国立台湾文学館は今年3月、作家の故西川満(にしかわ・みつる)氏が残した日記を編集して復刻出版、西川氏の生まれ故郷である福島県の県立博物館、会津若松市立会津図書館、西会津国際芸術村へ寄贈し、去る7月4日から6日にかけてオンラインで寄贈セレモニーが行われたそうだ。
福島民友新聞は「日記は、西川氏が台湾から帰国後の1947(昭和22)年3月から1年間の出来事などを日本語で書いたもので、西川氏の生活や考えを知る上で貴重な資料になっている。西川氏と生前交流があった台湾の研究者・張良澤(ちょう・りょうたく)氏らが翻訳した。台湾文学館が今春、西川氏の直筆を再現した復刻版と、中国語と日本語で記載された日中併記の計2冊を出版した」と報じている。
西川満氏は1908年2月に福島県会津若松市生まれた。祖父は初代会津若松市長の秋山清八。父の仕事の都合により3歳のとき台湾に渡り、台北一中を経て早稲田大学仏文科に進学。卒業後、台湾に戻り『台湾日日新報』に就職。『台湾風土記』(1939年)、『媽祖祭り』(1935年)、『華麗島頌歌』(1940年)等の詩集や文物記録により、台湾の風物や文化を広く国内外に伝えた。
敗戦後の1946年、日本に引き揚げ、その後も小説を発表し続け、台湾を題材とした美しい装丁の本を限定版で出版し続けた。1947年、台湾での2・28事件に際して日本に逃れてきた知識人たちを支援し、彼らの中から後に台湾民主化運動が起こったと言われる。
1999年2月に没後、台湾の真理大学に蔵書1万冊を遺贈。近年、台湾民主化とともに、西川満の日本及び台湾での美麗本文化振興への貢献と日本と台湾の文化面での相互理解に残した大きな足跡が再評価されているという。
下記に福島民友新聞の記事と台湾文化センターのプレスリリースをご紹介したい。
◆福島民友新聞:戦前台湾で活躍の文学者「西川満日記」、西会津に(2021年7月19日) https://www.minyu-net.com/news/news/FM20210719-638229.php
—————————————————————————————–国立台湾文学館が「西川満日記」を寄贈、台日友好を結ぶ【台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000042392.html?form=MY01SV&OCID=MY01SV
国立台湾文学館が出版した「西川満日記」を作家西川氏の生まれ故郷である日本福島県に寄贈した。寄贈セレモニーはオンライン方式で計4回開催され、台日の友情が一層深まることになった。
台湾がコロナ禍に苦戦していた際、日本は二度に渡ってアストラゼネカ製ワクチン約2百万回分を提供した。両国の友情を繋ぐべく、国立台湾文学館は入念な編集のもと「西川満日記」を復刻出版し、福島県の県立博物館、会津若松市立会津図書館及び西会津国際芸術村への寄贈を行った。
台湾と日本は長い間密接に交流してきた。日本統治時代に台湾で暮らした日本人作家はその代表的な例である。戦後、この歴史は恣意的に隠されてきたが、20年ほど前から当時の歴史を見直す動きが活発になった。
西川満は1908年福島県会津若松市生まれ、3歳で両親と共に台湾へ渡り、30年以上台湾で暮らした。文学創作の才能に恵まれた西川は台湾の民俗文化や伝説に惹かれ、台湾書籍の装丁や設計、蔵書票のブームを牽引するなど、台灣文學界に大いなる影響を与えた。戦後、日本に帰国した西川はほとんど歴史に語られることがなくなったが、日記に台湾への感情を記録し続けていた。
台湾文学館は西川満が残した日記を仔細に編集し、出版した。年初に行われた新書発表会には多くの西川満文学や装丁美学、蔵書票愛好者が駆けつけた。
国立台湾文学館の蘇碩斌館長コメント「台湾と日本はかつて台湾が植民地として統治される関係にあったがそれは『共に生活した』という想いの存在も意味していると考えている。しかしそうした歴史は記憶の中で形を変えてしまうことが多く、補正したり空白を補填したりする必要があった。国立台湾文学館はこのため、『西川満日記』を出版し、『愛する台湾を日本と繋いだ』この作家を補正と補填の重要な印しにしたい。」
福島県立博物館の鈴木晶館長コメント「国立台湾文学館の努力に感謝すると共に、今後より多くの交流が出来ることを期待します。」
川延安直副館長コメント「この日記は西川満氏の人となり、その暮らしの細々とした事柄を知るのに大いに役立つもので、台湾はずっと日本に協力してくれていることを知り深く感謝します。」
コロナウイルスの影響により、寄贈セレモニーはオンラインで台湾と同時中継で行われた。7月4日に福島県立博物館、7月5日14:30から西会津国際芸術村、7月6日9:00から西会津町、14:00会津若松市の計四回開催された。セレモニーにはそれぞれ台湾文学館館長蘇碩斌、副館長蕭淑貞、福島県立博物館長鈴木晶、副館長川延安直、西会津国際芸術村ディレクター矢部佳宏、西会津町長薄友喜、会津若松市長室井照平などが出席し、文学を通した日台の深い友情と交流を結んだ。
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