【地図帳問題】笠浩史衆院議員が政府見解を質す質問主意書を提出[全文紹介]

11月15日、政府は答弁書を閣議決定

                      日本李登輝友の会・教科書問題委員会

 11月16日付の産経新聞で「台湾の領土的位置付け 政府、独自認定行わず」との記事が
掲載されましたが(後掲)、これは民主党の笠浩史(りゅう ひろふみ)衆議院議員が10
月31日、政府に対して「中学校使用の地図帳及び外務省ホームページにおける台湾の取り
扱いに関する質問主意書」を提出し、「台湾の領土的地位に関する日本国政府の公式見解」
を質問したことに対する政府答弁書の内容について報じたものです。

 質問主意書では、帝国書院と東京書籍発行の地図帳の二冊が、いずれも台湾の東側(太
平洋側)に国境線を引いて、台湾を中華人民共和国(以下、「中国」と略)の領土として
取り扱い、また、この二冊の地図帳で使用されている資料も全て中国の資料であることか
ら、台湾が中国領として取り扱われている現状を指摘し、日本政府の立場は台湾を帰属先
未定としていると解釈できるが、台湾の領土的地位に関する「日本国政府の公式見解」と
はいかなるものなのかを質しています。
 また、外務省のホームページ「各国・地域の情勢」における「アジア」の「各国情勢」
では中国とともに台湾が同じ色で表示されることも質問の中で触れ、外務省が台湾につい
てどのように取り扱おうとしているのか、見るものをして混乱を生じさせているとした上
で、「台湾を中国の領土の一部として取り扱っていると解釈できるが、それで相違ないか」
と舌鋒鋭く迫っています。

 11月15日、政府は午前中の閣議で答弁書を決定していますが、ここではまず、産経新聞
の記事と「質問主意書」の全文をご紹介します。次号で政府の「答弁書」全文をご紹介し
ます。ご賛同いただける方は、笠浩史議員に激励のメールをお願いします。

■笠浩史議員に激励メールを
http://www.ryu-h.net/contact/opinion_mail/
・公式HP http://www.ryu-h.net/


台湾の領土的位置付け 政府、独自認定行わず
【11月16日付「産経新聞」朝刊】

 政府は十五日の閣議で、台湾の領土的地位に関する日本の立場について、「台湾の領土
的位置付けに関して独自の認定を行う立場にない。『台湾が中国の領土の不可分の一部で
ある』との中国政府の立場を十分理解し尊重する」とする答弁書を決定した。台湾の帰属
問題で、中国側の主張について理解、尊重しながらも承認する立場はとらなかった昭和四
十七年の日中共同声明を改めて確認した。
 答弁書はまた、この問題で米英両国はそれぞれ「台湾は中国の一部であるとの中国の立
場を認識する」、「台湾は中国の一つの省であるという中国政府の立場を認識する」との
立場を示していることを紹介している。民主党の笠浩史衆院議員の質問主意書に答えた。


