日本李登輝友の会「2016緊急提言」 選挙後の台湾にスムーズな政権移譲を望む
2016年1月16日、台湾における総統選挙と立法院総選挙の同日投票で、今後4年間の台湾を担う新
たな総統と議会が選出された。この台湾国民の選択は、2008年から7年余りにわたって国民党の馬
英九政権が進めてきた、台湾の主体性を損ない、台湾が中国に取り込まれる道を開く政策路線に対
する明確な否定の意思表示であった。しかも、台湾国民のこうした意思は、2014年11月末の統一地
方選挙と合わせ、1年2カ月の間に2回繰り返し示された確固たるものである。
総統選挙および立法院総選挙の投票、開票が行われた1月16日から、新たな総統が就任する5月20
日まで、4カ月余りの時間がある。このような長期の政権移行期間は世界的に見て稀であり、選挙
によって示された民意を基礎に政府が運営される民主主義国として、これほど長く民意に沿わない
政権が存続することは異常ともいえる。
投開票から総統就任式までの残余の期間、馬英九政権は、すでに示された民の声に真摯に耳を傾
けた政局運営を行い、民意に背くことがないよう努めなければならない。馬英九政権に残された使
命は、新たな総統、民進党の蔡英文政権へのスムーズな政権移譲だけである。民主主義国の国家元
首として、馬英九総統は、この最後の務めを立派に果たし、新たな政府が台湾国民の福祉を増進で
きるよう、道を整えなければならない。
この4カ月にわたる政権移行期間において、台湾において不測の政治的混乱を生じるようなこと
があれば、最悪の場合には、中国が、反国家分裂法(2005年3月制定)の「台湾の中国からの分離
をもたらしかねない重大な事変が発生し、または平和統一の可能性が完全に失われたとき」(第8
条)とみなし、台湾に対して「非平和的方式その他必要な措置を講じて、国家の主権と領土保全
を守る」(同)行動に出る理由を提供することになる。粛々たる政権の移行は、東アジアの平和と
安定を維持するために必須である。
台湾は、総統選挙の国民直接民選によって民主化を成し遂げて20年の間に、2000年と2008年の2
度の政権交代を平和裡に実現してきた。今回を、その3度目の良き例とすることを要望するもので
ある。
平成28年(2016年)1月18日
会 長 小田村四郎
副会長 加瀬 英明
川村 純彦
黄 文雄
田久保忠衛
中西 輝政