新刊紹介:喜安幸夫『新日中戦争−尖閣諸島を奪回せよ!!』

未来を空想した軽い読み物ではなく、予言めいたものを感じさせるリアルさ

 喜安幸夫氏の新刊『新日中戦争−尖閣諸島を奪回せよ!!』は本誌でも先に紹介したが
(6月30日発行、第555号)、「台湾週報」でも紹介されたので、転載してご紹介したい。

 喜安氏は昨春、『日本中国開戦−激震襲う台湾海峡』も刊行しており、日米台間に軍
事ホットラインが引かれる場面も登場する。今春にはマンガ版も出ている。

 台湾と中国の軍事衝突よりも、日本と中国の軍事衝突にはリアル感が漂う。架空とい
って済ませられない切迫感を感じる。日台、日米台はかくあるべしという期待が伴うか
らだ。この2書をお薦めしたい。                   (編集部)


新刊紹介:『新日中戦争』
【7月18日 台湾週報】

 東アジア情勢はいったいどこへ向かうのか。日本近海で有事が発生したとき、日本政
府は果たして対処できるのか。そんな未来をシミュレーション小説という手段で描いた
のが本書である。とはいえ、ただ未来を空想した軽い読み物ではなく、予言めいたもの
を感じさせるリアルさがある。なぜなら、著者は本「台湾週報」の前編集長であり、本
書は2007年までに起こった現実を前提に、科学的に東アジア情勢の動向を分析し、起こ
り得る未来を描いているからだ。

 上海万博が開催される2010年、東シナ海の日中中間線付近で日中双方が開発する石油
ガス田に中国の軍艦が異常接近するなどし、日中間の緊張は徐々に高まっていた。しか
しながら、万博期間中、マスコミの報道は「大中国の発展」を称える色に塗りつぶされ
ていた。そんな中、中国は初の原子力空母・鎮遠を完成させた。そして、日本政府は野
党議員と民間団体を通じて、水面下で台湾の国防部長と連絡をとり、来日講演会をセッ
トし、非公式ながら日台防衛会談を実現させた。これに中国が強烈な反発を示すと、米
国もまた困惑の色を隠さなかった。

 2010年の上海万博を表面上成功させた中国は、急激に経済成長を遂げた一方で、深刻
な社会問題を抱え込んでいた。特に水と空気の汚染問題は深刻さを増し、川は淀み、町
ではマスクをしなければ歩けないほど悪化していた。また、急速な開発で土地を奪われ
た農民が北京や上海の周辺にスラム街を形成し、不安要素となっていた。

 黄河の枯渇が迫り、北京の水不足を解決するため、長江から黄河流域へ水を引き込む
運河を建設する「南水北調」巨大プロジェクトが2002年から進められていたが、この工
事で立ち退きに遭い、土地を奪われた農民らが暴動を起こし、これに軍隊を動員して鎮
圧する事態がたびたび発生するようになった。長江の最下流に位置する上海にとって、
貴重な長江の水を北京に持っていかれることへの不満が募っていた。北京は上海や長江
流域の高官を汚職で摘発し、人事を握ってコントロールしようとした。

 新疆ウイグル自治区で上海へ石油を運ぶパイプラインがウイグル独立派によって爆破
され、また「南水北調」プロジェクト工事現場を襲撃した暴民を鎮圧するために出動し
たある部隊の大半が長江流域出身者だったため、暴民側と合流し、軍区どうしで争う事
態となり、さらに重慶では大気と水の汚染に反発して外資・国営を問わず工場が襲撃さ
れ、中国内部はコントロール不能状態に陥った。

 中国政府は国内矛盾を外へそらすため、緊急事態を作り出し、反乱分子を利敵行為と
して捕らえる口実にしようとした。そして“脅せば脅すほど萎縮する”日本を標的に、
尖閣諸島へ偽装兵を送る。そのとき、日本、台湾、米国の対応は……。

 本書では日台防衛協力が現状より進んでいる想定で描かれているが、もしそうでなか
ったら、この「起こり得る未来」の結末も、違ったものになっているかもしれないと考
えさせられるのである。

『新日中戦争』
著者:喜安幸夫
出版社:学研・歴史群像新書
定価:900円+税
2007年7月3日 初版発行
http://www.bk1.jp/product/2800912


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