受け取ろうとしたところ、学校側から拒否され、大学側は「台湾は国家ではないため、台
湾からの留学生は補助金を受け取る資格がない」と回答したというニュースについて、交
流協会が出した「募集要項」と交流協会台北事務所の「お知らせ」を紹介して、要件を満
たす留学生にはきちんと奨学金が支払われていることをお伝えした。
この「震災補助金」と言っていい奨学金は、文部科学省から外国人留学生に支給され、
受給の資格要件は「日本政府と国交のある国の国籍を有する者」に限るとされている。た
だし、日本と国交がない台湾からの留学生には交流協会を通じて支払われることになって
いる。
ただ、台湾からの留学生でも「交流協会奨学金留学生である者」や「標準修業年限内で
の修了が不可能である者」などは募集対象とならない。交流協会奨学金留学生とは、修士
課程や博士課程の大学院生や研究生等の非正規課程に在籍する学生が対象だから、学部の
留学生は募集対象からはずれる。
被災して困窮している留学生は大学院生ばかりではないし、他に奨学金をもらっている
とその額は差し引くなど、かなり厳しい条件だ。それでホントにお見舞いの補助金なのと
いう疑問もわいてくる。被災して困っている台湾人留学生には、一律にお見舞金を支払う
という考えはなかったのだろうかとも思う。
ニュースでは、台湾の留学生から「台湾は震災後に多額の義援金を贈ったのに、こんな
目に遭うなんて」という不満の声が紹介されていたが、そういう声が出てくることもよく
わかる。
ただ、奨学金(震災補助金)は、それでも日本に残って勉強しつづける、生活に困って
いる被災留学生を対象にしたということで、それはそれで筋が通っていると思い、交流協
会の募集要項と交流協会台北事務所の「お知らせ」を紹介した次第だ。
ところで、「台湾人留学生への補助金支給を拒否した学校」とは、栃木県の作新学院大
学だったようで、昨7日に「外国人留学生への奨学金の取扱いについて」を発表していた。
下記に紹介したい。
これを読む限り、作新学院大学は文部科学省および交流協会の要項に従って募集事務を
しているのであって、作新学院に罪はない。
問題は、文部科学省の「日本政府と国交のある国の国籍を有する者」という受給資格要
件であり、交流協会の「交流協会奨学金留学生である者」という受給資格要件だろう。ど
うして「日本政府と国交のある国・地域」とできなかったのだろうか。どうして「台湾か
らの留学生である者」とできなかったのだろうか。繰り返しになるが、台湾からの留学生
で被災して生活に困窮しているのは大学院生ばかりではなく、学部の留学生もいるのだ。
すでに外登証問題では、在留カード化するにあたって、台湾出身者は「台湾」と表記さ
れるようになるにもかかわらず、国交がないことをもって、日本が台湾に対してこのよう
な措置を取り続ける限り、台湾からの信頼は得られまい。
ただ心配するのは、事実を正確に報道しないニュースにより、日本はなんとひどい仕打
ちをするのだと、日本非難の大声が台湾から起こることであり、それが日本と台湾の対立
を煽るようなことになることだ。だから、そのようなニュースを日台の分断を狙った悪質
なニュースと書いた次第だ。
日本は、宣伝戦に長けた中国に日台の分断を進めるようなスキを与えてはならない。台
湾からの信頼を裏切ってはならない。どんな些細なことであっても、中国の台湾併呑に力
を貸すような措置を取ってはならないのだ。
◆ 作新学院大学「外国人留学生への奨学金の取扱いについて
http://www.sakushin-u.ac.jp/scms/topic.php?NO=851
「外国人留学生への奨学金の取扱いについて」
作新学院大学の教育研究活動につきましては、日頃よりご理解とご協力をいただき、心
より感謝申し上げます。
さてこの度、一部の報道機関やネット上で、私どもの留学生の奨学金支給について、事
実にもとづかない記事が話題となっております。私どもは早速調査の上、下記のような結
論に至りましたので、ご報告申し上げます。
記
1.今回の奨学金は「東北地方太平洋沖地震に係る外国人留学生対象奨学金」として、文
部科学省から支給されるものです。被災地にある大学の留学生が対象ですが、文科省の
資格要件は「日本政府と国交のある国の国籍を有する者」に限られます。
2.台湾出身の留学生には残念ながら、この奨学金は出せないこととなりますが、別途外
務省の外部団体の交流協会からは、台湾出身の大学院生に支給されます。しかし台湾出
身の学部学生には支給されません。
3.私どもは1.2.の規定に従い、去る4月26日に留学生向けの説明会を開催し、4
月28日に募集を締め切り、7月1日から実際の支給を開始いたしました。
4.その後、本学の台湾留学生数名から奨学金支給の問い合わせがありましたが、私ども
としては、上記1.2の資格条件をあらためて説明いたしました。
5.この度の一部報道機関やネット上で問題とされた点は、本学の説明において「台湾は
国家でないから支給できない」ということですが、私どもはそのような説明をした事実
は一切なく、当該学生の方の誤解、あるいはまちがった伝聞によるものと思われます。
当該学生とは未だ連絡はとれておりませんが、以上の点を誠意をもって説明し、ご理解
いただくように努力いたします。
6.なお、私どもが独自に支給する留学生向け奨学金につきましては、国籍要件は一切課
しておりませんことを申し添えます。
上記のような状況でありますので、皆様におかれましては、事実関係を冷静にご判断い
ただき、引き続きご指導いただきますようお願い申し上げます。
私ども作新学院大学は、今後とも留学生の良好な教育研究の場を提供することにより、
全ての国との友好関係を築いて参る所存です。
以上
2011年7月7日