本誌では、和田有一朗(わだ・ゆういちろう)衆議院議員が所属する外務委員会において、台湾に関する質疑を次々と繰り出していることに注目し、インターネット中継のURLや国会の速記録から質疑応答を紹介しています。
3月30日には、台湾が希望しているにもかかわらず、中国の反対により国際刑事警察機構(ICPO)に加盟していないため、日台間で犯罪予防や犯罪捜査のために必要な連携協力ができない現状を指摘。また、台湾が5県産品の輸入を解禁したことは台湾が申請しているCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の加入にどのような効果を及ぼしているのか、さらに、改めて「日中共同声明」第六項問題に触れ、中国が台湾への武力侵攻を否定しないのは「すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」ことを日本と約束した「日中共同声明」第六項に反してしているのではないか、と質疑しています。
ここに当日のインターネット中継のURL並びに「速記録」から該当箇所をご紹介します。
◆和田有一朗・衆議院議員:外務委員会質疑(2022年3月30日10時37分〜59分 22分) https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=53869&media_type=
—————————————————————————————–〇城内委員長 次に、和田有一朗君。
○和田(有)委員 今日は大変すばらしい、今日もですけれども、すばらしい質問が続いておりまして、非常に議論がだんだん煮詰まってきているなというふうに実は私は感じながら、ほかの先生方の質問を聞いておりました。(中略)
その中で、それでも私たちは前を向いて進まなければならないわけでありまして、質問をさせていただくんですが、ちょっとウクライナから一旦離れまして、司法の話に関わることをしてみたいと思うんです。
先ほどの質問の中でも、随分、今日はもう、司法というんでしょうか、法務に関係する話が出てくるわけですね。その中で、今、犯罪が非常に国際化をしています。犯罪というのは、もう国境のない時代になっている。ネットの犯罪、そういった、サイバーテロ、そんなのもそうかも分かりませんし。
そういった中で、例えば、日本と台湾を見たときに、台湾で犯罪を犯した日本人がいる。そしたら、向こうで裁きを受けます。日本で犯罪を犯した台湾の人たちは日本で裁きを受ける。そして、捜査をしながら、そして裁判に持っていってということをやっていくんですが、これが非常に複雑な流れになるというふうに聞いているんですね。
例えば、アメリカと日本の間では、そういったことに対する条約があって、捜査に関してもスムーズにできる。ところが、正式な国交を持っていない日本と台湾においては、外交関係を持っていない国では、非常にスムーズにいかない。一般的に、そういう、国際的な捜査をしたり、司法的な手続をしていく中では、その捜査をやる司法関係のところから上がって法務省に行って、そして外務省に来て、外務省から日本の在外公館に行って、そこから向こうの外務省を経て、そこから捜査当局とか司法関係に話が行く。これを繰り返すわけですね。
特に、台湾の場合は正式な国交関係がありません。民間と民間という話にどうしてもなってしまいますので、よりこれがスムーズにはいかないということになると思うんですが、現在の司法の、これは共助というそうですけれども、司法であったり捜査というんでしょうか、その行き来というのはどんな状況になっているのか、お伺いします。
○保坂政府参考人 捜査共助についてお答えいたしますと、我が国と外交関係がない台湾との間で捜査共助を行うことは困難であると承知をいたしております。
○和田(有)委員 今、困難であると。実際、困難なんですね。ですから、今、実は、例えば麻薬の密輸なんかでも、現場で捕まえてみても、後ろに、密輸というのは、例えば、単に運び屋さんがいて、日本に来た、それを捕まえた、それだけを罰したって、結局、大本にあるギャングの親玉を捕まえるわけにもならないし、そのための捜査というのも、司法的なやり取りというのも困難であるということなんですね。
これではやはりいかがかと思うわけでありまして、そこら辺、やはり、例えば、漁業に関しても、経済的なものに関しても、いろいろな取決めを台湾当局とは我々はやっています。現実にこの国際社会で生き抜くためにやっているわけです。司法に関しても、そういった台湾との間で取決めをやはりすべきではないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
