【台湾八八水害】 台風大水害1カ月 一瞬で消えた村 助かる命あった

【9月4日 毎日新聞】
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20090904ddm007030054000c.html

◇軍の救助、初動遅れ 乱開発も惨事を拡大──台湾消防署・捜索救助訓練教官

 腰まで土砂につかった村民は3日後、繰り返す土石流で額まで埋まっていた──。先月8
日から9日にかけて台湾中南部を襲った台風8号による大水害から間もなく1カ月。土石流
で壊滅的な被害を受けた村に最初に救助に入った台湾消防署(消防庁)の捜索救助訓練教
官、葉泰興さん(52)が毎日新聞のインタビューに応じ、「我々の要請に応じて軍が早く
出動すれば助かる命もあった」と初動の遅れを批判した。災害救助の訓練を受けた軍、政
府各部門が連携した救助組織を発足させなければ、「台湾は同じ過ちを繰り返す」と葉さ
んは警告する。【台北・大谷麻由美】

 8月9日未明、葉さんをはじめ6人のリーダーの下、救助隊員約300人が土石流の被害を受
けた高雄県新開村に入った。暗闇の中、土砂で埋まった家しか見当たらず、一時は「生存
者なし」の無線連絡をした。明るくなり、高台に避難した村民をようやく発見、生存者の
救助を始めた。

 高雄県小林村の手前の山間部では、腰まで土砂に埋まった被災者を発見した。確実に生
存していたが、重機などを持たない救助隊員には素手で引き上げることは不可能だった。
その上、土石流が断続的に発生する地域で、葉さんたちは近づくことができなかった。

 「多くの場所は土砂に半分埋まった状態で、我々は9日の段階で生存者のいる可能性が
あると判断した」。葉さんは、無線で空軍に重機の貸与と援助を要請した。しかし、軍の
反応は鈍く、降り続く雨と繰り返す土石流で家も人も時間と共に更に埋まっていった。

 高台に避難した被災者を軍のヘリで救助する活動は13日から本格化したが、土砂を取り
除く重機や機具のヘリ輸送が実現したのは15日朝だった。「6日後に軍が来ても、遺体し
か出てこない」。やりきれない思いを胸に、葉さんらは軍の到着と同時に山を下りた。

 国防部(国防省)は出動の遅れを「天候が悪かったから」と説明する。だが、葉さん
は「言い訳でしかない。すぐに現場に入った我々にできたことが、どうして軍にできない
のか」と反論する。

 国防部は専門的な救助訓練を受けておらず、他国のように災害救助を重要任務と位置づ
けていない。葉さんは「戦争とは異なる救助について分からないから現場に派遣したくな
かったのが本音。責任逃れだ」と非難した。

◇被害、中南部山間地に集中 住民移住計画、政府必死の説得

 台風8号の被害は山間部に住む先住民族の村に集中した。馬英九政権は今週中にも各地
の安全評価を発表するが、危険度が高く、再建が不可能と判断された村には完全な離村を
求めることになる。だが、山を生活の糧とし、文化の中心に据えてきた先住民族にとって、
山を離れることは死活問題だ。「民族を滅ぼすつもりか」と反発を強める先住民族に対し、
安全を優先させたい政府の説得が続く。

 立法院(国会)で先月27日、1200億台湾ドル(約3370億円)を上限とする再建特別予算
が成立した。同時に制定された「再建特別条例」に基づいて村の移転は進められる。条例
では、山間部の危険地域について、政府が土地の強制収用や強制的な移転を村民に求める
ことができる。

 高雄県民族村のブノン族約400人は、再建は難しいと判断し、被災地の中で最初に移転
を受け入れた。しかし、林清章さん(38)は「移転先の土地所有権を取得できず、条例に
基づいて移転したら根無し草になってしまう」と不安を漏らす。条例案の作成時に被災者
の意見は反映されなかった。先住民族の不満はこの点にある。

 馬英九総統は「生命や財産の安全のために政府は働いている」と訴える。しかし、先住
民族の不信感は募るばかりだ。

◇台北なら死者10万人

 葉さんらは、500人近くが生き埋めとなった小林村から5人しか救出できなかった。救助
された村民の話では、9日早朝に「異変に気付いたら避難してください」とラジオ放送が
あった。雨量は多かったが、床上浸水も始まっておらず、村民は自宅でそのまま土石流に
のみ込まれた。小林村は脇を流れる川と高低差がほとんどない低い位置にあったという。

 水量が数十年間で徐々に減少したため、村民は開墾地を広げ、畑に変えた。葉さんは
「川幅が狭まり、流れにくくなった水があふれて別の場所に支流を形成した。村民は特に
問題視せずに開墾を続け、吸水力のある樹木を伐採した」と被害が拡大した背景を説明す
る。

 政府の土地保全計画の無策を指摘する世論は日増しに高まっている。葉さんも「山間部
の土地保全をせず、乱開発にまかせた。森林伐採と果樹園の形成は土石流の原因となった」
と指摘する。「台北で同じ雨量となれば、山を切り開いて建設したマンションは倒壊する。
少なくとも10万人が生き埋めになるとの試算が出ている」と葉さんは語る。

 台湾で99年に発生した大地震後、政府は地質調査を実施。結果も出ているが、政治的な
圧力で公表されていないとの見方もある。葉さんは「政治家と開発業者が利権をむさぼり、
民衆の安全をないがしろにしている。政府と立法院(国会)の罪は重い」と嘆く。

 葉さんは政府や国防部に災害救助や訓練の重要性を何度も提言したが、動きはみられな
い。「軍の災害救助訓練の充実と、国防部や警察、消防、水利などの政府各部門が緊密に
連携した組織の創設が急務」と主張する。

■ことば ◇台風8号による台湾大水害

 8月7日夜に台湾東部に上陸した台風8号は8日午後には台湾海峡に抜けた。だが、その後
も中南部の山間部は歴史的な豪雨に見舞われ、高雄、屏東、嘉義、台南などの各県に大水
害を引き起こした。高雄県では降り始めから3日間の雨量が1年間の総雨量に匹敵する2500
ミリを超えた。同8日夜から9日朝にかけて各地で断続的に土石流が発生し、同県小林村で
は500人近くが生き埋めとなった。台湾全土で9月3日までに死者614人、行方不明者84人に
上る。


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