見ない長い政権移行期間。これに対しては選挙前から、李登輝元総統はじめ台湾人有識者も憂慮を
表明していた。
本会も小田村四郎会長と副会長5名による連名で1月18日、「このような長期の政権移行期間は世
界的に見て稀であり、選挙によって示された民意を基礎に政府が運営される民主主義国として、こ
れほど長く民意に沿わない政権が存続することは異常ともいえる」として、スムーズな政権移譲を
要望する「緊急提言」を発表している。
2月1日から始まった立法院では選挙で多数党となった野党の民進党から院長、副院長が選出さ
れ、総統府と民進党による政権引き継ぎ作業も開始されようとしている。
このような中で存在感を発揮しつつあるのが、5議席を確保して第3党となった「時代力量」だ。
報道によれば「時代力量の黄国昌主席は5日、両岸(台湾と中国大陸)の最高指導者によるトッ
プ会談について、反対はしないが、総統は必ず事前に立法院(国会)の承認や市民の同意を得なけ
ればならないとの考えを示した」(中央通信社)と伝え、産経新聞も「黄国昌主席は『馬総統は3
月19日に辞任すべきだ』と訴えており、同意に基づく総統の任期短縮を法案に盛り込むか検討する
としている」という。その記事を下記に紹介したい。
中国を何らかの形で引き入れることを目論んでいるのではないかという疑いが解けない馬英九総
統に、時代力量が真っ向から立ち向かっているという構図が浮かび上がってきている。今後とも目
が離せない。
台湾で総統前倒し退任論 政権移行期間は4カ月 馬氏は「私の辞書に暫定政権はない」
【産経新聞:2016年2月5日】
【台北=田中靖人】台湾の立法院(国会に相当)で多数派となった民主進歩党陣営が、政権交代
手続きの法制化に乗り出した。政権移行期間が史上最長の約4カ月となったことを受けたもので、
一部では馬英九総統の退任時期を早めるべきだとの声も出ている。
総統府と民進党は5日、双方の政権交代小組(グループ)が、19日に初会合を開くと発表した。
馬政権側は曽永権総統府秘書長(官房長官)、民進党側は呉●(=刊の干を金に)燮秘書長(幹事
長)を筆頭に、政権の引き継ぎ作業を開始する。
政権交代した2008年の総統選は3月に行われ、移行期間は約2カ月だった。だが、12年の総統選
は、再選を目指す馬総統が経費削減を理由に1月の立法委員(国会議員)選と同日に前倒しした。
相乗効果で自陣営に有利に働くことなどを狙ったものだが、今回も前例を踏襲したため、5月20日
に民進党の蔡英文主席が総統に就任するまで約4カ月の「空白」が生じることとなった。
このため、民進党は移行期間中に、行政院(内閣)の各部局が次期総統に報告を行うことや、現
政権と次期政権で意見が異なる新たな政策を禁止することなどを定める法案を、今月1日から始
まった立法院に提出する方針を示している。憲法上、総統の権限とされている「外交、国防、両岸
(中台)」の3分野は機密も多く、法制化で円滑な情報提供を担保する。
馬総統は「私の辞書に暫定(政権)はない」と宣言。1月28日には米国が「不満」を表明する
中、南シナ海の太平島を訪問しており、こうした動きを牽制(けんせい)する狙いもありそうだ。
一方、新党「時代力量(時代の力)」は5日、立法院内で同様の法案作成に向けた意見聴取会を
開いた。出席した台北大の教授は「移行期間は米国は2カ月、フランスは10日で、4カ月は民主主義
の基準を超えている」と主張。同党の黄国昌主席は「馬総統は3月19日に辞任すべきだ」と訴えて
おり、同意に基づく総統の任期短縮を法案に盛り込むか検討するとしている。