台湾が国際組織へ加盟する場合、その名称は「チャイニーズ・タイペイ(Chinese Taipei、中華台北)」が多い。
1966年11月に加盟したアジア開発銀行(ADB)、1991年11月に加盟したアジア太平洋経済協力(APEC)、2015年8月に加盟した北太平洋漁業委員会(NPFC)をはじめ、オブザーバー参加の経済協力開発機構(OECD)や世界保健機関総会(WHA)、そしてオリンピックやユニバーシアード競技大会も「チャイニーズ・タイペイ」の名称で参加している。2013年9月に「特別ゲスト」で参加した国際民間航空機関(ICAO)も「チャイニーズ・タイペイ」だった。
2002年1月に加盟した世界貿易機関(WTO)への名称は、いわゆるエコノミー(経済体)で「台澎金馬個別関税領域(台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立関税地域)」という名称だが、通称は「チャイニーズ・タイペイ」が使用されている。
台湾の名称で加盟する国際組織はほとんどなく、台湾医院協会の名称で加盟する国際病院連盟(IHF)、台湾医師会の名称で加盟する世界医師会(WMA)、2013年10月に創立メンバーとして加盟した世界選挙機関協議会(A−WEB)などだ。
なぜ台湾が「台湾」の名称で国際組織に参加できないのか、その理由は明白で、中国が必ず反対するからに他ならない。コロナ対策が世界的に認められた台湾を世界保健機関総会(WHA)のオブザーバー参加を推す先進国は日本や米国など少なくないが、中国の反対でことごとく阻止されてきた。中国には民主主義のシンボルというべき選挙制度がない。台湾が世界選挙機関協議会の創立メンバーになったのは、台湾加盟に反対する中国が参加できなかったからだ。
しかし、このほど台湾は「台湾」名義で、米国の農務省農業研究局(USDA-ARS)と覚書を結ぶことにより、世界口蹄疫研究同盟(GFRA)とアフリカ豚熱研究同盟(GARA)の「正式会員(partners)」へ昇格したという。
行政院農業委員会の陳吉仲・主任委員は自身のフェイスブックで「口蹄疫を含む動物にとっての重大な感染症について、台湾の診断能力や感染予防の成果が世界レベルであると認められたことを意味する」とコメントしたと台湾国際放送は伝えている。
農林水産省のホームページ「口蹄疫に関する情報」には、台湾(台湾本島、離島の澎湖及び馬祖。但し、金門を除く)が2020年6月に、OIE(国際獣疫事務局)により「ワクチン非接種口蹄疫清浄地域」に認定されたとあり、そのコメントを裏づけている。
台湾が国際組織に「台湾」名義で正式メンバーとして加盟できたことを祝福したい。
—————————————————————————————–台湾名義で世界口蹄疫研究同盟(GFRA)とアフリカ豚熱研究同盟(GARA)の正式会員に【Taiwan Today:2023年3月8日】https://jp.taiwantoday.tw/news.php?post=233727&unit=150&utm_source=Taiwan+Today+JP+9&utm_medium=email&utm_content=%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9+textlink
行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)は6日、2023年「台米農業科学合作会議」を開催した。アメリカからは農務省農業研究局(USDA-ARS)のSimon Liu局長や副局長、それに関連の研究員など過去最多の計8人が台湾を訪れ、この会議に参加した。この会議では、行政院農業委員会家畜衛生試験所が「台湾」の名義でMOUを結び、世界口蹄疫研究同盟(GFRA)とアフリカ豚熱研究同盟(GARA)という2つの国際組織の正式な会員となった。また、台米双方は今後、「農業のネット・ゼロ」、「サステナブルな農漁業」、「強靭な林業」、「人材育成と交流」の4つのテーマについて連携を強化することで一致した。
農業委員会の陳吉仲主任委員(大臣に相当)によると、GFRAとGARAは口蹄疫とアフリカ豚熱に関する世界トップクラスの学術研究機関が参加する国際組織で、口蹄疫やアフリカ豚熱の撲滅に一致して取り組むことを目的に設立された。台湾は2019年と2020年、それぞれこの2つの組織の「協力パートナー(collaborators)」となっていたが、今回のMOUで、そろって「正式会員(partners)」への昇格が実現した。
陳吉仲主任委員によると、これら2つの国際組織の会員となることは、口蹄疫あるいはアフリカ豚熱の分野で、最新の技術、研究能力、専門知識を有すると広く認められることを意味する。陳吉仲主任委員は自身のフェイスブックで「台湾がその一員になれたことは極めて光栄なこと」とコメント。また、口蹄疫を含む動物にとっての重大な感染症について、台湾の診断能力や感染予防の成果が世界レベルであると認められたことを意味するとした上で、行政院農業委員会家畜衛生試験所を通してこれからも口蹄疫やアフリカ豚熱の予防や制御に関する技術を世界各国と共有し、台湾の存在感を示していきたいと意気込みを見せた。
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