政治論議ご法度? [産経新聞:台湾有情 長谷川 周人]

政治論議ご法度?
【1月4日付 産経新聞 台湾有情】

 支局近くの雑貨店で最近、BGM代わりに流していたラジオ放送の周波数が変わったの
に気づいた。以前は買い物の途中で定時ニュースが耳に入り、ハッとする思いもしたのだ
が、いつの間にか音楽一辺倒の放送局に切り替わっているではないか。知り合いの台湾人
にこう話すと、中部・台中のサウナやマッサージ店では昨年12月以降、テレビニュースや
政治トークショーの放送がご法度になっているという。

 昨年11月に陳水扁総統夫人が起訴され、政治情勢が混迷する中、政権支持の賛否をめぐ
る巷(ちまた)の政治談議にも熱がこもる。しかし、「口論がエスカレートすると、暴力
ざたに発展しかねない」となれば、大衆の感情をあおるような政治的な番組を自主規制す
るのもやむを得ないというのである。

 政治の中心地の台北に至っては、市議会で「タクシー運転手のマナー向上を図る」とし
て、タクシーの中で政治論議やラジオの政治番組を禁じる条例を検討中だという。確かに
、運転手と乗客の論争が傷害事件に発展するケースも起きているという。だからといって
、致し方ないとして、済ませていいものだろうか。

 今年は、与野党が激突した昨年末の台北と高雄の市長選に続いて、立法委員選挙、その
直後には総統選挙が控えていて、政治の行方が気になる一年である。それ以上に、自由と
民主を掲げた台湾の成熟度も問われる年になるのかもしれない。    (長谷川周人)



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