台湾で見つけた桜−桜寄贈の台湾を親子で訪ねた物語

本会が育桜会(松前孝廣会長)とともに台湾に桜の苗木を送り始めたのは、2006年(平
成18年)2月からで、前年の10月、台北で李登輝元総統にお立会いいただいて「桜寄贈合
意書」の調印式を行っています。それ以来、毎年、静岡県河津町を原産地とする河津桜
(かわづざくら)の苗木1,000本を、私どもの台湾側カウンターである李登輝之友会全国
総会に寄贈しています。

 寄贈のたびにツアーを組んで訪台しているが、台湾側では植樹地に必ず記念碑を造り、
本会が行っている桜募金の篤志者のお名前を刻んでいます。

 本会兵庫県支部(高田巌支部長)の尾辻信一事務局長も篤志者のお一人で、最初は自分
の名前で、次にはお亡くなりになったご母堂の名前でご寄付いただきました。自分の名前
は台南サイエンスパーク内の台湾新幹線が間近に見えるところに建立の記念碑に、ご母堂
の名前は高雄・澄清湖畔に建立された記念碑に刻まれました。

 この夏、お子さんを連れて、友人とともにその記念碑を見に行かれたそうです。そのこ
とが産経新聞に取り上げられています。いささか日が経ってしまいましたが、下記にご紹
介します。

 親から子への申し渡しには、親の威厳と子を慈しむ厳かな迫力が伝わってきます。桜を
通じた日台交流にはこういう場面もあることも知っていただければ幸いです。

 来年もまた桜の苗木を寄贈する予定です。後日、来年の「桜ツアー」のご案内をいたし
ますので、そのときはご支援ご協力のほどよろしくお願いします。     (編集部)


台湾で見つけた桜 高校よもやま話(15)
【11月6日 産経新聞(兵庫版)「教育現場から」】

 元同僚とその長男(小学5年生)と拙、3人で台湾に行った。観桜の園となることを夢見
て、元同僚と彼の母親の名でそれぞれ「かわづ桜」を台湾に贈ったそうである。園には彼
と彼の母の名前が刻まれているという。彼は台南、母は高雄、離れているが気持ちは同じ
である。

 彼は長男に桜の場所を教える。「場所は教えたよ」「弟たちにしっかり伝えなさい」
「お父さんはこの桜の花見ができるころにはもういないかもしれない」「弟たちに教える
のですよ、この場所を」。

 その前日、台南観光の途中に知り合い、親切にしてくれた初老の洪さんが、早朝から桜
の場所を探しに同行してくれた。半日以上かかり、新興工業団地の一角に桜の園を見つけ
たときは心から喜んでくれた。実は拙たちは、おおまかな住所しか知らなかったのだ。

 その朝、食事の時、彼は長男に言った。「今から言うことをよく聞きなさい。今から洪
さんに会います。あなたは日本の子供の代表なのですよ。洪さんは私たちを案内すること
が自慢なのです。家ではきっと、またおじいちゃんのお人よしが始まったといわれている
かもしれないんだ。今日一日、洪さんに立派な態度を示せば洪さんの喜びは例えようがな
いのですよ」

 もちろん長男がその日一日殊勝にしていたのは言うまでもない。最小限の言葉で“本旨”
を伝える─拙まで感激し自然と背筋が伸びた。その日、洪さんには台南の烏山頭(うざん
とう)ダムや現地で治水の礎を築いた『八田與一技師』の記念館までも案内していただい
た。
                                    (逍遥子)



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