な懸念を共有した上で、力を背景とした一方的な現状変更の試  みに強く反対することで一致しました。また、四大臣は、台湾海峡の平和と安定が重要であることを確認す  るとともに、両岸問題の平和的解決を促すことで一致しました。さらに四大臣は、香港情勢、新疆ウイグル  自治区の人権状況についても深刻な懸念を共有しました。

(2)四大臣は、最近の一連の弾道ミサイル発射を始め、北朝鮮による核・ミサイル開発の進展に対し強い懸念を  表明しました。また、四大臣は、北朝鮮の全ての大量破壊兵器、あらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検  証可能な、かつ不可逆的な廃棄に向け、安保理決議の完全な履行が不可欠であることを改めて確認しました。  さらに、林大臣は、拉致問題の即時解決に向け引き続きの理解と協力を求めました。

(3)四大臣は、ウクライナ情勢についても意見交換を行い、ウクライナの主権及び領土一体性を完全に尊重する  ことを改めて確認しました。

(4)また、四大臣は、イラン情勢について意見交換を行い、関係国が核合意上のコミットメントへの相互遵守に  早期に復帰することへの期待を表明しました。そのほか、四大臣はアフガニスタン、アフリカ情勢等について  も意見交換を行いました。

5 軍縮・不拡散

 四大臣は、第10回NPT運用検討会議の成功に向けて引き続き緊密に連携していくことで一致しました。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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