ニュージーランド・オークランドにおいて協定調印式を行う予定となっている。
参加国政府関係者の間では、今後、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国のインドネシア、
タイ、フィリピンに加え、韓国や台湾の近い将来における加盟の可能性についての議論も非公式に
行われていると仄聞している。
台湾の次期総統に当選した蔡英文・民進党主席がTPP加盟に意欲を示していることについて、
すでに、菅義偉・内閣官房長官は「地域の安定と繁栄に大きく寄与する」との観点から歓迎表明を
している。
究極的にはアジア太平洋地域の安全保障を確保するという観点からも、台湾のTPP加盟は極め
て重要であることから、TPP加盟国による協定調印式と併せて開催予定の閣僚会議において、日
本から他の参加11カ国に対して台湾の早期加盟を強く働きかけるべきとして、本会は本日、「緊急
提言」として「台湾のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)加盟を早期に実現せよ」を発表し
た。
この緊急提言は去る1月18日に発表した緊急提言「選挙後の台湾にスムーズな政権移譲を望む」
に続く第2弾で、漢文版も作成し、本日、安倍晋三総理、菅義偉・官房長官、岸田文雄・外務大
臣、甘利明・内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)をはじめ、国会議員や有識者に送達すると
ともに、蔡英文・民進党主席や李登輝元総統など台湾の関係者にも送達している。
本会ホームページには、日本語版と漢文版の両方を掲載する予定だ。
◆ホームページ http://www.ritouki.jp/
平成28年(2016年)1月28日
台湾のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)加盟を早期に実現せよ
会 長
小田村四郎
副会長
加瀬英明 川村純彦 黄文雄 田久保忠衛 中西輝政
日本、米国等の12か国で構成される「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」は、昨年10月
5日、米国・アトランタ閣僚会合において大筋合意に至り、本年2月4日、ニュージーランド・オー
クランドにおいて、参加各国の担当閣僚による協定文書への署名式が行われる予定である。その
後、参加各国政府が協定の発効に必要な議会の承認を得る等の国内手続を経て、協定が正式に発効
する運びとなる。
TPPは、モノの関税だけではなくサービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、電子商
取引、国有企業の規律、環境など、幅広い分野で21世紀型のルールを構築する多国間の経済連携協
定である。TPPの発効により、アジア太平洋地域に経済規模で全世界の約4割を占める巨大経済
圏が誕生することとなる。
TPPの参加国は、現在、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキ
シコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国及びベトナムの合計12か国であるが、すで
に、参加国政府関係者の間では、今後、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国のインドネシ
ア、タイ、フィリピンに加え、韓国や台湾の近い将来における加盟の可能性についての議論も、非
公式に行われていると仄聞しているところである。
世界貿易機関(WTO)の「フルメンバー」であるという事実以上に、「基本的価値観を共有
し、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナー、大切な友人」(本年1月18日、菅義偉
内閣官房長官の記者会見)である台湾が早期にTPPに加入できることは、日本にとって意義深い
ものがある。さらに俯瞰すれば、台湾が、日本、米国等とともに、アジア太平洋地域における自由
貿易経済圏を共に構成することが、地域全体に及ぼす経済的なメリットをもたらすのみならず、こ
の巨大自由貿易経済圏の公平性や安定性を根幹から支え、究極的にはアジア太平洋地域の安全保障
を確保するという観点からも、台湾のTPP加盟は極めて重要である。
これらのことを踏まえ、今後、日本政府として、台湾のTPP加盟について、米国等の他のTP
P参加11カ国に対して強く働きかけるべきものと考える。具体的には、来る2月3日〜4日、オーク
ランドにおける協定調印式に際し開催される予定の参加国閣僚会議において、参加各国が台湾のT
PP加入に向けての二国間の個別交渉に入ることについて参加国の間で早急にコンセンサスを得る
よう、日本政府として積極的に働きかけることを提案する。
その際、台湾がTPPに加盟する場合の呼称については、昨年の安倍総理大臣の「戦後70年談
話」において用いられた事に示されるように、日本国内はもとより、国際社会においても、最も一
般的に使用されている呼称である「台湾」とするよう、各国政府に強く働きかけるものと考える。
【注】なお、TPPについては、これまで、関税等の市場アクセス等の論点について、どのように
日本の国益を確保するか、さらには、かけがえのない日本の「国柄」をいかにして維持していくべ
きか、といった観点からも、様々の論争が国内で行われてきた。ここでは、そういった議論には敢
えて立ち入るものではなく、現に、近々、参加国政府による協定書署名式が行われ、その後、各参
加国内の承認等の手続きを経て協定が発効するという実際の動きを前提として、台湾のTPP早期
加盟実現に向けて、日本政府をはじめ各方面における具体的なアクションを求めるという趣旨の緊
急提言であることを付記する。