そこで、昨年12月に実施した「役員・支部長訪台団」(渡辺利夫団長)では、総統府秘書長だった呉氏を総統府に訪ね、安全保障をテーマに40分ほど懇談した。
呉氏は、米国と台湾がどれほど安全保障関係について話し合っているかを強調し、すでに4つのレベルで話し合いが持たれていると明かしていただいた。米国側がいかに熱心かについて力説した。
しかし、日本との安全保障の話し合いに触れると途端にトーンダウンし、台湾を重視する安倍政権にもかかわらずなぜ安全保障対話が進まないのかと、顔を紅潮させながら話していたのが印象的だった。呉氏に返す言葉はなかった。
呉氏は一昨日の9月12日、ワシントンのシンクタンク「グローバル台湾研究所」(Global Taiwan Institute:GTI)が主催するシンポジウムにビデオ出演し、流暢な英語で基調講演を行っている。
Taiwan Today誌が要約と動画を発表しているので下記に紹介するが、真剣に語る呉部長の動画を見ていただければ、昨年12月に私どもが受けた衝撃も少しはご理解いただけるかもしれない。
本会は今年3月、政策提言として「台湾を日米主催の海洋安全保障訓練に参加させよ」を発表している。今年の「役員・支部長訪台団」でも外交部長となった呉氏を訪問する予定でいる。私どものこの政策提言は、台湾を海賊対策や自然災害に対応するための海洋安全保障訓練に参加させたいとする主旨だ。呉氏への私どもなりの返答でもある。
すでに蔡英文・総統や李喜明・参謀総長からも賛同の旨を記した御礼状をいただいている。呉氏にお会いできることになれば、この政策提言についての感想をぜひ聞いてみたい。
————————————————————————————-外交部長、「中国問題」はあっても「台湾問題」はない【Taiwan Today:2018年9月13日】https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=149&post=141487
外交部(日本の外務省に相当)の呉釗燮部長(大臣)は12日午前、米ワシントンのシンクタンク「Global Taiwan Institute(GTI)」が主催するシンポジウムに事前録画した動画を寄せ、「民主台湾、必将勝出(=民主主義の台湾は必ず勝つ)」と題する基調講演を行った。講演の概要は以下のとおり。
台湾に対する中国の圧力は、まさに集中砲火であり、理不尽且つ手段を選ばないものである。例えば海外の航空会社に対し、台湾に関する表示を変更するよう脅迫したり、自分への独占インタビューを掲載した日本のメディアに対して報復とも見られる締め出しを行ったりした。さらには、スペインのサラマンカ大学に圧力をかけ、台湾文化に関するイベントを中止させた。つまり、問題の所在は台湾ではなく、実は中国にあるのだ。中国の台湾に対する威嚇や圧力は、台湾に影響を与えているばかりでなく、さらにはこの地域の安全保障やパワーバランスにも危害を及ぼし、世界の自由と民主主義という核心的価値を傷つけようとしている。国際社会はこの問題を正確に認識しなければならない。現在、世界各国が直面しているのは、実は「中国問題」であって、「台湾問題」ではないのである。
『台湾関係法(米国の対台湾政策の基本が定められた米国内法)』の制定40周年を迎えるに当たり、台湾と米国はこの特殊な関係をより強化していくべきである。特にトランプ政権は現在、「インド太平洋戦略」を打ち出している。台湾は米国及びその他の理念の近い国々にとって、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進するための理想的なパートナーとなり、経済、貿易、投資、専門技術、民主的ガバナンス、市民社会のキャパシティ・ビルディング(capacity building)などの分野で協力できるだろう。
台湾は決して負けない。台湾と近い理念を持つ国々は、ますます私たちを支持するようになっている。我々はトランプ政権、米国国会、ワシントンの政策立案者らの広範囲にわたる支持に感謝したい。彼らがいるから、台湾は孤独だと感じることはない。中国が「シャープパワー(sharp power)」によって他国を傷つけようとしているとき、台湾は「ウォームパワー(warm power)」をもって、うそ偽りのない、実務的で、真摯な態度で思いやりの心と、その価値観を伝えている。国際社会が台湾の存在を直視し、台湾と手を取り合い、私たちが共有する価値を守り、自由民主を基礎にした恒久の平和を実現することを願う。
台湾はダビデ(旧約聖書に出てくる古代イスラエルの王)だ。中国という巨人兵ゴリアテとの戦いに、民主主義の台湾は必ず勝つだろう。
◆外交部長呉釗燮?釗燮向華府智庫發表『民主臺灣,必將勝出』專題演講【英語:11分36秒】 https://youtu.be/mcD1VdggfO8