世界保健機関(WHO)が台湾の疾病予防システムへの参加受け入れを表明

世界保健機関(WHO)への加盟は台湾の悲願だったが、1月22日、台湾の行政院衛生
署(衛生省=厚生労働省に相当)は、WHO事務局長室のバーナード・キーン主任から1
月13日に、今後WHOは台湾の国際保健規則(IHR)参加を受け入れるとする旨の書簡
を受け取ったと発表した。

 これで台湾は「国際社会と同じスピードで、国際間のSARS(新型肺炎)、鳥インフ
ルエンザ、化学災害、食品安全事件等の緊急公衆衛生事件の第一報を手にすることができ
るようになった」(衛生署)という。

 ただし、この参加はSARSや鳥インフルエンザなどの感染拡大を防ぐために設けてい
る疾病予防システムへの参加であり、「IHRはWHOの活動のすべてではなく、これが
WHO年次総会オブザーバー参加の代わりとすることはできない。わが国は今後も引き続
きWHO年次総会オブザーバー参加を求めていく」と強調している。

 台湾は1972年にWHOを脱退してからは活動参加を認められていないため、1997年以来
毎年、WHO年次大会オブザーバー参加とWHO関連会議への「有意義な参加」を求め、
「台湾衛生実体」の名義で参加申請していた。

 日本も2002年からはアメリカとともにオブザーバー参加を支持してきたが、台湾は「不
可分の一部」と主張する中国の圧力で実現できなかった。

 今回の国際保健規則(IHR)参加決定には「中国の意向が働いているとみられる」と
も報道されているが、医療の空白地帯を作らないとするWHOの基本方針や、台湾の参加
を支持する声は世界的なものになりつつあり、中国では鳥インフルエンザウイルスで死亡
する例が相次いでいるなど、認めざるを得ない状況に追い込まれているという状況もあっ
たことも忘れてはなるまい。

 いずれにしても、突破口は開いた。これを一里塚としてオブザーバー参加を実現させた
いものだ。

 ただし、衛生署の発表には、WHOがどういう名称で参加を受け入れるのかについての
言及がないのが気掛かりといえば気掛かりなのだが……。

                    (メルマガ「日台共栄」編集長 柚原 正敬)


WHOが台湾への国際保健規則(IHR)直接適用に合意
【1月22日 台湾週報】

 行政院衛生署は1月22日、世界保健機関(WHO)が台湾に対して国際保健規則(I
HR)を直接適用することに合意したことを発表した。

 郭旭[山の下に松]・衛生署疾病管制局長は、今年1月13日にWHO事務局長室のバー
ナード・キーン(Dr. Bernard P. Kean)主任から、わが国のIHR参加の執行方式に関
して、今後WHOが台湾のIHR参加を受け入れるとする旨の書簡を受取った。

 これは、今後わが国を世界疫病通報及び予防体系に組み込み、WHOと直接連絡協力で
きるようにするもので、IHRの世界普遍適用の原則を実現する第一歩となるものである。

 IHRは2007年6月15日から世界各国で適用を開始したWHOが推進する重要プロジェ
クトであり、全世界の疾病または公衆衛生緊急事態の予防の観点から見て、WHOがわが
国を正式にIHR体系に組み込んだことは、全世界の疾病予防体系の一環であり、疾病管
制局はこれらの進展を評価する。

 WHOがわが国に対して提示したIHR参加方式は、1)わが国が指定した連絡窓口を
受け入れる。2)WHO窓口とわが窓口が相互に自主的に直接連絡を取り合うことができ
る。3)WHOがわが国に「公衆衛生事件情報ネット」の登録パスワードを提供する。
4)わが国で国際公衆衛生緊急事態が発生した際に、WHOは専門家を派遣して支援し、
わが国関係者のWHO緊急委員会出席を要請できる。5)わが国が推薦する専門家をWH
O・IHR専門家群に組み込む─の5項目からなる。

 郭局長は「WHOが提示した5項目はIHR執行時に最も重要な要件である。今後、わ
が国の窓口とWHOの窓口の相互協力モデルや、専門家の推薦等の関連する技術的な詳細
部分について、WHOとさらに協議する必要がある」と述べた。

 郭局長は「わが国が正式にIHRに組み込まれることは、わが国が直接WHOと連絡を
取り合えるようになったことを意味する。しかも、国際社会と同じスピードで、国際間の
SARS(新型肺炎)、鳥インフルエンザ、化学災害、食品安全事件等の緊急公衆衛生事
件の第一報を手にすることができるようになったことは、わが国の疫病予防能力の向上に
プラスとなる」との認識を示した。

 そのうえで郭局長は「もし台湾で国際的な緊急公衆衛生事態が発生した場合、WHOの
専門家による来台支援やわが国と共同で関連予防措置を執行することができるようになる
ほか、さらに、わが国の専門家がWHOが招集する委員会に出席して、いかにわが国また
はその他の国々で発生した緊急事態に対処するか議論に参加できるようになる。これによ
ってわが国の危機対応能力が向上し、国内の人々の健康安全が守られ、経済損失も減らす
ことができる」と述べ、IHR適用のメリットを具体的に示した。

 このほか、郭局長は「IHRはWHOの活動のすべてではなく、これがWHO年次総会
オブザーバー参加の代わりとすることはできない。わが国は今後も引き続きWHO年次総
会オブザーバー参加を求めていく」と強調した。

 「国際保健規則」(IHR)は国際間で疾病予防のための手続きを定めたものであり、
2005年5月23日に第58回世界保健機関(WHO)年次総会で修正のうえ通過したもので、
2007年6月15日から発効、実施された。主な要点は、1)国際的に注目される公衆衛生突
発事態の通報の拡大、2)流行の予測と危機管理を強化、3)IHR国別窓口機関の増設、
4)監督および危機対応能力に対する基本的要求の増加─の4項目であり、WHOはIH
Rをスムーズに推進するため、2007年6月11日に各国が備えるべき条件として、1)各国
別に「IHR対応窓口機関」を設置する。2)各国は国内公衆衛生事件についてWHOへ
の通報基準に達しているかを評価する。3)各国は、新式の評価表を全面使用してIHR
規則の要求に合致するよう確実にチェックおよび国内法規の改正を行い、国内の公衆衛生
緊急事件に対応する能力を評価および強化する─などを求めている。

 わが国はWHO加盟国ではないため、遅々としてIHR締結国になることができなかっ
たものの、IHRの実施と同時に、2007年6月15日からIHR規定に合わせて、1)衛生
署疾病管制局を「IHR対応窓口機関」に指定し、国際的に疫病情報交換を行う。2)伝
染病予防法をIHR規則に合致するよう改正。3)評価表を用いて、自主的に国内公衆衛
生事件についてWHO通報基準に達しているかを評価する。4)国内緊急危機対応能力を
チェックおよびレベルアップして、疾病の監督および予防の能力を強化する─など関連の
防疫新措置を進めている。

                    【行政院衛生署疾病管制局 2009年1月22日】



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