○林国務大臣 我が国の法令上、外交関係を有しない地域との間で捜査共助等を行うことは困難であるというふうに承知をしております。
その上で、台湾と捜査協力を行う必要がある場合には、ICPOルートを通じまして、台湾当局との間で情報や資料の交換、これが行われているものと承知をしております。
いずれにいたしましても、台湾との各種の実務的な協力については、引き続き、我が国の法令の範囲内で適切にしっかりと対応してまいりたいと考えております。
○和田(有)委員 ICPOルートといっても、たしか正式に台湾はICPOには入っていなかったように思うんですが、ちょっと確認できますか、その点。
○保坂政府参考人 恐縮でございますが、ICPOとなりますと警察庁の所管になりますので、ちょっと、私の方から確たることを申し上げることは困難でございます。
失礼いたしました。
○和田(有)委員 いずれにいたしましても、しっかりと、漁業やそういったものでは日本は台湾と取決めというものをやっているわけですから、そういうものを取り決めていくべきだと私は思います。そういう方向に向けてやはりかじを切っていくべきではないか。
これは別に、私は、今まで何回も質問をしている中で、私たちがこの極東アジアにおいて台湾と連帯をするんだというメッセージを、緊張を高めるのではなく、抑止をするためにメッセージを出すんだという意味でもありますけれども、それ以上に、実務的に現場の皆さんは大変お困りだと私は承知していますので、申し上げた次第でございます。
あわせてもう一つお聞きしたいんですけれども、裁判を終わって刑を受けるということになりますと、収監されます。これは、先ほど言いましたように、裁判が日本で行われて、台湾の人が日本で刑に服することになったら、まずは、一旦、日本の刑務所とかそういうところに入るわけですね、矯正される施設に。日本人が台湾でそういうことになると、やはり同じように台湾のそういう施設に収監されるわけです。
これは、アメリカとかそういうところで、そういう条約を持っているそれぞれの国では、お互いの国に送致をする。アメリカで収監された日本人も、日本に来て、日本で刑に服するということになるんですが、それが台湾と日本ではできないわけです。これは矯正の共助というんですかね、そういう言葉が専門的にあるようですけれども、それもやはりしっかり、私は、いろいろな人権的な概念、あるいは文化とか言葉とかそういうことを含めて、やはり非常に、刑に服する方、矯正される方にとってみてもハードルがあると思いますので、しっかりとそういうこともすべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○津島副大臣 御質問ありがとうございます。和田有一朗委員にお答え申し上げます。
国際受刑者移送の現状についてのお尋ねでございます。
国際受刑者移送は、国際的な協力の下に、外国において自由刑の確定裁判を受けて受刑している者を外国からその受刑者の本国に移送して、当該確定判決を執行するものでございます。国際受刑者移送を実施した場合には、その執行が終了するまで両国間の法的関係が継続するため、執行終了までの間はその手続の適正を確保する必要がございます。また、相手国との間で相互に同種の共助が行われることを確実にする必要性が高うございます。
このように、国際受刑者移送には適正かつ慎重な法的手続が求められることから、我が国では、その実施に当たっては相手国との間であらかじめ条約を締結しておくこと、これをすなわち条約前置主義と言っておりますが、それを取ってございます。現在、我が国では、欧州評議会の刑を言い渡された者の移送に関する条約に加盟してございまして、この加盟国六十七か国のほか、二国間条約を締結しているタイ、ブラジル、イラン及びベトナムの四か国、合わせて七十一か国との間で相互に受刑者移送が可能となってございます。 しかしながら、我が国と台湾との間には受刑者移送条約が締結されないため、国際受刑者移送は実施されてございません。
以上でございます。
○和田(有)委員 ですから、そういう条約は結べないにしても、取決め、それに代わるものを私はやはり結ぶべきではないか、本当に私たちにとって大切なパートナーであり友人であると思うならば、そういったことをすべきではないかということを申し上げておきたいわけです。漁業や経済分野でいろいろな形で、法的にはできないにしても、取決めという形ではやっているわけですから、私は是非とも、これは政治的な判断になってくるものだと思いますから、そういうことをひとつ前向きにしていただきたいということを申し添えておきます。これ以上はこのことは触れませんけれども、大臣、お疲れのようで、随分お疲れのようですけれども、しっかりとお願いいたします。
