岩崎茂・元統合幕僚長が台湾の行政院政務顧問に就任 野崎孝男氏に続いて2人目

統合幕僚長を務めた岩崎茂(いわさき・しげる)氏が、台湾の行政院(内閣に相当)の政務顧問に任命されて就任した。

今月のことだという。

読売新聞は「台湾当局の役職に自衛隊関係者が就くのは極めて異例」と報じ、産経新聞は台湾政府が任命した意図について「日本側と安全保障面での意思疎通と連携の強化を図りたい考え」と伝えている。

岩崎氏は非常勤で無給だという。

行政院の政務顧問に日本人が任命されるのは、昨年8月に任命された野崎孝男氏に続いて2人目となる。

このことで思い出したのは、2019年3月2日、産経新聞が1面トップ記事で、台湾の蔡英文総統へインタビューしたことを報じたことだ。

蔡総統は日本政府に対して安全保障問題やサイバー攻撃に関する政府間対話を求める意向を表明したことを伝えていた。

この蔡総統の意向について、当時の菅義偉・内閣官房長官も河野太郎・外務大臣も反応は鈍かった。

「1972年の日中共同声明にあるとおり、日本と台湾との間では、非政府間の実務関係を維持していくのが日本政府の立場であります。

そうした発言は承知しておりますが、いずれにしても政府としては、いま申し上げた立場に基づいて適切に対応してゆきたい」と述べるに留まっていた。

現在、交流協会台北事務所には防衛省の文官職員と退職した自衛官(元海将補)の2人が駐在している。

本会は2017年の「政策提言」で「他省庁が現職国家公務員の出向で対応している現状と足並みをそろえ、陸海空の現職自衛官各1名を派遣すべき」と提言し続けているが、政府は中国の反発をおそれて腰が引けていて、現役自衛官の派遣は実現しそうにない。

それにしても、すでに外務大臣も防衛大臣も明言しているように、日本は台湾との安全保障対話を制限したり禁止するなどの法的な障害は一切ない。

それにもかかわらず、日本が台湾と安全保障対話をはじめる兆候は微塵もないようだ。

頼清徳総統は岩崎茂・元統合幕僚長という大物を行政院政務顧問に任命することで、日本政府の消極的な対応に一石を投じたのかもしれない。

岩崎氏の任期は1年。

今後を注視していきたい。


台湾の行政院顧問に岩崎元統幕長 自衛隊幹部経験者から異例の就任 日台の安保協力狙い【産経新聞 :2025年3月21日】https://www.sankei.com/article/20250321-NCC6YESJX5KU7JR5TMKRY4SWYE/

【台北=西見由章】自衛隊制服組トップの統合幕僚長を務めた岩崎茂氏(72)が、台湾の行政院(内閣に相当)の政務顧問に就任したことがわかった。

台湾の当局者が21日、明らかにした。

自衛隊幹部の経験者が台湾当局の役職に就くのは異例。

中台統一を掲げる中国の習近平政権が台湾への軍事的圧力を強める中、台湾の頼清徳政権は安全保障面で日本との連携強化を図りたい考えだ。

岩崎氏は今月、政務顧問に就任した。

任期は1年間。

行政院の招待で同月訪台し、卓栄泰・行政院長(首相)とも面会した。

台湾の当局者は「岩崎氏は長期にわたって台日関係と地域情勢を注視してきた。

その知見と経験をお借りし政策提言していただく」と述べた。

日本人では台湾で飲食店を経営する野崎孝男氏が昨年8月、政務顧問に任命されている。

岩崎氏は航空自衛隊の戦闘機パイロット出身。

航空総隊司令官などを経て2010年12月から航空幕僚長、12年1月〜14年10月に統合幕僚長を務めた。

台湾の国防部(国防省)の統計によると昨年、台湾周辺では中国の軍用機が1日平均で延べ約14機活動し、このうち延べ約8機が台湾海峡の暗黙の「休戦ライン」である中間線やその延長線を越えた。

台湾の頼政権は、こうした中国による軍事的圧力に対抗するため、日本側と安全保障面での意思疎通と連携の強化を図りたい考えだ。

日本側はこれまで対台湾窓口機関、日本台湾交流協会の台北事務所に防衛省の「背広組」と呼ばれる文官職員や退職した自衛官を派遣しているが、中国の反発を懸念して現役自衛官は派遣していない。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。