上を向いて歩こう [鄭南榕基金會董事長  邱 晃泉]

「第4回台湾建国烈士 鄭南榕先生を偲ぶ会」メッセージ

 今年は桜満開の中で皆様と一緒に鄭南榕さんを偲ぶことができず、本当に残念に思い
ます。私達は日本が好きで、とても皆さんにお会いしたい気持ちです。しかし最近の台
湾での出来事は、率直に言って嘆かわしいものがあります。

 1989年、鄭南榕さんは人間としての自由と尊厳を守るため、焼身自殺し、台湾を新し
く独立した立派な国にするため、自分の命を捧げました。

 この19年間で、台湾人の自由と尊厳、台湾の独立と自主などの大きな問題は改善され
た部分もあれば、未だにハッキリしないところもあります。

 特にこの春、台湾では大きな選挙が行われ、チベットでは武力鎮圧が行われ、中国で
はタンク・ミサイルを用意し、メディアを封殺し、如何にしてもオリンピックを開催し
ようとしています。選挙においては、台湾に深く関連、影響する自由と人権は大勢の有
権者に関心を持たれず、誠に残念です。

 しかし、台湾の問題は中国であり、中国の問題は人権です。中国の人権問題を正視し
なければ、台湾の自由への道は平坦ではありません。

 バスケットボールの中国代表だった陳凱さんが発起した「自由オリンピック世界マラ
ソン」が今年2月23日、台北の鄭南榕記念館から、鄭南榕精神の象徴である赤い薔薇の
花を揚げ、以前の中正記念堂広場である「自由広場」まで走りました。到着した時、彼
が「自由広場」大きな四文字を見て涙を流し、大声で泣き出しました。そして報道陣に、
「自分は中国では絶対ありえない自由を味わえた」と語りました。

 チベットが中国から迫害を受けるなか、3月の中旬から「自由広場」に台湾人とチベ
ット人が集まり、チベットの自由と人権のために一緒に祈り、世界に声をあげました。
そこに、「私は台湾人、私はチベット独立を支持する」を書かれた黒いTシャツを着て
いる人を見て、20年前、鄭南榕さんが台北の金華中学で「私は鄭南榕、私は台湾独立を
主張する!」「私は外省人、私は台湾独立を主張する!」と大声で叫びだしたのが思い
出させられました。

 人権には国境はありません。自由は普遍的な価値です。鄭南榕さんが焼身自殺したあ
の炎は、台湾の自由の道を照すだけではなく、自由を切望する他国の国民、特に中国人
とチベット人も照らしているのです。

 自由への道に障害は付き物です。3月22日の総統選挙での敗北後、私達は500万以上の
独立自主を堅持する台湾人と同様、悲しみと孤独、とても特別な孤独を味わいました。
さらには4月1日深夜、「海洋の声」ラジオ放送局の廖述炘局長が中国国民党の馬英九が
台湾総統になるのを受け入れることができず、放送局で鄭南榕と同じく焼身自殺しまし
た。

 しかし、私たちは志を喪ってはいけません。暗闇の中においても鄭南榕さんが灯して
くれた自由の炎を前方にはっきりと見ることができます。悲しいかもしれません。孤独
かもしれません。しかし、「上を向いて歩こう」の歌詞のように、「涙をこぼさないよ
うに、上を向いて歩こう」



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