中国が「頑迷な台湾独立分子」ブラックリストを公表

 中国国務院の台湾事務弁公室は昨年11月18日、「台湾独立分子や資金面の支援者らに対し、法に基づき打撃を与える」として「頑迷な台湾独立分子」のブラックリストを作成するという談話を発表した。

 その1年後の11月5日、蘇貞昌・行政院長、游錫●・立法院長、呉[金リ]燮・外交部長の3人がリストアップされていると初めて公表した。公表されたのはこの3人だけで、資金面の支援者や外国人などの名前は挙げられなかった。(●=方方の下に土)

 ブラックリストを作成した理由について、新華社通信は「ごく一部の頑迷な『台湾独立』分子が一時期以来、(台湾海峡)両岸の対立を煽ることに力を注ぎ、悪意をもって大陸側を攻撃、中傷し、悪質な言動で『独立』を企て、外部勢力と結託して国の分裂を図っており、その行為が両岸関係を著しく破壊し、台湾海峡の平和と安定を甚だしく害し、両岸同胞の共通利益と中華民族の根本的利益を著しく損なってきた」と報じている。

 また、ブラックリストに載せられた人物には、下記のような「懲戒措置を実施する」という。

・生涯にわたる刑事責任の追及。・本人と家族の大陸と香港特別行政区、マカオ特別行政区に入ることの禁止。・本人と関連する機関による大陸の関係組織や個人と協力することの制限。・本人と関連する企業や支援者が大陸で利益を図ることを絶対に許さない。・その他必要な懲戒措置。

 中国は自分の主張に従わない国などに弾圧を加えることはよく知られているが、台湾には「懲戒措置」を実施するという。懲戒とは「不正または不当な行為に対して制裁を加えるなどして、こらしめること」だが、会社なら命令に従わない者の不当行為に訓告から懲戒免職にわたる制裁を与えることだ。しかし、すでに制裁内容が決まっているのだから、これは懲罰というべきだろう。中国が恫喝外交の真骨頂を見せたと言ってよい。

 これに対して、蘇行政院長は「脅迫は通用しない」、游立法院長は「これで国際社会における私の知名度は少し上がった。光栄なことだ」、呉外交部長は「中国のブラックリストに入り、数え切れないほど祝いの言葉をもらった。台湾の自由と民主主義のため引き続き奮闘する」と、三者三様に反応しているが、皮肉たっぷりの開き直った反応で、さほど意に介していないようだ。

 それにしても、なぜ蔡英文総統の名前が上がらないのだろう。行政院長の任命者である総統であり、外交・防衛を握るトップの立場なのだから、いの一番に名前が挙がってもよいはずだ。経済人や台湾独立建国聯盟の陳南天主席などの名前もリストに載せられているのだろうか。気になるところではある。

 また、中国はこのような「懲戒措置」という恫喝が通用すると本気で考えているのだろうか。一党独裁の共産主義国家ならではの世論戦の一環なのだろうが、台湾との関係を強化している米国やEUに対する見せしめ的効果も狙っているのだろう。もちろん、日本に対してもだ。

 日本は新たな外務大臣に、防衛大臣や農水大臣、文科大臣を歴任し、日中友好議員連盟会長でもある林芳正・衆院議員が就任する。中国のこの「懲戒措置」についての見解をぜひ聞きたいものだ。

◆新華社:蘇貞昌ら頑迷な「台湾独立」分子に懲戒措置 国台弁[11月6日] http://jp.news.cn/2021-11/06/c_1310293562.htm

—————————————————————————————–中国、台湾独立派の刑事責任追及へ 行政院長らリスト公表【ロイター通信:2021年11月5日】

[北京 5日 ロイター] – 中国で台湾政策を担当する国務院(政府)台湾事務弁公室の報道官は5日、台湾独立支持派の刑事責任を生涯にわたって追及すると表明した。中国が台湾独立派と見なした人物への具体的な処罰を明確に示したのは初めて。

 国務院台湾事務弁公室は「頑迷な台湾独立分子」リストの内容を初めて公表。台湾の蘇貞昌行政院長(首相)、游錫コン立法院長(国会議長)、呉ショウ燮(ジョセフ・ウー)外交部長(外相)をリストに載せた。

 同弁公室の朱鳳蓮報道官は声明で、リストに掲載された人物には中国本土・香港・マカオへの入国を認めないといった罰を加えると説明。本土の組織や個人との協力も認めず、リスト掲載人物の会社や資金提供組織が本土から利益を得ることも容認しないとした。

 台湾の政治家は選挙運動資金を部分的に企業からの寄付に依存。多くの台湾企業は中国本土とのビジネスで利益を得ているほか、数万人の台湾人が本土で現在働いている。

 朱報道官は、リスト入りした人物には「何らかのその他必要な措置」も講じると言明。台湾独立支持派に対する中国のメッセージは「祖先を忘れ、祖国を裏切り、国を分裂させる者は結局うまくいかず、人民に拒絶され、歴史に判断される」と述べた。

 台湾で対中国政策を所管する大陸委員会は、台湾は法の支配が確立された民主主義社会であり、中国政府に支配されているわけではないと表明。「独裁的かつ権威主義的な地域からの威嚇や脅迫を受け入れない。市民の安全と幸せを守るために必要な対抗措置を取る」とした。

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