本会理事でもある(てしま・ひとし)前橋市文化国際課副参事・歴史文化遺産活用室長、本会理
事)をお招きして、あまり知られていない「群馬と台湾の深い結びつき」をテーマに開く。
小田村会長は初代群馬県令をつとめた楫取素彦(かとり・もとひこ)のひ孫にあたり、手島氏は
『群馬学とは』や『羽鳥重郎・羽鳥又男読本』などの著書もある群馬と台湾の関係をいろいろ調べ
られてきたからだ。
ところで、来年1月から放送されるNHKの大河ドラマ「花燃ゆ」の主人公は、吉田松陰の妹
で、この楫取素彦の2番目の妻の文(ふみ)。7月11日、東京・渋谷区のNHK放送センターでキャ
スト発表会が行われ、主演の井上真央のほか、檀ふみ、長塚京三、奥田瑛二、原田泰造、優香、瀬
戸康史、要潤、大野拓朗、劇団ひとり、石丸幹二、北大路欣也が出席したと伝えられている。
ちなみに、芝山巌事件で匪賊の兇刃に斃れた「六士先生」のひとり楫取道明(かとり・みちあ
き)は、楫取素彦の最初の妻で、吉田松陰の妹だった寿との間の次男だった。
一方、最近になって楫取素彦の未発表伝記が発見され、このほど『楫取素彦伝─耕堂楫取男爵伝
記』(四六判、並製、395ページ、定価:1800円)と題して、ゆかりの山口県萩市と群馬県前橋市
で刊行された。
この本の解説は、未発表伝記を発見した萩市立萩博物館学芸員の道迫真吾氏と、台湾セミナー講
師をつとめていただく手島仁氏が担当している。
読売新聞が未発表の伝記草稿が発見された経緯や購入方法などを報じていたので、下記に紹介し
たい。
なお、読売新聞の記事では、萩博物館、萩市役所、萩図書館で購入できるとあるが、前橋市の煥
乎堂や群馬県文化事業振興会でも購入できる。
◆群馬県でのお問い合わせ先:
前橋市役所文化国際課歴史文化遺産活用室
電話:027-898-6992(ダイヤルイン)
初代群馬県知事・楫取素彦の伝記発見
【読売新聞:2014年6月7日】
思想家・吉田松陰の私塾「松下村塾」を託され、後に初代群馬県令(県知事)を務めた楫取素彦
かとりもとひこ(1829〜1912年)の未発表の伝記の草稿が、東京都内の子孫宅で発見された。長州
藩出身の歴史家・村田峰次郎(1857〜1945年)が書いた直筆の原稿で、楫取の生涯を描いた初の伝
記として、山口県萩市と前橋市が近く刊行する。
楫取は長州藩校の明倫館の講師で、同僚の松陰は「気力、詩力、酒力はわが及ぶ所に非あらず」
と評した。安政の大獄(1858〜59年)で投獄された松陰から松下村塾長を任され、松陰の妹2人と
相次いで結婚。2番目の妻、文ふみ(美和子)は来年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の主人公だ。
「耕堂楫取男爵伝記」と表題が書かれた草稿は2012年3月、萩市立萩博物館学芸員の道迫真吾さ
ん(41)が、5代目の子孫にあたる楫取能彦よしひこさん(67)の東京都狛江市の自宅で発見。執
筆者の村田が、楫取とともに投獄された経験がある父親や、楫取の知人から聞いた話などを記して
いる。萩市と前橋市は「楫取の人物像をもっと知ってもらおう」と活字化を進めてきた。
吉田松陰の知られざる逸話も
伝記では、楫取の出生から幕末の活動、明治以降の公職を紹介し、松陰についての知られざる逸
話も盛り込んでいる。楫取は萩の獄中の松陰に字典など数種類の書物を差し入れていた。松陰は書
物の巻頭に「読書するのに大変助かった。大切にしていた」と感謝の気持ちを伝える漢詩を書き、
素彦に返却したという。
松陰研究で知られる海原徹・京都大名誉教授は「楫取は松陰が信頼を置いた一人。今回の発見は
楫取と同時期の人から聞いた内容なので、信頼できる資料ではないか。研究が一気に進むだろう」
と指摘する。
能彦さんと萩市の野村興児市長、前橋市の山本龍市長は3日、東京都内で会い、出版を喜んだ。
野村市長は「偉大な人物の生き様が再認識される機会。友好都市である両市の交流をさらに増やし
たい」と意欲を示した。山本市長も「伝記の草稿が見つかったことは市民にとっても素晴らしい歴
史的な事実だ」と語った。
伝記は大河ドラマ制作の参考にもなるとみられ、能彦さんは「素彦の没後100年(2012年)の顕
彰を機に盛り上がっている。私もこの本で素彦のことをさらに勉強したい。両市の取り組みやドラ
マが楽しみ」と声を弾ませた。
伝記はA5判、395ページ、税込み1800円。萩博物館、萩市役所、萩図書館などで購入できる。
問い合わせは萩博物館(0838・25・6447)へ。