中山泰秀・防衛副大臣がハドソン研究所の講演で「台湾は兄弟であり家族」と明言

 防衛省の中山泰秀(なかやま・やすひで)副大臣は6月28日、米国のハドソン研究所が主催する討論会において講演し、中国が唱え、多くの国が採用してきた「一つの中国」政策に疑義を呈しつつ、「民主主義国家としてわれわれは台湾を守らなければならない」と述べるとともに「中国軍からの脅威を受けている台湾問題に焦点を当てる必要がある」「台湾は兄弟であり、家族だ」と述べたという。

 中国外務省は「発言は非常に悪意があり��ぢ無責任で危険だ」と反発し、日本に厳正な申し入れをしたと伝えられているが、日本や台湾の好意的な受け止め方と好対照をなしている。

 まず日本側の岸信夫・防衛大臣は翌日29日午前の記者会見において、下記のように答えている。

<ハドソン研究所の講演における副大臣の発言については、台湾がわが国にとって自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人であること、台湾をめぐる情勢の安定は、南西地域を含むわが国の安全保障にとって重要であり、近年中国が軍事力の強化を急速に進める中、中台の軍事バランスは全体として中国側に有利な方向に変化し、その差は年々拡大する傾向にある、防衛省としても引き続き台湾をめぐる関係動向を注視する必要がある、といった趣旨を述べたものと承知をしておるところであります。>(防衛省HPより)

 岸大臣は、中山副大臣の発言はこれまでの日本政府の発言に沿った内容だとし、いったいこの発言のどこが問題なのかと暗に示しているようだ。

 加藤勝信・官房長官も30日午前の記者会見で��ぢ従来の日本政府の立場を前提に��ぢご本人の個人的な考えを述べられた��ぢものと述べ、日本政府の立場は逸脱しておらず、「台湾は兄弟であり、家族だ」という中山副大臣の個人的な思いを述べただけとコメントした。やはり、問題となるような発言ではないとの考えを示した。

 3月16日の日米安全保障協議委員会(2+2)から6月13日の先進7ヵ国首脳会談まで「台湾海峡の平和と安定」が強調されるとともに、「中国の脅威」が日米のみならずEUやオーストラリアなどとも共有されている現在、中山副大臣の発言はまっとうな見解であり、日本の国益にかなったものだ。

 台湾では、中央通信社などが大きく取り上げている。下記に紹介したい。また、先般、台湾語でヒーローインタビューに答えた王柏融選手に感謝メッセージを送った全日本台湾連合会が中山副大臣へ感謝のメッセージを送ったので、別途ご紹介したい。

 ちなみに、ハドソン研究所で思い出すのは、2018年10月4日、当時のペンス副大統領が中国共産党政権による知的財産権窃盗やキリスト教徒・仏教徒・イスラム教徒への迫害、借金漬け外交などを指摘し、米国の中国政策の転換を宣する歴史的な演説だ。米国のいまに続く対中国政策の原点というべき演説を行ったのがハドソン研究所だった。

 トランプ政権で国務長官をつとめ、台湾との関係を強化し続けたマイク・ポンペオ氏は現在、ハドソン研究所に所属しているという。

—————————————————————————————–中山副防衛相「台湾は兄弟で家族」=米シンクタンクの討論で言及【中央通信社:2021年6月29日】https://japan.cna.com.tw/news/apol/202106290002.aspx

 (ワシントン中央社)中山泰秀防衛副大臣は28日、米シンクタンク、ハドソン研究所のリモート討論で、日台関係について、「台湾は友人ではない。兄弟であり、家族だ」と述べた。

 中山氏は「民主主義国家としてわれわれは台湾を守らなければならない」と強調。米国や世界各国が1970年代からとってきた「一つの中国」政策について、あれから50年経った現在から見て、当時の決定は「正しかったのか」と疑問を呈し、「それは分からない」と話した。

 中山氏は、台湾の安全保障上の脅威を日本は自国への脅威だと考えているのかとの問いに対し、日本と台湾は地理的に近いと言及した上で、台湾を友達よりもより親密な「家族」だと形容し、「台湾に何か起これば、それは沖縄県に直接的に影響を与える」と指摘。沖縄に米軍基地や施設があり、軍人の家族らもいることに触れ、「現在、中国軍からの脅威を受けている台湾問題に焦点を当てる必要がある」と述べた。

 また、中国の戦闘機開発や核保有などに言及した上で、中国の力が強まってきていると指摘し「われわれは目を覚ますべきだ」と訴えた。

(編集:名切千絵)

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