安倍元総理の国葬に台湾から招くなら蔡英文総統がもっともふさわしい

 本会が7月24日に開いたシンポジウム「日台関係の50年─何を失い何を得たのか」に、パネリストとして登壇したジャーナリストで国家基本問題研究所理事長の櫻井よしこ氏は「蔡英文総統が安倍元首相の国葬に参列すれば、日本が台湾の味方であるとのメッセージを国際社会に発信できるし、台湾の地位を知ってもらういい機会になる」旨を発言した。パネリストとして同席したジャーナリストの福島香織氏や日米台関係研究所理事で本会常務理事の林建良氏なども賛意を表明した。

 産経新聞の矢板明夫・台北支局長は、本日の紙面で「安倍晋三元首相の国葬に誰が台湾の代表として参列するのか。これが今、台湾の外交関係者の間で最大の関心事」と報じ、櫻井氏の見解も紹介して「櫻井氏の言葉は多くの台湾人の意見を代弁しているようだ」と伝えている。日本と台湾の関係に意を払ってきた日本人の意見も同様だろう。下記にその記事をご紹介したい。

 本年3月22日、日華議員懇談会(古屋圭司会長)の総会が開かれた折、総会直後に安倍晋三元総理と台湾の蔡英文総統のリモート会談があった。

 安倍元総理が「台湾を早く訪れ親しく話したい」と述べると、蔡総統はにこやかに「訪問を心からお待ちしています。大歓迎です。私が案内します」と応ずるなど、終始息の合った応答ぶりだった。

 安倍元総理と蔡総統は、フェイスブックやツイッターでも互いにエールを交換し合う仲であり、日台の親密性を象徴する間柄だった。日本が安倍元総理の国葬に台湾から招くなら蔡英文総統がもっともふさわしい。日本が台湾を応援している姿勢を示すなら、やはり安倍元総理の国葬の場がもっとも分かりやすくふさわしい。

 習近平氏の総書記(国家主席)3期目を選任するかもしれない中国共産党の第20回全国代表大会を控えた時期に国葬を行うこととした政府の決断に、台湾のことは折込み済みと見るべきだろう。

—————————————————————————————–安倍氏国葬 蔡氏は参列するのか【産経新聞「中国点描」:2022年7月27日】https://www.sankei.com/article/20220726-34OMX3Y7GFMVZJWW7QJUPSRFPM/

 9月27日に予定されている安倍晋三元首相の国葬に誰が台湾の代表として参列するのか。これが今、台湾の外交関係者の間で最大の関心事だ。

 今月12日に行われた安倍氏の家族葬には、頼清徳副総統が1972年の日台断交以降、最高位の現役高官として訪日し、弔問に訪れた。しかし、日本政府の公式見解では、頼氏はあくまで「私人」として参列したに過ぎない。国葬は日本政府が「喪主」となるため、正式な外交関係のない台湾から要人を呼ぶかどうかはまだ定かではない。

 林芳正外相は22日の記者会見で国葬をめぐる台湾への対応について、「台湾、香港、マカオ、パレスチナ、安倍氏の逝去に際して弔意メッセージをいただいた国際機関にも通報を行う」と説明した。これを聞いた台湾の与党、民主進歩党関係者は「台湾が他の地域と一緒にされ、ショックだ」とつぶやいた。

 台湾との関係を重視してきた安倍氏の死を、多くの台湾人は深く悲しんでいる。台湾の最高層ビル「台北101」には4日連続で「台湾の永遠の友」「感謝 安倍首相」といった追悼メッセージがライトアップされた。日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会によれば、同協会が台北と高雄の両事務所に設置した記帳会場を訪れた弔問客は、1週間で約1万5千人を記録した。さらに複数の台湾の民間団体が安倍氏の追悼コンサート開催を準備し、安倍氏を追悼する像の制作も進められている。

 ジャーナリストの櫻井よしこ氏は24日に東京都内で開かれたシンポジウムで、安倍氏の国葬に台湾の蔡英文総統が参列することを願うとの意見を述べた。それにより、日本が台湾の味方であるとのメッセージを国際社会に発信できる─というのが理由だ。

 櫻井氏の言葉は多くの台湾人の意見を代弁しているようだ。ある台湾の外交関係者は「生涯をかけて日台親善を推進してくれた安倍氏の葬儀に参列するのは、すべての台湾人を代表できる蔡氏が一番ふさわしい」と話している。

 台湾側が最も警戒しているのは、日本政府が中国に配慮し、元高官や大企業の創業者ら「民間人の派遣」を台湾に求めることだ。その場合、日中関係に波風は立たないが、「日台関係は大きく後退した」との印象を内外に与えかねない。

 ある台湾の元外交官は妥協案として、立法院長(国会議長に相当)の游錫●(ゆう・しゃくこん)氏の名前を挙げた。(●=方方の下に土)

 台湾の総統や副総統を国葬に招待すれば、中国との間で大きな外交トラブルになることは目に見えている。それを避けたい日本政府の気持ちは分からなくもない。議会の代表である游氏なら当局者ではないので、大きな問題にならないはずだ─。これが元外交官の考えだ。

 游氏の前任者、蘇嘉全氏は2018年12月、立法院長として米国のブッシュ(父)元大統領の葬儀に参列してもいる。

 近年、安倍氏の努力などの成果として、日台関係は順調に発展し、「歴史上最も親密」とも言われた。安倍氏の死去後、その「台湾重視路線」が日本で継承されているのかどうか。今回の国葬への対応が、判断材料となりそうだ。国葬まであと約2カ月、台湾の参列者が誰になるのか、日台中の水面下の駆け引きはこれから本格化する。

(台北支局長)

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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