日台双方に「外国籍の医師は医療行為を行えない」という規定があり、東日本大震災の折に台湾
の医師が支援しようとしたが法律に阻まれて医療行為ができなかったという。また、今回の「八仙
水上楽園」粉塵爆発事故でも、日本側が医師らを派遣させる用意があると表明したものの、台湾に
も同様の法律があって日本側の好意を受け入れることができなかったという。
報道によれば、東日本大震災後、日台間に「緊急災害が発生した際には、互いに短期間の支援を
行えるようにしたいとする共通の認識が生まれた」そうで、その後、日台間で協議が続き、本年3
月、台湾路竹会とアムダ(AMDA・アジア医師連絡協議会)が協力覚書(MOU)を締結してい
る。
7月30日にも正式に覚書を締結することとなっていたが、6月27日に台湾で起こった粉塵爆発事故
を受け、日本医師会が6月30日に緊急理事会を開き、台湾で発生したこの火災事故の負傷者への治
療に関する協力を可決、AMDAが専門の医師を台湾の治療支援に派遣する経費を補助することと
なった。
また、人工皮膚の移植・治療は日本独自の技術であり、基本的には日本の専門医師だけが行える
技術であることから、急遽、前倒しして覚書を締結することになったと伝えられる。
今後、中華民国医師公会全国連合会は日本医師会に文書を送り、双方で文書を交換して覚書の締
結を行い、政府の認可を待って実施する。順調に進めば、日本からの医療スタッフは9日もしくは
10日にも台湾に到着する予定で、粉塵爆発火災事故による負傷者の治療に当たるという。
やはり重要なのは緊急時の対応だ。このように一つ一つ積み上げてゆく方式もそれなりに有用な
のだろうが、緊急時には間に合わないことも想定できる。
そこで、日本は台湾から要請があればすぐ情報や支援を提供できるような法整備を行う必要があ
る。本会が提案している日本版・台湾関係法(日台関係基本法)は、平時もさることながら緊急時
に即応できることを盛り込んでいる。
台湾と日本の医師会、緊急時の人的支援に関する覚書に調印へ
【中央通信社:2015年7月5日】
(台北 5日 中央社)中華民国医師公会全国連合会と日本医師会はこのたび、緊急、災害時にお
ける医療面での人的支援に関する覚書に調印する運びとなった。これを受け、日本からの医療チー
ムが早ければ今月9日にも訪台し、先月27日に北部・新北市で起きた娯楽施設火災による負傷者の
支援に当たる。
日台双方は今後、緊急、災害時に特例として、外国人医療関係者が現地の医師らの指示を受けた
上で簡単な医療行為が可能となる。本来は今月30日に調印の予定だったが、急遽繰り上げられ
た。
日台の医療面での人的支援をめぐっては、2011年の東日本大震災発生時に、台湾側が医療チーム
の派遣を申し出たが、外国人医療従事者の医療行為を認めない日本の法律により実現しなかった。
一方、今回の娯楽施設火災でも当初、日本側が医師らを渡台させる用意があると表明したが、台湾
にも同様の法律があり実施が見送られていた。
医師公会側の関係者によると、医療行為に関する責任は指示にあたる現地の医師が負うとするこ
とが日台双方で確認されているという。また、外国人医療従事者の賠償責任保険への加入も支援す
る。
衛生福利部(衛生省)が4日午前に発表した統計によると、娯楽施設火災による負傷者のうち、
430人が現在も入院中。そのうち274人が集中治療室で治療を受けているという。
(陳偉テイ/編集:齊藤啓介)