次に、これも、戻ってこられました青山先生が今日非常に丁寧にTPPの台湾の加盟に関してお聞きになったので、私、もういいかなと思ったんですが、やはり一応確認のためにお聞きしたいと思って。
前回、私、TPP11の関係、CPTPPに台湾が加入することについてどうだ、是非とも後押しをという質問をさせていただきましたけれども、そこでちょっと私も聞き逃したというか思ったことがありまして、もちろん、台湾側の努力というものはもっと必要だし、課題もあるのは分かるんですけれども、五つの県における農産品を台湾側はいろいろなハードルを越えて緩和、解禁をしたわけです。緩和という表現がいいのかどうか分かりません。
それで、これは、台湾が今申請しているTPPに向けた、加入に向けた一つの判断材料としては、私は大きな、先ほど大臣も大きな一歩という表現を使ったと思うんですが、だと思うんです。それがやはりかなりのハードルを越えて前に向かったわけでして、向こうも、そこら辺について、TPP加入に向けたこの事象というものがどういった効果を及ぼすのかということをもう一度確認をさせていただきたいと思います。
○林国務大臣 今委員がおっしゃっていただきましたように、台湾は我が国にとって基本的価値を共有する極めて重要なパートナーでありまして、また、かねてからTPP11への加入申請に向けた様々な取組を公にしてきております台湾がTPP11への加入申請を提出したこと、これは我が国は一貫して歓迎をしておるところでございます。
また、日本産食品の輸入規制撤廃は政府の最重要課題の一つでありまして、先般の台湾による規制の見直しは輸入規制の撤廃に向けた大きな一歩であると考えておりまして、残された輸入規制の早期撤廃に向けて、引き続き台湾側に粘り強く働きかけていきたいと考えております。
我々といたしましては、こうした台湾の取組、これを認識しつつ、台湾がTPP11の高いレベルを完全に満たす用意ができているかどうかについてまずはしっかりと見極めるとともに、戦略的な観点や国民の理解も踏まえながら対応してまいりたいと思っております。
○和田(有)委員 分かりました。
日本側の国民の理解は整いつつあると私は思っていますので、しっかりお願いします。 次に、これも前回お聞きした中でもう一点確認したいと思ったことがあって、日中共同声明の件なんです。
日中共同声明の中に第六項というのがあって、お互いに威嚇をしない、武力解決はしないという項目があるんですが、この中で、既に、中国当局という表現をするんですかね、台湾に関しては武力を用いても解決をするんだという表現がなされております。これは、既にこの日中共同声明の中の第六項に反している表現ではないか、反してしまっているのではないかと思うんですが、まず、台湾有事そのものがこの日中共同声明の第六項の範囲に私はあると思うんですね。そういう中で、そうとすれば、この第六項に、中国当局が台湾を武力解決する、自分たちの思いを遂げるために武力解決するという表現は反しているように思うんですが、いかがお考えになりますか。
○林国務大臣 日中共同声明第六項でございますが、「日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。」、こういうふうに規定しております。
一方、台湾海峡の平和と安定、これは、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要でございます。台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが従来からの我々の一貫した立場でございます。こうした立場については、中国側に直接伝えるとともに、各国の共通の立場として明確に発信をしてきております。引き続き、両岸関係の推移を注視しつつ、両岸の関係者を含む国際社会にしっかりと主張してまいりたいと考えております。
○和田(有)委員 これは、前にも質問して答弁があったように、南西諸島域というのは航空管制においてもオーバーラップをしている部分があったりして、我が国と中国という範囲を、もうかぶっているというふうに言ってもいいんですね。ですから、我が国と中国の間での話にこれはやはり私はなると思うんですね。そういう意味でお聞きしました。
これは、これ以上やってもやはり神学論争みたいになってしまうところがありますのでこれで終わりますけれども、しっかりと両岸関係が平和に進むように日本は努めていただきたい、台湾の現状維持というものを武力によって変えることはあってはならない、そのために様々な手を打つべきだということを改めてもう一度添えておきます。(後略)
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