中学校使用の地図帳及び外務省ホームページにおける台湾の取り扱いに関する質問主意書

 平成十七年十月三十一日
                             提出者  笠  浩 史

 現在、義務教育課程における中学生が社会科で使用している地図帳は帝国書院発行の『
新編 中学校社会科地図 最新版』と東京書籍発行の『新しい社会科地図』の二冊である
が、この二冊がいずれも台湾の東側(太平洋側)に国境線を引いて、台湾を中華人民共和
国(以下、「中国」と略)の領土として取り扱っている。また、この二冊の地図帳で使用
されている資料も全て中国の資料であることから、台湾が中国領として取り扱われている。
 この地図帳を発行する教科書会社の説明では、国名を含めた領土・領域の記載について
は、外務省編集協力の『世界の国一覧表』と日本国政府の見解に基づいて取り扱っている
とのことである。
 確かに『世界の国一覧表』(二〇〇五年版)において、台湾は独立国家として扱われて
いるのではなく、「その他の主な地域」の項に掲載されている。しかし、その「領有ない
し保護などの関係にある国」の欄には日中共同声明の一文が記されているだけで、どこに
も中華人民共和国が台湾を「領有」や「保護」をしているとは記されていない。
 それは、台湾の次に掲載されている「ホンコン(香港)特別行政区」や「マカオ(澳門)
特別行政区」における「領有ないし保護などの関係にある国」の記述と比べてみれば一目
瞭然である。そこには「『一国二制度』による自治が認められた中国のホンコン特別行政
区」「『一国二制度』による自治が認められた中国のマカオ特別行政区」とあり、香港や
マカオが中国、即ち中華人民共和国の領土であることを明記している。もし教科書会社が
説明するように、台湾が中国の領土だとするならば、『世界の国一覧表』では香港やマカ
オと同じように記述するのが当然であるのにも拘らず、そのようには記述されていないの
である。
 また、台湾の領土的地位に関する日本の国際法上の立場は二つあり、一つは昭和二十六
年九月八日に署名し翌年四月二十八日に効力が発生したサンフランシスコ講和条約に基づ
くものであり、一つは昭和四十七年九月二十九日に署名した日中共同声明に基づく立場で
あると理解している。
 まずサンフランシスコ講和条約においては、その第二条b項において「日本国は、台湾
及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」と謳われており、これ
を以て日本は台湾及び澎湖諸島を放棄した。
 また、日中共同声明においては、その三項で台湾に触れ、中国政府が「台湾が中華人民
共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する」としたものの、日本国政府は
「この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重する」として、台湾を中国の領土と
は承認していない。
 日本が中国の主張を承認していないことは、当時、日中共同声明に署名して帰国した大
平正芳外相が、自民党両院議員総会において、「台湾の領土の帰属の問題で、中国側は中
国の領土の不可分の一部と主張し、日本側はそれに対して『理解し、尊重する』とし、承
認する立場をとらなかった。つまり従来の自民党政府の態度をそのまま書き込んだわけで、
日中両国が永久に一致できない立場をここに表した」と明言していることからも明らかで
あると理解している。
 即ち、日本は領土に関して「カイロ宣言の条項は、履行せらるべく、又日本国の主権は、
本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に局限せらるべし」とするポツダム
宣言を受諾するも、サンフランシスコ講和条約の締結によって台湾に対する権利や権原を
放棄した。つまり、サンフランシスコ講和条約の当事国としての日本が台湾の領土的地位
に関して独自の認定を行うことは条約の効果を自ら否定することにもつながるので、日中
共同声明においても「承認できない立場にある」というのが日本の立場であったと考える。
その結果、台湾の法的地位を未決定とし、台湾を帰属先未定とする日本政府の立場は現在
まで続いていると解釈できる。
 一方、現在、外務省のホームページ「各国・地域の情勢」における「アジア」の「各国
情勢」で中国をクリックすると、中華人民共和国とともに台湾が同じ色で表示される。つ
まり、この地図では台湾が明らかに中国の領土の一部として取り扱われているのである。
ところが、同ホームページでは台湾は北朝鮮、香港、マカオと共に「地域情勢」でも取り
扱われており、外務省が台湾についてどのように取り扱おうとしているのか、見るものを
して混乱を生じさせているのである。
 従って、次の事項について質問する。

一、台湾の領土的地位に関する「日本国政府の公式見解」とはいかなるものなのか。その
 根拠についても明らかにして頂きたい。
二、台湾の領土的地位に関して、サンフランシスコ講和条約の当事国であるアメリカやイ
 ギリスなど連合国の見解を政府として、どう理解しているのか。
三、地図帳発行会社は台湾の取り扱いについて、外務省編集協力の『世界の国一覧表』と
 日本国政府の見解に基づいて取り扱っているとしているが、そのような指示は文部科学
 省が検定の際に出していると考えられる。それで相違ないか。文部科学省の検定基準な
 どで定めているとすれば、具体的に提示していただきたい。
四、教科書会社が『世界の国一覧表』の記述をそのように解釈をしているのは、教科書を
 検定する文部科学省の指示するところなのか。指示しているとすれば、それは資料を含
 めていかなる根拠によるのか。
五、文部科学省の検定において、台湾を中国領と表記する帝国書院発行の『新編 中学校
 社会科地図 最新版』と東京書籍発行の『新しい社会科地図』は検定で合格している。
 合格は資料を含めていかなる根拠によるのか。
六、来年度から使用される地図帳でも台湾は中国領と表記されているのか。
七、外務省はホームページにおいて台湾を中国の領土の一部として取り扱っていると解釈
 できるが、それで相違ないか。
八、台湾に関して、中学校の地図帳における資料は『中国地図集 一九九六』や『中華人
 民共和国行政区画簡冊一九九九年版』など、すべて中国のものを使用しているため、台
 湾は中国の一部として表記されている。このような資料を使用する中学生は台湾を中国
 の一部であるとしか認識できないと思われるが、政府の見解はどうか。
九、台湾が中国領でないという「誤った事実の記載」が明らかになった場合、地図帳の発
 行者である教科書会社は「教科用図書検定規則」第十三条第一項に従って「文部科学大
 臣の承認を受け、必要な訂正を行わなければならない」し、あるいは文部科学大臣が同
 条第四項に従って「発行者に対し、その訂正の申請を勧告」しなければならないと考え
 る。政府の見解はどうか。

 右質問する。



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