【新刊紹介】喜安幸夫『日中激戦2010−東シナ海艦隊決戦』

喜安幸夫氏といえば、今や『大江戸番太郎事件帳』、『献残屋』はたまた『菅原幻斎
怪異事件控』などの時代小説作家として名を馳せている。編集子も喜安小説の大ファン
で、ほとんど読み尽くしている。

 一方、台湾関係者なら『台湾の歴史』や『台湾島抗日秘史』の著者として、あるいは
「台湾週報」の前編集長としてご存じだろう。また、これまでに『日本中国開戦−激震
襲う台湾海峡』や『新日中戦争−尖閣諸島を奪回せよ!!』(いずれも学研の歴史群像新
書)など、日中が軍事衝突する近未来シミュレーション小説も発表している。

 今回、その第3弾として『日中激戦2010−東シナ海艦隊決戦』を出版した。上海万博
の開催を目前にした2010年4月、尖閣諸島近海で遭難しかかった自衛官が見かけた怪し
い光から物語ははじまる。中国が尖閣諸島へ侵攻を企て、迎える日本は自衛隊を真に戦
える組織とするためのクーデター計画や新兵器の量産に入る。

 先の『日本中国開戦』や『新日中戦争』でも、時代小説作家からは想像できない豊か
な軍事知識が頻出するが、今回も日本の最新兵器として「J−ファルコン」と米軍が称
しているという戦闘無人機(UAV)や無人潜航艇(UUV)などをはじめ、戦艦や飛
行機などの名称がいっぱい出てくる。自衛隊の観閲式などには時間があれば必ず出かけ
るという、自衛隊大好きの喜安氏の本領発揮といったところだ。

 また、このシリーズには「日台フォーラム」なる台湾研究フォーラムを模した民間団
体が出てきて、日台関係の重要性や中国の目をおおうばかりの実情などを説明する役割
どころだ。

 北京五輪の開催の蔭で強化される中国の独裁体制を思うとき、シミュレーション小説
とは思えない迫力で日中関係の危機が現実性を帯びて見えてくる。日本に中国との対決
を想定した「決意」を迫る物語でもある。               (編集部)

■著者 喜安幸夫
■書名 日中激戦2010−東シナ海艦隊決戦
■体裁 新書、256ページ
■版元 学研(歴史群像新書)
■定価 980円(税込)
■発売 平成20年8月1日
 http://shop.gakken.co.jp/shop/order/k_ok/bookdisp.asp?code=1340385300



投稿日

カテゴリー:

投稿者: