大田一博医師の呼び掛けでワクチンの御礼に台湾から40万枚のマスク

 6月4日、ワクチン不足の台湾に日本から124万回分のワクチンが無償提供されましたが、滋賀県の大津市内で産婦人科を開く台湾出身の大田一博(おおた・かずひろ)氏が、台湾の医師でつくる団体や地元の新聞社などに感謝を示そうと呼びかけたところ、台湾のマスクメーカーから医療用マスク40万枚の提供があったそうです。

 本会理事でもある大田医師からは「疫苗提供台灣,來自台灣的感謝,回饋40萬枚口罩,捐贈滋賀縣、大津市及京都市」とのご連絡をいただきました。

 今年2月、台北駐日経済文化代表処からマスク2万枚の寄贈先について相談を受け、本会理事で北海道道央支部長の菅原洋(すがわら・ひろい)に相談したところ、菅原支部長の仲介により札幌市内の基幹総合病院である市立札幌病院へ寄贈されたことを本誌でもお伝えしたように、本会理事が仲介した事例は2度目となります。

 今回のマスク40万枚は大田氏からの通報にもありますように、滋賀県庁に20万枚、大津市役所と京都市役所に各10万枚が寄贈されるそうで、朝日新聞がかなり詳しく報じていますので下記にご紹介します。

 大田医師は、李登輝元総統のご来日にも関わっており、朝日記事では2001年4月の総統退任後初のご来日となった件で、大田医師が「李氏への査証発給や母校の京大訪問を日本政府が認めるよう求める署名活動にも取り組んだ」ことを紹介しています。

 2004年12月の2回目のご来日では、李登輝元総統は曾文恵夫人やご長男夫人の張月雲さん、お孫さんの李坤儀さんらを伴い、名古屋市、金沢市、京都市を訪れるとともに、京都帝国大学の農学部時代にお世話になった恩師の柏祐賢(かしわ・すけかた)氏のご自宅を訪問され、恩師と約60年ぶりの再会となった場面をビデオ撮影したのが大田医師でした。

 NHKニュースは今回のマスク40万枚寄贈について、大田医師が「日本も多くの人が新型コロナで苦しい状況にいるなかで困っている台湾に手を差し伸べてくれたことを台湾の人は決して忘れません。日本と台湾のようにお互いに助け合う精神が広がってほしいです」と話していることを紹介しています。

・NHKニュース:提供ワクチンへの感謝 台湾からマスク40万枚[6月23日] https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20210623/2000047483.html

—————————————————————————————–ワクチン支援に感謝、台湾からマスク40万枚届く【朝日新聞:2021年6月22日】https://www.asahi.com/articles/ASP6P6SC1P6KPTJB00X.html

 【滋賀】新型コロナウイルスのワクチンの調達が遅れている台湾に、日本政府が今月上旬、124万回分を無償提供した。そのことに感謝する台湾から、お礼にマスク40万枚が日本に贈られた。受け入れの窓口となっている大津市の産婦人科医、大田一博さん(73)は「マスク不足で困っている施設で役立ててもらいたい」と話している。

 マスクは14日、大阪港に到着。現在、通関手続き中という。台湾の企業からの提供で、日本への船賃は台湾の医師の団体が、大阪港から大津までの陸送費は大田さんが負担する。滋賀県庁に20万枚、大津市役所と京都市役所に各10万枚を寄贈し、医療や福祉、子育て施設などに配ってもらう予定という。

 大田さんは台湾出身。台湾の医師国家試験に合格し、京都大医学部研究生などを経て、1992年に大津市下阪本6丁目で「耀生(きせい)産婦人科・内科・小児科医院」を開業。台湾の李登輝元総統が病気治療のため2001年に来日した際には、李氏への査証発給や母校の京大訪問を日本政府が認めるよう求める署名活動にも取り組んだ。

 コロナ禍が日本で広がった昨春、大阪の医療現場で手術用の防護服が不足し、ごみ袋を代用しているとのニュースを見た大田さん。台湾の新聞に「雨がっぱでいいので送って」と窮状を投稿し、1万2千枚が送られてきた。その後、計7回にわたってマスクやフェースシールドなどの支援を台湾に呼びかけ、届いたものを関係機関に寄贈してきた。

 台湾へのワクチン提供について、茂木敏充外相は東日本大震災のときに台湾から多額の義援金が寄せられたことを振り返り、「友情を踏まえた提供だ」と述べた。蔡英文(ツァイインウェン)総統も日本語で「うれしく思っています」などとツイッターで謝意を述べた。

 大田さんによると、ワクチンを搭載した日航機が今月4日、成田空港を出発する際、台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表(駐日大使に相当)が雨の中、感謝の思いを込めて深々と頭を下げた映像が現地で報道された。多くの人が「涙が出るほど感激した」という。

 日本がワクチンの支援を検討し始めた先月末、大田さんは台湾の医師でつくる団体「福和会」に「日本へ恩返しを」と呼びかけ、新聞社の投稿サイトにも「台湾から感謝を表そう」と投稿した。

 すると今月9日、福和会の代表者から「台湾の大手マスクメーカー『南六企業』から40万枚の医療用不織布マスクの提供があった。きょう高雄港を出航した」と連絡があった。

 大田さんは「日本も接種率は欧米に比べて低いのに、人溺己溺(他人が溺れるのは自分が溺れるのと同じ)という大きな愛の精神で助けてくれた。全世界の台湾人は深く感動しています」。マスクは近く大田さんの医院に運ばれる。具体的な配布先は県と両市に委ねるが、大田さんは「できるだけ必要としている所へ」と希望する。

 京都市コロナ対策本部で物資調整を担当している藤田英樹・商業振興課長は「以前もマスクが不足していたとき、台湾から寄付を受けた。お互い困っているとき、相手を思っての行動に大変感謝しています」。

 大津市危機・防災対策課の松浦康之(やすし)課長も「コロナ禍以降、大田先生を通じて台湾の方々にフェースシールド、医療用手袋、マスク、手術着用の雨がっぱと何度も支援してもらった。本当に感謝の言葉しかない」と話している。

 20万枚の寄贈を受ける県感染症対策課の藤田和也参事は「寄付はありがたいが、量が多いのでどのように受け取りに行くか検討しないといけない」としている。(菱山出)

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