スリランカが中国の「債務の罠」にはまり、ハンバントタ港が「中国の港」と化しつつある。読売新聞の本日の「社説」は「中印対立の新たな火種となりかねない」「『自由で開かれたインド太平洋』を掲げる日米豪印にとって、地域の安定を揺るがす中国の動きは看過できない」と指摘しつつ、「中国の巨額の援助や投資が相手国の発展のためではなく、自国の影響力増大を主眼にしていることを物語っている」「各国は警戒を強めるべきだ」と警鐘を鳴らしている。
読売「社説」は、スリランカ周辺のパキスタン、バングラデシュ、ミャンマーでも「中国資本による港湾開発が進んでいる」としているが、これらの国々ばかりでなく、ソロモン諸島など太平洋島嶼国家の国々やアフリカ諸国にも、中国の「経済支援」を隠れ蓑にした「債務の罠」はすでに仕掛けられている。
「自由で開かれたインド太平洋」を推し進める日米をはじめ、自由、民主、人権、法の支配などの価値観を共有する国々がこの中国の「罠」を外す役割を担っている。
—————————————————————————————–スリランカ 「中国の港」に懸念が膨らむ【読売新聞「社説」:2022年8月18日】https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20220817-OYT1T50299/
中国が発展途上国への経済支援と引き換えに、相手国の港湾施設などを軍事利用することへの懸念が、現実のものになり始めたと言える。
中国の調査船がスリランカ南部のハンバントタ港に入港した。
調査船は中国軍傘下の組織に所属し、高性能レーダーで人工衛星やロケット、弾道ミサイルなどを追尾、監視する能力を持つ。
中国は海洋調査を行う船だと説明し、「他国の安全や経済利益に影響しない」と主張しているが、調査船が軍所属であることからみても、寄港が軍事活動の一環なのは明らかだろう。
スリランカの隣国インドが、自国の軍事活動を監視される事態を懸念するのは当然だ。インドのメディアは「スパイ船」と呼んでいる。中国船の寄港は、中印対立の新たな火種となりかねない。
スリランカはアジアと中東、欧州をつなぐインド洋に位置し、原油などを輸送する海上交通路の拠点となっている。「自由で開かれたインド太平洋」を掲げる日米豪印にとって、地域の安定を揺るがす中国の動きは看過できない。
ハンバントタ港は中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の事業として、中国の投資によって整備された。巨額の債務返済に窮したスリランカは、運営権を中国企業に譲渡したため、事実上、「中国の港」と化している。
インドが事前に反対していたにもかかわらず、スリランカが中国船の寄港を認めたのは、中国の権益拡大を背景にした圧力に抗しきれなかったからではないか。
スリランカでは経済危機が続いている。7月には反政府デモが拡大し、親中派の大統領が失脚した。中国はその間、債務減免などの支援には消極的だった。
中国の巨額の援助や投資が相手国の発展のためではなく、自国の影響力増大を主眼にしていることを物語っている。
途上国を借金漬けにし、インフラの使用権を得る「債務の罠(わな)」にはまったのはスリランカに限らない。周辺のパキスタンやバングラデシュ、ミャンマーでも、中国資本による港湾開発が進んでいる。各国は警戒を強めるべきだ。
中国はウクライナを侵略したロシアを擁護し、台湾との境界線を侵犯する現状変更も行っている。国際政治と世界経済の安定を導く大国と言うには程遠い。
日本と米国は、相手国の人材育成や成長に資する援助を続けている。透明性の高い支援であることを途上国側にアピールしたい。
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