国防省も今年1月19日に発表した『国家防衛戦略』において、中国が「インド太平洋地域での覇権を狙い、将来的に米国に変わって世界で優位に立とうとしている」との認識を示し、中国を「主要脅威」と位置づけている。また、インド太平洋地域を重視し、同盟とパートナーシップを拡大するとも表明している。
大統領と国防省の足並はそろっている。この米国の姿勢は、ペンス副大統領が10月4日の演説で、経済分野でも安全保障分野でも中国と「全面対決」することを打ち出したことに明確に現れた。米国の中国政策に変更はなく、むしろさらに強化していくことを表明したと言ってよい。
米国が中国製品に対する制裁関税を軸とする強硬策に打って出ていることの背景には、米誌ブルームバーグ・ビジネスウィークが10月4日、人民解放軍が米粒ほどの大きさのチップをサーバーの基板に埋め込み、米国の企業や政府機関の情報を窃取しようとしていたと報じたことに現れているが、ペンス副大統領が「中国は米国の内政に干渉しようと、これまでにないほどの力を行使」し、トランプ大統領を1期で退任させようと中国が謀略を駆使しているとの認識がある。
ペンス副大統領が「これまでの米政権は間違っていた」とも述べているように、ニクソン政権からオバマ政権までの約50年続けてきた対中融和姿勢を転換し、米国は台湾との関係強化をはかりつつ、インド・太平洋地域でのプレゼンスを強化するとともに、日本やインド、オーストラリアなどとの同盟を重視した政策を実行しつつある。
果たして日本は、米国の期待に応えることができるのか。インド洋、南シナ海、バシー海峡をオイルルートとする南西シーレーンを擁する日本にとって、覇権的な海洋進出を展開する中国は脅威そのものである。また、台湾にとっても脅威であり、呉釗燮・外交部長が「台日間の情報交換面での協力深化に期待」するのは当然だろう。
日本版・台湾関係法は、米国の台湾関係法のように、台湾に武器を供与するような内容とはならない。日本は法的にそのようなことはできない。情報の共有が目的となるはずだ。だから呉外交部長は「自民党の有志議員が日本版台湾関係法(仮称)の策定を目指していることには、感謝を示した」のだ。
10月下旬、本会の渡辺利夫会長を団長とする「2018年役員・支部長訪台団」では呉外交部長とも懇談する予定で、本会の今年の政策提言「台湾を日米主催の海洋安全保障訓練に参加させよ」への評価を確認するとともに、情報交換面での日台協力について話し合うことができればと期待している。
————————————————————————————-台湾と日本は安全確保のための対話、より活発に=呉外相【中央通信社:2018年10月7日】
(台北 7日 中央社)呉ショウ燮外交部長(外相)は、台湾と日本が直面している地域的な軍事的脅威は非常に近いものだとした上で、台日間は安全確保のための対話をより活発に行っていくべきだとの考えを示した。4日に行われた中央社の単独インタビューで述べた。(ショウ=金へんにりっとう)
呉部長は、中国の軍用機や軍艦が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を抜けて南下した際には台湾に脅威が及ぶと指摘。一方、中国の軍用機や軍艦が台湾南方のバシー海峡を北上すれば、日本にとって脅威となると述べ、台日間の情報交換面での協力深化に期待を示した。自民党の有志議員が日本版台湾関係法(仮称)の策定を目指していることには、感謝を示した。
台湾が2011年から福島など5県産食品に対して続けている禁輸措置の解禁については、国内で食品に対する安心が確保できるかどうかが鍵となると説明。輸入解禁の是非は、科学的な根拠に基づいた国際的な基準にのっとって考えられるべきだとの見解を示しつつ、そのためには意思疎通や関連機関の努力が必要になると述べた。
▽外交部、災害時のコールセンター設置を検討
呉部長は、外交部(外務省)は現在、海外での災害時に現地に滞在している台湾人を支援するためのコールセンターの設置を検討していると明かした。救助が必要な台湾人の問い合わせに応じ、要請の内容によって対処すべき機関を判断するのが狙いだという。
先月初旬、台風21号の影響で関西国際空港に多くの人が取り残された際、助けを求めた台湾人旅行客に対する台北駐大阪経済文化弁事処(総領事館に相当)の対応が適切でなかったとする批判が上がった。同14日には、処長だった蘇啓誠氏が自殺。同処への批判を苦にしての自殺とみられている。
呉部長は、海外での緊急時の救助に関する対応について検討が必要だとする声が外交部内で多数上がっていると説明。救助への対応が出先機関の職員の負担となり、外交業務に支障をきたすことは防ぐ必要があるとの考えを示した。
同部内では、現地の台湾人を支援すると同時に、出先機関の職員の権利を保障するための改革案の話し合いを重ねているという。改革案の内容は今月末までに固まるとの見通しを示した。
(顧セン/編集:楊千慧)