人口約33万人ほどの東部最大の町「花蓮」。先日、マグニチュード6.4、震度7の地震が発生した町として、日本国内でもニュースで取り上げられましたが、山や海などの大自然に囲まれた美しい町として知られています。台北から電車で約2〜3時間ほどで行けるとあって、観光客も多く訪れます。11歳まで台湾に住んでいたこともある、エッセイストの一青妙(ひととたえ)さんに、今回「花蓮」の見所を4回に分けて、紹介していただきます。1回目は一青妙さんが太鼓判を押す、花蓮のB級グルメについてです。
◇ ◇ ◇ ◆美しい名前の町「花蓮」
「花」に「蓮」を組み合わせた美しい名前の場所が台湾にある。日本語で読むと「かれん」という、これまた美しい響きになる。もともとは「回瀾」という地名だったが、のちに閩南語の同じ発音で「花蓮」という名前があてられた。花蓮は台湾の東側に位置して太平洋に面しており、人口は約33万人。行政区の面積としては、台湾でいちばん大きい。
私は台湾人の父と日本人の母との間に生まれ、11歳まで台北で暮らしてきた。父の一族が経営していた関連会社が花蓮にもあったおかげで、父はよく花蓮に出張していた。花蓮名産の大理石で作った犬や猫などの可愛らしい置物を出張土産として買ってきてくれたのが、私にとっての花蓮の思い出となっている。
近年、台湾が日本人の年末年始の海外の人気旅行先や修学旅行先として挙げられるようになってきたが、2月6日深夜に、マグニチュード6.4という大きな地震が発生した花蓮を訪れた人の数は、それほど多くはないはずだ。余震の数も徐々に少なくなり、人々は日常の生活を取り戻しつつあるが、一向に回復の兆しを見せないものがある。それは観光客だ。
これから日本では春休み、GWと連休が続き、海外旅行シーズンになる。今年はぜひ台湾の花蓮を訪れ、花蓮を楽しんでみてはどうだろうか。花蓮を知ることが、花蓮の人たちの最大の励ましになり、新しい台湾の発見に繋がるに違いない。ここTRiP EDiTORで数回に分け、花蓮の見どころを紹介して行きたいと思う。まず手始めは、花蓮市内のグルメからスタートしよう。 ◆台湾東部「花蓮」はB級グルメの宝庫
「台湾はどこにいって何を食べても美味しい」とよく言われるが、花蓮には台湾の他の場所ではなかなか食べられない美味が目白押しだ。特にB級グルメの宝庫である。 ・花蓮で絶対食べて欲しいネギおやき「炸彈葱油餅」
花蓮市内のB級グルメで私がナンバーワンに押したいのが「炸彈葱油餅」。日本でいえば「爆弾揚げネギおやき」である。
葱油餅は通常、朝食やちょっと小腹が空いたときにおやつのように食べる人が多い。小麦粉に刻み葱を混ぜて焼き上げているが、花蓮の葱油餅の特徴は焼かずに油の中に放り込み、フライ状態にしていることだ。生卵も油に入れて揚げ、半熟状態になったものを葱油餅にくるんで食べるのが花蓮流である。
揚げることによって葱の香ばしい香りが引き立ち、アツアツのカリッとした葱油餅の間から、黄金色の黄味がとろりと溢れ出てくる。最後にさっと塗ってくれるピリ辛のソースもたまらない。クレープと卵とソースとの絶妙なハーモニーがあとを引く。卵は高カロリーだと知っていても、せっかく花蓮にきたからには、一回に2個は食べてしまう大ファンだ。
花蓮市の復興街に人気有名店が2店舗仲良く並んでいる。どちらもいつも大行列だが、それぞれ美味しいので、待たされても損はない。
老牌炸蛋葱油餅 住所:花蓮市復興街110巷2號 営業時間:13:00〜19:00 定休日 なし
炸蛋葱油餅 住所:花蓮市復興街102號 営業時間:13:00〜売り切れ迄 定休日 なし
◆伝統的な花蓮の味「ワンタン」
