海底ケーブルは情報通信を支える重要なインフラだ。
1月3日午前、台湾・基隆港外の海底に敷設されている中華電信の国際海底通信ケーブルが損傷していることが判明した。
中華電信は初期段階でバックアップ体制を取り、通信の継続を確保したという。
中央通信社は、その後の調査で、乗組員7人全員が中国人のカメルーン船籍の貨物船が錨を降ろして航行し、意図的に損傷させた疑いがあり、「船はタンザニア籍船舶としても登録されており、船員は7人全員が中国籍、船主は香港籍」と報じている。
また、「損傷したケーブルは、台湾や日本、中国、韓国、米国を結ぶ大容量光海底ケーブル『トランス・パシフィック・エクスプレス』の一部で、日本のNTTを含む各国の通信業者が使用している」とも報じている。
台湾国際放送は、海巡署の指摘として「単純な事故ではなく、中国による台湾への『グレーゾーン』作戦の強化に伴う行動である可能性」を伝えている。
思い出すのは、昨年(2024年)11月18日、フィンランドとドイツを結ぶ全長1200キロの高速光ファイバーケーブルがスウェーデン南部のバルト海で切断され、前日の17日にはすぐ近くのリトアニアとスウェーデン間のケーブルも切断されたことだ。
デンマーク海軍は、ロシアからの肥料を積んだ中国籍の貨物船が錨を海底に降ろして160 km以上にわたって航行し、2本の光ファイバーケーブルを切断したとして中国籍船を拿捕したという。
その1ヵ月後の12月25日には、フィンランドとエストニアを結ぶ海底送電ケーブルで大規模な障害が発生し、送電能力が65%以上低下する事態となった。
このときも、ロシア産石油を積載した中国船舶が障害発生時にケーブル上を速度を落としながら航行していたことから、フィンランド当局は26日にこの中国船舶をバルト海で拿捕したそうだ。
いずれの海底ケーブル切断や損傷に中国やロシアが影を落としている。
1月3日に台湾の北部海域で起きた海底ケーブル損傷は、台湾と日・米・韓の情報遮断を狙った可能性を捨てきれない。
台湾の海巡署が指摘したように、「単純な事故ではなく、中国による台湾への『グレーゾーン』作戦の強化に伴う行動である可能性」を視野に調査を進めるべきだろう。
意図的な損傷が疑われる貨物船は韓国の釜山港に向かったことで、海巡署は韓国当局に捜査協力を要請したという。
韓国は、日本や米国とともに損傷を受けた海底ケーブルの当事者だ。
韓国の対応が注目される。
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