台湾関係の新刊が続々出版!

先月初旬、林建良氏が『日本よ、こんな中国とつきあえるか?』を刊行して以来、台湾
関係の新刊が次々と出版されています。ここでは李琢玉著『李琢玉川柳句集 酔牛』(日
本語)と宗像隆幸著『存亡の危機に瀕した台湾』の2著をご紹介します。
 その他にも、1965年に出版されたジョージ・H・カー(台北高等学校卒)の名著『裏切
られた台湾』が台北高等学校同窓の蕭成美氏(邦訳)と川平朝清氏(監修)の尽力により
刊行されています。
 また、先に五十嵐真子・三尾裕子/編著『戦後台湾における〈日本〉−植民地経験の連続
・変貌・利用』も出版され、さらに、最近になって、本会常務理事でもある黄文雄氏が『日
本人よ、自分の国に誇りを持ちなさい』と『嫌中論−世界中から嫌われる中国』を続けて
刊行しています。
 ホームページにそれぞれ紹介しています(未掲載もあり)ので、そちらもご参照くださ
い。                                 (編集部)

■今川乱魚編、李琢玉著『李琢玉川柳句集 酔牛』(新葉館出版、8月10日刊、1,260円)
■宗像隆幸著『存亡の危機に瀕した台湾』(自由社、8月10日刊、1,470円)
■ジョージ・H・カー著『裏切られた台湾』(同時代社、6月26日刊、4,200円)
■五十嵐真子・三尾裕子/編著『戦後台湾における〈日本〉−植民地経験の連続・変貌・
 利用』(風響社、3月30日、3,150円)
■黄文雄著『日本人よ、自分の国に誇りを持ちなさい−世界モデルとしての日本論』(飛
 鳥新社、7月13日、1,260円)
■黄文雄著『嫌中論−世界中から嫌われる中国』(徳間書店、7月31日、1,575円)


今川乱魚編、李琢玉著『李琢玉川柳句集 酔牛』(日本語)
新葉館出版 1,260円(税込)、8月10日発売

 台湾には今も美しい大和言葉で和歌を詠み、俳句や川柳をたしなむ「日本語族」がたく
さんいる。ご存じ「老台北」こと蔡焜燦さん(台北市李登輝之友会会長)の盟友で、癌に
冒され昨年8月26日に逝去された「懐日家」を自称していた李琢玉さん(台湾川柳会会長)
の川柳をまとめた『李琢玉川柳句集 酔牛』が出版された。
 台湾人として初めての川柳句集の出版だ。タイトルの「酔牛」は李琢玉の柳号。編者の
今川乱魚氏(全日本川柳協会会長)が「台湾初の川柳句集出版を祝って」と題して、李琢
玉との10年にわたる交友とともに、その川柳を紹介している。
 「あの男は、口が裂けても『私は中国人だ』とは言わない」と印象的な書き出しで始ま
る蔡焜燦さんの「序にかえて」がいい。胸が熱くなる。跋文を頼柏絃氏(台湾川柳会会
長)、李琢玉さんの弟子だった黄智慧さん(台湾中央研究院民族学研究所助手)、李琢玉
さんと親交深いカメラマンの村田倫也氏などが執筆しているが、それぞれに味わい深い。
 李琢玉さんの図抜けた日本語力に驚くとともに、北京語を使わないと決め、日本語に磨
きをかけざるを得なかった台湾の戦後史を思わずにはいられない。(敬)


宗像隆幸著『存亡の危機に瀕した台湾−中国は台湾を併合すれば日本を属国にする』
自由社 1,470円(税込) 8月10日発売

 副題に「中国は台湾を併合すれば日本を属国にする」とある。
 過去に宗像さんが心血を注いで執筆してきた労作を集大成したものだが、さすがに歳月
をかけての綿密な検証、論考を行ってこられた論文ばかりだ。その一行一行に、その時の
苦労や、構想や、政治解釈が塗り込められていて、簡潔に読み流すことは叶わない。台湾
問題を考えるときに必携の書になるだろう。
 それにしても宗像氏は台湾問題、中米関係、東アジアの安全保障に関して希有の論客で
あり、発表の毎に各論文は日本や台湾でばかりか、世界的な注目を集める。
 本書に収録された論文のなかでも「なぜ台湾は国際社会の正面ドアをノックしないのか」
は最初、台湾本省人に人気のある新聞、『台湾日報』に分載され、その後、日本語訳をあ
わせて冊子が刊行された。これは台湾政界に大きな影響をあたえた記念碑的論文である。
 つぎに「台湾の命運をかけた総統選挙」という文章は最初、『正論』に掲載後、中国語
、英語訳がでた。
 もっとも反響をよんだのは「台湾憲法を制定すれば主権国家と民主主義を確立できる」
という論文で、最初は『自由』(2004年10月号)に発表された。すぐに中国語訳が全文、
『自由時報』(同年9月21日付)に三面ぶちぬきで掲載され、ついで英訳され、冊子となっ
て李登輝前総統ら主導の「台湾憲法制定運動」のテキストとして用いられている。つまり
、台湾が独立したときの憲法はいかにあるべきかを論じた綱領的論文なのだ。
 いまでも各地の集会やセミナーで配られており現代的古典と言って良いだろう。
 また「存亡の危機に瀕した台湾」(本書と同じタイトル)という論文は2005年7月に『自
由』に掲載され、すぐに漢語、英語に翻訳。李登輝訪米のおり、各地の講演会で参加者に
冊子が配られた。
 本書の肯綮のひとつは以下の呼びかけであろう、と思われる。「(つぎの総統選挙は)
台湾の命運と東アジアの将来がかかっている」のだが、もし「統一派が勝って台湾の中国
化路線が推進されたら東南アジア諸国は中国の圧力に抗しきれなくなり、中国の天下統一
が実現する。」
 そうなれば、「米国と中国は冷戦状態に陥」り、「日本の生命線である中東へのシーレ
ーンも中国に抑えられることになる。過去に中国が天下を統一したときも、日本は常にそ
の外にあって独立を守ったが、それさえ危うくなる」。それゆえに「日本と米国は、台湾
の総統選挙が自国の基本的国益に直結していることを認識して欲しい」。
 巻頭には宗像さんと李登輝前総統との特別対談が掲載されているが、えっ、と思われる
ような秘話が次々と飛び出してきて、評者(宮崎)もビックリすること屡々。とくに興味
津々の中味は参謀総長を8年にわたって独占し、李登輝失脚を何回か狙った赫(カク)柏村
将軍のはなしなど。
 その大事な詳細をこの書評で紹介してしまうより、本書を手にしてもらうほうが良いだ
ろう。
                【宮崎正弘の国際ニュース早読み・第1532号より抜粋】



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