新型コロナが証明した「独立国家」台湾  岡崎研究所

 今般の武漢肺炎は、パンデミック(世界的大流行)までを引き起こした中国・武漢発の禍(まが)だが、これまで光が当たらないところまで明るみにした。世界保険機関(WHO)と中国がズブズブの関係にあることなど、通常では気づかれないさまざまな問題点をさらけ出させた。その一つが台湾と中国の関係だ。

 中国は、台湾を「中華人民共和国の領土の不可分の一部である」と主張し、武漢肺炎問題でも「中国の中央政府は台湾の同胞たちの健康と幸せを守ることに非常に誠実であると言えると思う。台湾が中国の一部であり、この事実を変えることはできないことを改めて伝えたい」(2月6日付「ロイター通信」)と豪語していたにもかかわらず、その台湾には医療情報のみならずマスクさえ送らなかった。

 台湾は独自の感染防止対策を取り、それが世界的な評価を得た。これによって、台湾が改めて一つの自立した国家であることを世界に示し、中国の主張のウソがばれる結果をもたらした。

 台湾が主権独立国家であることは論を俟たない。問題はいまだに中華民国を名乗っていることにある。いまでも中華民国は常任理事国の一つとしてその国名を国連に残している。ロシア連邦がソビエト社会主義共和国連邦を引き継いで国連の常任理事国の席に座ったように、中華人民共和国は中華民国を継承してその席に座った。だから、中華人民共和国は中華民国を「亡命国家」と呼び、「領土の不可分の一部」と主張する一つの根拠を与えている。中華民国と名乗っている限り、中国は「中華民国のある台湾は自国領だ」と主張し続けるだろう。

 それにしても、武漢肺炎によって、台湾が主権独立国家とみなされるようになるとは皮肉だ。発症させた中国自身がこの状態をもたらしたとも言え、中国としては苦々しい思いであろう。

 下記に紹介する岡崎研究所の論考「新型コロナが証明した『独立国家』台湾」は、武漢肺炎によって「台湾が中国の一部でないことを世界の人々に認識せしめた」と指摘し、「将来的には、日米両国がリードして、国際社会の世論を喚起し、台湾の国際的地位の向上を推進できれば良い」と述べている。そうあって欲しいものだ。

—————————————————————————————–新型コロナが証明した「独立国家」台湾  岡崎研究所【WEDGE infinity:2020年4月13日】

 今回の新型コロナウイルス禍をめぐる世界の反応を見れば、台湾が中国の一部でないことを世界の人々に認識せしめた意味は極めて大きい。

 台湾においては、2003年のSARS禍の際、84人の死者を出したことが教訓として残されていることもあり、今回の新型コロナウィルス禍の対策においては、初期対応、検査、隔離、治療などの諸措置が透明性を以て極めて効率的に行われた。これによって、諸外国に比べ、感染者数、死者数とも、今のところ、抑えられた状況にある。台湾は、中国、欧州、米国などに比べて、この災禍を見事なまでに制御していると言える。

 これまでのこの台湾の制御策は世界的にも評価されており、この状況から見れば、台湾と中国の違いは一目瞭然である。

 最近、中国外交部の報道官は、自らのツイッターに、この新型コロナウィルス禍の発生源として、米国軍人がウイルスを武漢に持ち込んだ可能性がある、と投稿した。これに対し、米国は、新型コロナウィルス禍の発生源が中国であることは疑いのない事実であり、初期段階における中国の隠ぺい工作の結果、世界各国が犠牲を払わざるをえなくなった、としてこの投稿内容を非難した。トランプ大統領は、これを新型コロナウイルスではなく、「CHINESE VIRUS」(中国ウィルス)と呼んだ。ポンペオ国務長官は「武漢ウイルス」と呼んだ。

 ごく最近、米国下院においても、この中国報道官のツイッター内容を「偽情報」であると非難して、超党派の決議案がまとめられた。

 中国共産党の習近平政権としては、自分たちの過ちを米国に転嫁する必要から、このようなやり方をとったのであろうが、これは米国の識者を憤慨させるものとなっている。中国としては、新型コロナウィルスを拡散したことの責任を曖昧にし、中国自身が被害者であるかのような印象を与えようと躍起になっているように見える。

 台湾の住民たちにとっては、中国における新型コロナウィルス禍の感染拡大、その後の様々な処置を見ていて、中国の一党独裁体制がいかに新型コロナウィルス対策において限界を有するかを改めて認識させられたに違いない。

 日本はこれまで台湾をWHO(世界保健機関)のメンバーに入れるよう支持してきた。しかし、今回のWHOの動きを見れば、中国の実質的な影響下にあるためであろうが、台湾の存在を無視するような態度を取り続けている。そのため、台湾が新型コロナウィルス禍を如何に抑え込んでいるかについての知識、経験が世界に直ちに共有される状況になっていないのは残念なことと言わねばならない。

 では、台湾がいかに、この新型コロナウィルスの危機に対応してきたかを、改めて、ここで共有しておきたい。日本にとっても参考になるはずである。

 台湾は、早い段階で、国境を閉め、中国との行き来を制限した。学校を2週間閉め、その間に消毒を徹底した。学校の再開時には、徹底した検温検査等を行なった。学校の入り口に、テントの待機所を設け、微熱等で感染可能性のある人はそこで控えるようにしてもらった。台湾の保険証のチップには、渡航歴が分かるようになっていて、診察した段階で、中国や日本に行っていた人かが一目でわかる仕組みが出来ていた。病院はもちろん、レストラン、ホテル等の入り口でも、入館者にはアルコール消毒液を噴射して対処した。そうしない人は、中に入れない。マスクは、早い段階で輸出を禁止し、国内で購入する人は、数を制限し、保険証等のチップで管理する。こうする事で、価格の急騰や品不足、買いだめを防止できた。

 これらの国内的対処のみではない。台湾は、小さい国ながら、世界第3の経済大国である日本に、救いの手を差し伸べてくれた。新型コロナウィルスによって国境が封鎖された南米ペルーで足止めされた日本人観光客29人を、台湾政府のチャーター便に乗せてくれた。104人の日本人観光客は旅行会社が手配したチャーター機で出国した。台湾政府は、自ら、遠いペルーまでチャーター機を手配して自国民の出国を助けたが、その恩恵に、日本も預からせてもらった格好だ。

 3月下旬、トランプ大統領は、超党派の支持で成立した「台湾同盟国際保護強化イニシアチブ法(TAIPEI法)」に署名した。この法律は、台湾の外交関係強化についての施策を、国務省が議会に報告することを義務付けるとともに、台湾の安全保障に脅威となる国との係わりを再検討することを政府に義務付けている。

 日本も、米国の同盟国として、そして台湾への感謝も含め、今後、台湾との関係をより一層強化すべきであろう。将来的には、日米両国がリードして、国際社会の世論を喚起し、台湾の国際的地位の向上を推進できれば良い。今回の新型コロナウィルスの危機は、台湾が実体として独立した国家であることを証明したのだから。

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