めて事実を記憶に留め教訓を生かそうと、葉亭●さん(早稲田大学大学院生)と林建良氏(「台湾
の声」編集長、本会常務理事)を講師に「台湾2・28時局講演会」を開いたことはいまだ記憶に新
しい。(●=草冠に亭)
今年はまた、台湾の戒厳令が解除されてから30年という節目の年。国家人権博物館準備所は、7
月から展示会、記念イベントなど一連の活動を行うという。7月14日からは、景美人権文化園区
で、戒厳令が施行されていた期間、政府が政治犯をどのように処遇したかを紹介するための展示を
行い、7月15日には、総統府前の「白色テロ政治受難者記念碑」の前で戒厳令解除記念式典を行う
そうだ。台湾国際放送が伝えているので下記にご紹介したい。
ちなみに、中国共産党との内戦に敗れた蒋介石の国民政府は1949年12月に台湾に逃げ込んできた
が、敗色濃厚だったこの年の5月19日、台湾に戒厳を布いた。その後、鄭南榕たちがその解除を求
めて立ち上がり、ついに1987年7月15日に戒厳令が解除される。実に38年2ヵ月にわたる世界最長と
いわれる戒厳令だった。
一方、蒋介石は中国共産党との内戦に対応するため、1948年5月10日、憲法を停止して動員戡乱
(かんらん)時期臨時条款を敷く。つまるところ、蒋介石の独裁体制となる。この動員戡乱時期臨
時条款は、李登輝が総統に再任されて2年目の1991年5月1日、中国共産党を敵視した動員戡乱時期
の終了と動員戡乱時期臨時条款の廃止を宣言することで、ようやく終わる。
動員戡乱時期臨時条款は戒厳令よりも長い43年も続けられた。弊害も大きく、その最大の弊害
は、1948年に選出されて改選されなかった立法委員と国民大会代表のいわゆる「万年議員」が居
座っていたことだった。国会にまったく民意が反映されなかった。
これに対し、万年議員の辞職を求め、動員戡乱時期臨時条款の廃止や国是会議の開催などを求め
て学生たちが立ち上がる「野百合学生運動」が1990年3月に起こる。当時、総統だった李登輝は学
生たちの要求を受け入れ、万年議会の解散や「国是会議」の招集を約束し、6月29日から国是会議
を開催。また、翌年5月1日には動員戡乱時期臨時条款の廃止を宣言、その年の12月31日、「万年議
員」全員が辞職することになるのだった。
今年、台湾を訪れる方には、二二八紀念館や景美人権文化園区などを訪れて台湾の戦後史に思い
を馳せるとともに、この台湾が日本と運命共同体にあることを実感していただきたい。
戒厳令解除30年、228事件70年でイベント
【台湾国際放送:2017年7月5日】
今年は台湾での戒厳令解除30周年、228事件70周年に当たることから、各種のイベントの開催が
予定されている。
今年は、1987年7月15日に戒厳令が解除されてから30年目、また1947年に発生した台湾市民と国
民軍との衝突事件、228事件から70年目に当たる。
これに当たって、文化部に所属する国家人権博物館準備所は、7月から展示会、記念イベントな
ど一連の活動を行い、「歴史の転換期における正義」という概念を広め、人権教育を強化すること
を目指している。
そのうち、7月14日からは、景美人権文化園区で、「台湾監獄島」と題して、戒厳令が施行され
ていた期間、政府が政治犯をどのように処遇したかを紹介するための展示を行う。この中では、当
時の逮捕、捜査、供述を強制する拷問、軍事法廷への起訴、裁判、判決確定、刑の執行などが行わ
れた場所45カ所を再現する。また、当時の政治犯とされた人たちの証言を通じて、白色テロと呼ば
れる政治的な弾圧の歴史を理解してもらうことにしている。
7月15日には、総統府前に設けられている「白色テロ政治受難者記念碑」の前で、戒厳令解除記
念式典を行う。
このほか、文化部も台湾国際人権映画展を開催し、海外映画9本、台湾映画2本を上映し、世界と
台湾での「転換期の正義」の意義を考えてもらうことを企画している。この映画展は、台湾全土の
10カ所を巡回して行われる。