私は病気で会社を早期退職したが、その会社の手帳が好きで、今も元同僚に毎年送ってもらっている。以前は社員や取引先に無料で配っていたが、今は経費削減で社員は有料で買っているそうだ。
もっとも今ではスマホを手帳代わりに使う社員が多くて、手帳を買う社員はあまりいないとのこと。しかし私はこの手帳を使い慣れて手放せないので、元同僚に買ってもらって送ってもらい、お礼に「正論」や新聞に投書が掲載された時に謝礼でいただく図書カードを送っている。
会社を辞めた3年後の2006年、台湾の李登輝元総統が出版した著書『李登輝実録』(産経新聞出版)の中に載っていた手帳の写真を見て驚いた。私が勤めていた会社の手帳だったからだ。
その年の12月、産経新聞が企画した李登輝元総統に会って講義を聴くツアーに参加した時、李登輝元総統に「あの手帳は誰からもらったのですか?」と尋ねると、「会社の創業者と親しくしていて、毎年彼が送ってきてくれてたんだ。たくさんメモできるので、いつも背広の内ポケットに入れていたんだ。ちょうどいい大きさなんだよ」と話してくれた。創業者が亡くなってからしばらくは奥さんから送られてきたが、もう来なくなったと言うので、私は持ってきた翌年の手帳を差し上げた。
今年も元同僚から来年の手帳が送られてきて、李登輝元総統にこの手帳のことを聞き、差し上げた時のことを思い出した。李登輝元総統も愛用していたこの手帳が使いやすくて手放せない。(ちなみに会社はソニー、創業者とは盛田昭夫さんです)
*上田真弓氏(千葉県成田市の会員、男性)からの投稿は、月刊「正論」2月号(12月26日発売)に掲載された投 書です。上田氏からその旨を記してご投稿いただきました。見出しは本誌編集部で付したことをお断りします。
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