(2006)年9月のことだ。ジョージ・H・カー著『裏切られた台湾』に始まり、『遠い空−
国分直一、人と学問』、『母国は日本、祖国は台湾』、『植民地下の台湾における学校唱
歌教育の成立と展開』、『阿片試食官』、『大地の咆哮』など、台湾関連書籍を手短にご
紹介いただいた。
三田氏は「市井の台湾史研究者」として日台双方でその名が知られていた元総合商社社
員で、三田氏から台湾関連書籍に関するコメントを何度となく見せていただく機会があっ
た。そのたびに切り口の鮮やかさと、核心をつく簡潔な表現力に驚かされた。そこで、本
誌の読者のためにとお願いして「一口コメント」を連載した次第だ。
その三田氏が郷里広島の広島大学図書館に「最後まで手元に残していた台湾関連書籍」
を一括寄贈されたという。
早速、広島大学図書館ホームページ「三田図書」を検索してみたら、約1400冊もの多種
多様の単行本がずらりと出てきた。圧巻だ。これ以外にも定期刊行物や日本時代の復刻を
含む雑誌類もかなりの冊数を寄贈されているという。
仄聞するに、三田氏は1970年夏(大学3年の時)、偶然のきっかけで台湾を訪問、爾来、
台湾関連書籍を中心に各種図書(主として昭和史関連)を地道に収集してきたという。
2000年前後の数年間、病気を患ったものの、病気回復後は東京の自宅から台湾各地の図
書館や大学等に対する各種図書の大量送付に専念されていた。段ボール箱で発送されたの
は奥さんだった。本が死蔵されることを何とか防ぎたいという一念からだったという。
しかし2008年、家庭の事情でやむなく郷里の広島に帰ることとなる。そこで、最後まで
手元(東京自宅の専用書庫)に残していた台湾関連書籍を郷里広島の大学に寄贈すること
を決断、それが現在、1400冊もの「三田図書」として広島大学図書館に収蔵されていると
いうことだそうだ。
台湾関係者にとっては、まさに「宝の山」と見えるかもしれない。欲しい本がザックザ
クという感じだ。
下記が広島大学図書館のホームページのアドレス。上にある「OPAC簡易検索」に
「三田図書」と書き込めば、三田氏が寄贈された図書一覧が出てくる。台湾に関心を寄せ
る方はぜひこの本を活用していただきたい。また、広島大学図書館にこれだけの台湾関連
図書がそろっていることを広めてもいただきたい。
◆広島大学図書館【OPAC簡易検索に「三田図書」と書き込む】
http://www.lib.hiroshima-u.ac.jp/
なお、下記のプロフィールは、本誌で「三田裕次の一口コメント」を連載したときに付
していたもの。三田氏はあまりこういう紹介を好まれないかもしれないが、読者の便を考
えご参考までにご紹介しておきたい。また、「一口コメント」第1回のメルマガも紹介した
い。
三田裕次(みた ゆうじ) 台湾史研究家。日本国広島人、昭和24年(1949年)生まれ。
同45年(1970年)、学生時代に初訪台し、その後、某日本総合商社に勤務しつつ30年以上
にわたって台湾に関与。平成5年(1993年)から日本で出版された台湾関係書籍のほぼ全て
を、台北の呉三連台湾史料基金会に納本。納本に際しては、ジャンルを問わずその全てに
目を通して、簡潔を旨とする「三田式コメント」を添付。
◆新連載【三田裕次の一口コメント 1】ジョージ・H・カー『裏切られた台湾』[2006/9/1] http://melma.com/backnumber_100557_3333979/