【7月7日「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」通巻2245号】
胡志強(国民党幹部)が厦門を訪問している。
かつてパワフルな政治家だったが、大陸の宣伝係をつとめるようでは、この男の政治
的力量もここで終わりか?
国民党名誉主席の連戦は、中国からやってきた観光団体を宴席に招待し、歓迎の辞。
「チャーター便による直結は“中国人の誇り”と述べた。
実際に台湾の馬英九政権は、フィージビリティスタディ(商業化可能性の研究)を始
めた。
対象となる研究課題は金門と厦門に橋を架けると、どういう経済的効果があるか、探
ろうというのだ。
従来は台湾からの一方的な大陸投資で、製造業を中心に五万社、100万人が中国大陸へ
進出。台北から香港かマカオで乗り換え、或いはソウル、東京でのりかえて中国の目的
地へ向かった。
それが直行便となるのだから時間的短縮のメリットは確かに大きい。
大陸からの台湾投資は不動産と株式である。製造業はやってこない。人件費の高い台
湾では、コストがあわないからである。
となれば、ほかの分野で台湾が得するのは観光客ということになるが、マナーを知ら
ず、そこら中にゴミ捨て、痰、唾を吐き散らす人々でホテルや観光地はさぞ汚れること
だろう、と懸念する向きが多い。
それよりも、治安の悪化である。
台湾の有識者らはこのポイントを最も心配し日本での“実績”の数字を挙げて強く警
告している。
たとえば、次の数字。
▼日本への不法入国
2002年 2004年 2006年
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不法滞在者合計 29676人 32683人 27698人
送還された外国人 8290人 13408人 10251人
▼中国人の日本における犯罪件数
2003年 2005年 2006年 2007年
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訪日中国人 527796人 741659人 780924人 980411人
中国人の犯罪件数 11535件 11366件 10095件 9664件
外国人犯罪の
なかで中国人の 43・3% 34・4% 36・8% 37・6%
占める割合
(出典「自由時報」、08年7月2日より抄録)
とくにチャーター便のために『開放』された台湾国内の八つの飛行場のなかでも、国
際線乗り入れが30年近く中断していた台北松山空港などでは、入国審査、検疫、税務の
人員のローテーションのやりくりばかりか、入管審査をくぐりぬける中国人をいかに防
御するのか、或いは、チャーター便の殆どの客が軍人であったりして、トロイの木馬と
突如変貌することも考えられ、その割には警戒が緩いのはおおいに気になる所である。
通貨人民元の交換も自由化されたが、人民元は20%が偽札、その防御態勢は整ってい
るのだろうか?
馬英九政権の発足から僅か45日で、いきなり週34便ものチャーター便乗り入りとは、
台湾ビジネスマンのメンタリティは、ここまでリアルなものかと感心するのである。