もう中国の台湾への嫌がらせも限界がみえてきた  黄 文雄(文明史家)

【黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」号外:2021年3月18日】*読みやすさを考慮し、小見出しは本誌編集部が付したことをお断りします。

◆仏上院議員の台湾訪問を中国が妨害

 このところ、台湾に対する中国からの嫌がらせが目につきますね。最新のニュースでは、フランスが予定していた台湾訪問団の派遣を取りやめるような書簡を送っていたそうです。詳しくは、以下、報道を一部引用します。

<仏政経ニュースサイト『La Lettre A』の15日付の報道によれば、中国の盧沙野駐仏大使は2月18日、元老院(上院)仏台友好議員連盟会長を務める与党・共和党前進のアラン・リシャール上院議員に台湾に関する書簡を送付。

 書簡の中で盧氏は仏台友好議員連盟が台湾の新型コロナウイルス対策を参考にするため、今夏に台湾訪問団の派遣を予定していることについて、「北京と台北の間の現状を破壊する」として非難した。さらに、「世界には一つの中国しかない。台湾は中国の不可分の一部だ」と強調し、今後は台湾当局といかなる公式の接触をもしないようリシャール氏に求めたという。>

 これを受けて、台湾の蘇貞昌行政院長は、「中国がこんなことまで妨害するとは思わなかった」「全世界がさらに(中国を)見下すことだろう」と述べたとのことです。

 フランス元老院のアラン・リシャール氏といえば、2019年10月に発足した「フォルモサクラブ」の主席の一人です。「フォルモサクラブ」とは、ドイツ、フランス、イギリスの議会と欧州議会で台湾に友好的なグループが共同で設立し、台湾に圧力を加える者(主に中国)に「ノー」を突き付け、台湾指示を強めるために結成されたグループです。

◆焦りはじめた中国によるなりふり構わぬ「台湾イジメ」

 台湾は確実に世界を味方につけています。そして台湾のみならず、香港やウイグルに対する連帯を示す動きも高まっており、さらには反中同盟である「ミルクティー同盟」については、昨日のメルマガでも触れました。

 一方で、そんな状況に焦りを見せている中国は、なりふり構わず台湾いじめ作戦を展開しています。最近では、台湾産パイナップルの輸入停止がありました。中国は、害虫の検出を口実に、突然、台湾産パイナップルの輸入を停止すると一方的に通知してきましたが、明らかに台湾いじめです。

 もちろんこんなことで負ける台湾ではありませんが、実際、台湾産パイナップルの中国への輸出量を見ると、軽視もできません。以下、報道を一部引用します。

<2018〜2020年のパイナップルの対中輸出量は12万2876トン、平均すると毎年約4万トンが中国に輸出されている計算になる。4万トンという数字は台湾で栽培されているパイナップルの約10%にあたり、中国のパイナップル輸入停止が台湾の農家に与える影響は非常に大きい。>

 中国がパイナップルを標的にしたのは、対中輸出農産物で最も多く輸出されているのがパイナップルだったからではないでしょうか。さらに、次の輸入停止ターゲットは、パイナップルの次に輸出が多い「蓮霧(ワックスアップル)」だとも言われています。

 このニュースが世界に配信されるやいなや、日本が立ち上がりました。スーパーマーケットチェーンの西友が、例年の倍の量を買い付けたり、日本人の間に台湾産パイナップルを買おうという機運が高まったり、西友の店頭に並んだ台湾産パイナップルが一日で完売したり。また、カナダの華僑団体の呼びかけで、カナダにはじめて輸出されました。カナダでは、「高雄市大樹産の金鑽パイナップル16.8トンが、台湾系華僑が多く居住するバンクーバーなどに届けられ」ました。

 台湾はコロナの封じ込めに成功していますが、やはりワクチンは必要です。しかし、ドイツのビオンテック社と交渉していた500万回分のワクチンが、交渉していたにもかかわらず確保できませんでした。この理由について、新型コロナウイルス対策を担当する中央感染症指揮センターの陳時中指揮官報道では以下のように言っています。

<同社は台湾を含めた中華圏向けの販売などで中国の上海復星医薬と提携しており、陳氏は契約に至らなかった要因として中国当局の介入を示唆した。>

 ただ、「蘇貞昌(そていしょう)行政院長(首相)によれば、台湾は10日時点でワクチン約2000万回分を確保。国内でもワクチン開発を進めている」ということですから、台湾はそれほど焦ったことでもありません。そもそも、台湾の人口は2020年の時点で約2357万人です。中国のように巨大な人口を抱えている国とは事情が違います。

 パイナップルの件でもわかるように、中国があからさまに台湾をイジメればイジメるほど、世界は台湾の味方となります。また、コロナ対策は、世界に台湾の存在を示す好材料となりました。とはいえ、中国マーケットから締め出されば、台湾経済への打撃は大きいのも確かです。いかに有効的な経済政策を打ち出すか。ここからが蔡英文総統率いる台湾政府の腕の見せ所でしょう。

◆ご都合主義の中国がまいた黄砂問題

 中国人はきわめてご都合主義で嘘つきですから、原理原則を守ることができません。自分の都合によって主張を変えます。例えば、今、日本にも飛来してきている黄砂について、こんな主張をしています。

「黄砂の根源はモンゴルだ」「韓国は黄砂や粒子状物質が発生するたびに中国をいけにえにする」「中国も黄砂の被害を受けているのに、韓国政府とメディアは不当に中国ばかりを取り上げている」

 このような小学生の言い訳みたいなことを、政府の報道官やメディアが堂々と言ってのけています。

 そもそも中国の内モンゴルが急速に砂漠化したのは1960年ごろからで、それは中国共産党がこの地に中国農民を移住させたことと、遊牧民を定住させたことが原因でした。

 それまで遊牧民は一定のところにとどまらず、家畜とともに移動して草を食べさせていたため砂漠化は起こらなかったのですが、中国共産党が定住化政策をとったため、過放牧状態になり、とくにヤギは根まで食べてしまうため、砂漠化が進んだのです。

 さらに内モンゴル地域に漢人の農民を移住させたことで、人口も過密となり、ますます砂漠化が深刻化しているのです。黄砂問題はもともと中国が蒔いた種なのです。

 台湾人は、華人であり漢人であり中国人だという中国政府の主張も、台湾の学者による研究で分子医学的に否定されています。言語学やDNAなどの分子医学研究により、台湾人はマレーポリネシア人にルーツを持っていることが分かっています。

 中国政府がいくら頭を絞って、何事も自国に有利にしようとしても、ご都合主義から出た言葉は何の説得力もありません。中国は数千年の歳月をかけて領土を拡大しましたが、それでも東亜世界の一部までが限界です。これ以上は世界が許しません。中国の限界と、中華文明、中華文化の限界に、世界はそろそろ気づいています。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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