台湾には日本統治時代に新高山と呼ばれた標高3952mの玉山をはじめ3000m級の山々が多く、世
界自然遺産にふさわしい大自然がある。
しかし、台湾は中国が反対して国連に加盟できないためユネスコにも加盟できず、ユネスコが決
定している世界遺産には登録できない。ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、教育・科学・文化
の協力と交流を通じて国際平和と人類の福祉の促進を目的とする国際連合の専門機関であり、政治
的な介入は避けなくてはならないはずだ。中国の妨害はユネスコの理念に反している。
1945年に日本が戦争に負けて台湾を去った後、毛沢東の共産党との戦争に敗れた蒋介石の国民党
が台湾に逃げてきて台湾を占領して独裁政治を行ない、大陸で樹立した中華民国という名前を持っ
てきた。1971年に国連が中華民国(台湾)よりあとに樹立された中華人民共和国(中国)の加盟を
認めたため、蒋介石が怒って国連を脱退し、ここから台湾が世界遺産にも登録できず、世界的な会
議にも中国の妨害によって参加できないという悲劇が続いている。大陸の中国人と戦後台湾にやっ
てきた中国人の抗争に、元々の台湾人は振り回されているのだ。
昨年11月に開かれたICPO(国際刑事警察機構)の総会への出席も、中国の反対で拒否された。
感染症対策など世界が協力して取り組んでいかなければならない医療問題などの会合にも、台湾
は参加できないことが多い。中国の妨害によって拒否されるのだ。中国が妨害する理由は明らか
で、台湾を中国の一部としたいからだ。中国と台湾が国際的な会合に出席すると、二つの国と世界
が認識してしまうので、それを避けたいのだ。しかし世界で取り組むべき問題の会合に、政治的な
妨害が堂々と続いている状況は異常だ。国連はこの問題に正面から取り組まなければならない。
日本人も日本のどこが世界遺産になったとか何が世界遺産に登録されたと喜んでばかりいない
で、すぐ隣の親日国の台湾の厳しい現状を知るべきだ。
今年3月『ユネスコ番外地 台湾世界遺産級案内』(中央公論新社 平野久美子編著)という本
が出版された。台湾には前述の事情で登録はできないが世界遺産にふさわしい自然や文化遺産があ
る。それらを紹介した本だ。
たとえば大木が茂る阿里山周辺や太魯閣(タロコ)の大峡谷などは自然遺産にふさわしい。
日本統治時代に日本人技師の八田與一が中心になって造り、台湾の発展に大きく貢献した烏山頭
(うさんとう)ダムは文化遺産にふさわしく、日本ユネスコ協会連盟も登録に協力するべきだろう。