伝統的な花蓮の味といえば「扁食」を挙げたい。中国の福建省で使われている言葉で「ワンタン」のことだ。花蓮市に行ったなら、まず扁食を食べなさいと台湾の友人から言われていたので立ち寄った。
有名店は「液香扁食」と「戴記扁食」で、この2店も近接している。もともとワンタンはそこまで好きではない方だったが、ここのワンタンは素直に美味しいと思えた。サイズが大きかったり、特殊な餡が入っていたりするわけではない。つるっとした皮と、ほどよい味付けの豚肉のバランスが絶妙で、決め手はスープ。クリアなスープにセロリと揚げた葱が少し浮いているだけなので、味が薄いと思って飲んでみたらびっくり。何時間も煮込み、とびきり手間をかけたコンソメスープのように、まろやかでこくのある味が口に広がった。
どちらの味も甲乙つけがたいが、実はどちらの店も初代店長は同じ人物で、後に暖簾分けをしたのだという。戴記扁食は、故・蒋経国前総統が花蓮を訪れたときに必ず立ち寄る店として知られている。 戴記扁食 住所:花蓮市中華路120号 Tel:03-835-0667 営業時間:8:00〜21:45
液香扁食 住所:花蓮市信義路42號 Tel: (03)8326761 営業時間:10時〜21:50頃まで (売切れまで)
◆小籠包と蒸し餃子がセットで楽しめる人気店
さらに「セット」の有名店がある。小籠包と蒸し餃子で人気の「公正包子」と「周家蒸餃」だ。
隣同士の二軒の店頭には、幾重にも重ねられた蒸篭と、忙しそうに皮に肉餡を包むスタッフたち。メニューは2店舗ともほとんど同じ。「小籠包」と書かれているが、鼎泰豐で有名な薄皮でスープたっぷりの小籠包ではなく、こぶりのプチ肉まんのことだ。メニューには、水餃子や蒸し餃子もある。味としては、包子は公正包子で、蒸し餃子は周家蒸餃に軍配をあげたい。
公正包子 住所:花蓮市中山路199-2號 営業時間:6〜19時
周家蒸餃 住所:花蓮市公正街4-20号 営業時間:24時間営業 ◆予約の取れない、創作中華料理店
花蓮市内隣接の吉安郷にある「銘師父」は、宜蘭出身の有名シェフが花蓮の食材に惚れ込んで開いたレストラン。
野菜は全てレストランの敷地内で有機栽培されたもの。味はもちろんだが、見た目にも美しい創作中華料理で、予約なしではなかなか入れない人気店だ。 銘師父 住所:花蓮縣吉安郷太昌村明義6街38巷22号 営業時間:ランチ/11:30〜14:00 ディナー/17:30〜21:00 ◆「しじみ狩り」ができる体験型レストラン
市内からもう少し離れた寿豊郷には「立川漁場」という体験型のレストランがある。体験できるのは「しじみ狩り」だ。台湾のしじみは、日本の黒いしじみと違い、黄緑がかった色をしていてやや大きい。実もおおぶりで肉厚だから食べ応え十分。立川漁場はしじみの養殖場で採れたてのしじみ料理を存分に食べられる。新鮮なしじみをバジルでさっと炒めた「炒蜊仔」はいくらでもお腹に入っていく。シジミを実際に触れる池もあるシジミテーマパークだ。
立川漁場 住所:花蓮県寿豊郷共和村漁池路45号 営業時間: 8:00〜19:00 鳳林、瑞穂と花蓮市街から南下した町にも、昔ながらの素朴なかき氷やフレッシュなレモンジュースで有名な「明新冰果店」や新鮮な野草をたっぷりと使った鍋料理が楽しめる「瑪卡多庭園咖啡」など、ポツンポツンとおいしいものが散らばっている。
花蓮には台湾のアミ族をはじめ多くの先住民が暮らしており、市内の「樹屋風味」や光復という街にある「紅瓦屋」というレストランではアミ族料理が楽しめる。トビウオやイノシシ、粟などを用いた先住民の食文化は独特な上に味も美味しく、台湾の多様性を感じられる食体験になるだろう。