中国「民間」装い圧力 留学生デモ世界に反撃 外交リスクない新戦略

【4月22日 産経新聞】

 中国の国際情報紙「環球時報」は21日、「中国には力強い民間外交が必要」と題する
大型対談記事を掲載した。出席者は大学教授ら著名学者6人で、北京五輪の聖火リレー
への妨害活動に対抗した海外の中国人留学生らの一連の抗議デモが「欧米社会の偏った
世論に対し大きな反撃となった」と高く評価、抗議デモを「民間外交」の一形態ととら
え、「政府はこうした民間外交をもっと積極的活用すべきだ」と主張した。(2面に
「主張」、2、28面に関連記事)

 中国はこれまで、このような「民間」の力を活用してこなかったが、同紙は中国共産
党機関紙「人民日報」の傘下にあり、「民間外交」が今後、中国の新しい外交手段の一
つとなる可能性もある。

 もっとも、「民間外交」を担う組織は、実際には背後で中国政府が影響力を行使して
いるとみられ、政府の「別働隊」の色彩が濃い。

 出席者は、チベットと五輪問題で中国の外交が逆境の中にあることを認めたうえで、
中国を批判している主な勢力は、欧米諸国の政府ではなく、人権団体と称する民間組織
だと指摘。中国政府がこれらの組織を相手にすることは「大砲で蚊を攻撃しているよう
なもので、対応しきれない」と論じた。その一方で、欧米などで最近、中国人留学生が
起こした大規模なデモが、海外の反中勢力に対して「大きな圧力となった」と結論づけ
た。

 北京師範大学の張勝軍教授は、「民間外交」を展開することは、政府にとって外交上
のリスクがないことがメリットだと強調。「例えば、個別の韓国人が日本大使館の前で、
指を詰めたり、焼身自殺を図ったりしても、韓国政府と関係がないことから、外交上の
リスクが全くない」と、人権感覚の希薄さを露呈する表現まで使い、これからはもっと
積極的に「民間外交」を推進すべきだと提案した。

 これに対し、北京大学の余万里助教授らは、政府は協力してくれるNGO(非政府組
織)などに対し、資金やノウハウの面で援助することが必要と指摘した。同時に、「民
間外交」を展開するためには、民間組織が愛国的で政府の外交方針をよく理解していな
ければならないとし、そのためには、政府による基礎教育が必要だとの意見も出された。

 最近の欧米での留学生デモでも、中国政府の関与を示す情報が流れている。

 中国紙などの報道によると、19日にドイツのベルリンで行われたデモで、数千人の参
加者にマニュアルが配られたという。このマニュアルは「ナチスを連想させる行為をす
るな」「外国の指導者を侮辱してならない」などと指示、中国のイメージを損なうこと
や、ドイツの法律に触れることを厳禁したという。参加者には交通費が提供されたとい
われ、その動員力と資金力から、背後で中国政府が影響力を行使しているのは間違いな
いとの指摘もある。



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